晩秋のワイト島を訪ねて② ヴィクトリア女王が愛した宮殿「オズボーン・ハウス」

公開日 : 2021年12月13日
最終更新 :
筆者 : June

Sut Mae!(シュマイ!こんにちは!)

今回も2021年11月中旬に訪ねた「ワイト島(Isle of Wight)」の人気観光スポットを紹介します。

ロンドンから1番近いリゾートアイランドとして人気のワイト島は、かのヴィクトリア女王が休暇のたびに家族と訪れ、その華麗なる生涯を終えた場所です。

夏は多くの観光客でにぎわう島ですがオフシーズンはとても静かで落ち着いていて、ホテルやB&Bがお値打ちに利用できます。

都会から抜け出して、のんびり過ごしたい方におすすめの場所です。

ただ、観光地の営業時間や見学が可能な場所など、いろいろ異なることも多いので、この時期に訪れる際の参考にしていただければと思います。

■ ヴィクトリア女王の終の住処となった宮殿「オズボーン・ハウス」

ワイト島のおすすめ観光地として必ず挙げられるのが島の北部、海を見下ろす小高い丘の上に建つヴィクトリア女王と夫アルバート公のために建てられたかつてのイギリス王室の離宮「オズボーン・ハウス(Osborne House)」です。

現在は英国政府団体イングリッシュ・ヘリテージが管理・運営し、一般公開してます。

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ヴィクトリア女王夫妻は家族で自由に過ごせるプライベートな場所を求め、地方に別邸を探していたところ、当時の首相ロバート・ピールにオズボーン・ハウスを紹介され、気候もよく自然豊かなワイト島も気に入っていたことから私費で購入。

ロンドンの建築家トマス・キュビットがアルバート公の設計と指揮のもと、1845年から6年かけて、イタリア建築様式の宮殿を造りあげました。

そんなオズボーン・ハウスの観光はこちらのチケットオフィスからスタート。

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建物内にはショップとカフェも併設されています。

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私たちは公式ウェブサイトでチケットを事前購入しましたが、オフシーズンは窓口で当日券の購入も可能とのこと。ただし、11月は月・火曜が休館でしたが、1月は週末のみの開館になります。また営業時間も10:00~16:00に短縮されるなど、夏のバカンスシーズンとは異なることが多いので訪れる際には、事前に公式ウェブサイトで開館スケジュールを確認されることをおすすめします。

受付で散策マップを受取ったあとは各自で自由に見学です。

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広大な敷地内には宮殿のほか、テラス・ガーデンやスイス・コテージ、ビーチや貯水池など見どころが点在。

宮殿内以外はドックフレンドリーなので愛犬と一緒に散策が楽しめます。

チケットオフィスから徒歩5分ほどで宮殿前に到着。見学者用の入口は向かって右側です。

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アルバート公の肖像画が飾られた簡素な部屋から入場。

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絵画ギャラリーのような廊下を通って、最初の部屋へ。

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2019年にヴィクトリア女王とアルバート公の生誕200周年(1819年誕生)を記念して設けられた展示コーナーでした。

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1837年に18歳の若さで大英帝国の元首となったヴィクトリア女王は同い年で母方の従弟にあたるドイツのザクセン=コーブルク=ゴータ公国のアルバート公と恋に落ち、1840年に結婚。4男5女、合計9人の子をもうけます。

その後、ヨーロッパ中の王室に王女らを嫁がせるなど、系譜を広げたことから「ヨーロッパの祖母」とも称されました。

そんな恋愛結婚を成就させた女王夫妻のお気に入りの宮殿にはおふたりの名前の頭文字VとAを組み合わせたモノグラムがいたるところに印されています。

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こちらはカウンシル・ルーム(Council Room)。会議が行われた場所です。

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その隣にオーディエンス・ルーム(Audience Room)。謁見の間があります。

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アルバート公が好きだったとされるヒルガオの花をモチーフにした特製シャンデリアがとても煌びやかです。

次に豪華なダイニング・ルーム(Dining Room)。かわいいピンク色の壁には大小さまざまな家族の肖像画が飾られています。

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ヴィクトリア女王と家族が実際に使っていたダイニングテーブル。

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こちらもダイニングルームの一画で壁に飾られているのは1847年に描かれたファミリー・ポートレート。

クリスマスにはこの部屋にツリーを飾るほど、家族で過ごすことが多かった場所です。

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そして、吹き抜けの開放感ある階段ホール。

地上3階建て、地下もある宮殿ですがオフシーズン中は1階部分のみ公開のため、残念ながら、地下や上階の部屋は見学することができませんでした。

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ただ、宮殿の各所で知識豊かなスタッフの案内をじっくり聞いたり、いろいろ質問したりなど、混み合う時期には難しいこともオフシーズンなら気兼ねなくできます。また人混みを避けての写真撮影も余裕でした。

次は黄色と白が基調の豪華なドローイング・ルーム(Drawing Room)。いわゆる「リビング・ルーム」ですが、イギリス王室や上流階級でこれはNGワード! ドローイング・ルームあるいはシッティング・ルーム(Sitting Room)の呼び名が一般的です。

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実はこの宮殿、建設当時、イギリス王室の財政はかなりひっ迫していたので、倹約家だったアルバート公の低コストアイデアが満載なんです。

この一見、ゴージャスに見える部屋の柱も大理石風にペイントされたもの。

ほかにも左右対称に配置された2つの扉が実は片方だけ壁に描かれたものだったり......豪華に見える工夫がされています。

ドローイング・ルームの隣にあるビリアード・ルームにも大理石風に装飾されたビリアード台が置かれていました。

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こちらは晩年に描かれたビクトリア女王の肖像画。

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小柄だったそうですが、もともとぽっちゃり体型で年を重ねるとともに体重も増加したらしく......とても貫禄があります。

そして、高齢になった女王は階段の上り下りも難しくなり、1893年に女王専用エレベーターが設置されました。ちなみに手動です。

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いよいよ最後の部屋となるダーバー・ルーム(Durber Room)へ。

中世に建てられたジナ教の寺院をイメージしたというインド建築の大ホールはヴィクトリア女王がインド女帝としての権威を知らしめるために職人をインドから連れてきて造らせたもの。

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生涯、インドを訪れることはなかったヴィクトリア女王でしたが、インドに興味を持ち、インド人従者を側近にしたことでも知られています。

オズボーンハウスに居住した王族はヴィクトリア女王一家のみでその期間もわずか55年間でした。その後、軍施設として使用された時期もありましたが、建物は改装されることなく、外観や内部もヴィクトリア女王とアルバート公が使っていた当時のまま保存されています。

以上で宮殿内の見学は終了です。

宮殿海側にあるテラス庭園へ出ます。庭園から撮影した宮殿(出口は建物右側1階部分)。

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春や夏には色鮮やかな花々で彩られるテラスもこの時期はこの景観です。

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ここから、奥に見える海まで約1.2km、20分ほど歩きます。もちろん、愛犬もOKです!(ビーチ内を除く)

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ソレント海峡に面した広いプライベートビーチに到着。

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アルバート公が健康維持のため、海で子供たちに泳ぎを教えたことから、ヴィクトリア女王も海水浴を楽しむようになったのだとか......。そこで女王が肌を人目にさらさずにすむよう考案されたのが「ベイジングマシーン(水浴車)」で、実際に使われていたものがカフェの隣に展示されています。

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海を眺めながら、オズボーンハウスで作られ、ヴィクトリア女王がティータイムに楽しんだという「ヴィクトリア・スポンジケーキ」をいただきました。

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バタークリームやホイップクリーム、イチゴジャムなどをスポンジケーキの間に挟んだイギリスの伝統的なケーキで「ヴィクトリア・サンドイッチ」とも呼ばれます。

この日はバタークリームとラズベリージャムのケーキでした。

休憩後、次に向かった先はスイス・コテージ。

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アルバート公が幼い頃、ドイツで兄弟と過ごした思い出のシャレーを模して建てたスイス・コテージは子供たち専用の家です。周囲には畑もあり、ここで王子と王女たちは園芸や料理を学びました。

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女王夫妻は子供たちに英国民の日常生活を体験させることが大切と考えていたからです。

畑に隣接する作業小屋には子供たちそれぞれの名前が書かれた農工具もありました。

残念ながら、オフシーズンはスイス・コテージ内に入れないため、外観のみの見学です。

最後に温室もあるウォールガーデンへ。

テラスガーデン同様、時期的に花はほとんどありませんでしたが、そのぶん、訪れた人たちが楽しめるよういろいろと工夫がされていました。

例えば、こちらはフィグ(イチジク)とピッグ(豚)のコーナー。こういうの好きです。

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また洋梨が実っていて食べたいな~と思ってたら、帰りに売店で販売されているのを見つけました。私のような観光客も少なくないようです。

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こうして、オフシーズンのオズボーン・ハウスを3時間以上かけて観光しました。

多くの人でにぎわう夏は敷地内を巡回する無料バスが運行するなど、またいろいろとサービスも異なりますがオフシーズンでも十分楽しむことができます。

今はまだ、海外旅行が難しい状況ですが、事態が収束したら、ぜひ訪ねてほしいワイト島のおすすめ観光スポットです。

■ Osborne House

・ 住所: York Avenue, East Cowes, Isle of Wight, PO32 6JT

筆者

イギリス特派員

June

60カ国以上の渡航歴あり。2016年、結婚を機に英ウェールズへ移住。

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