【ウェールズの古城&史跡巡り】ウェールズで最初のシトー会修道院「ティンターン修道院」

公開日 : 2021年10月27日
最終更新 :
筆者 : June

Sut Mae!(シュマイ!こんにちは!)

前回の記事で紹介したワイ川沿いの村「ティンターン(Tintern)」には、12世紀初めにウェールズで最初のシトー会修道院として建設された「ティンターン修道院(Tintern Abbey)」の史跡があります。

IMG_9436.jpg

16世紀に国王ヘンリー8世によって解散されて以降、廃墟となった修道院は18世紀半ば頃から、ワイ川のほとりにたたずむ美しく荘厳な史跡として、建築家や芸術家たちに再び注目され、桂冠詩人ワーズワースが詠い、風景画家ターナーが描いた場所としても知られるようになりました。

400年もの長い間、修道士たちが祈り、生活した教会や住居跡は保存状態も良く、見学者は自由に中を歩いて見てまわれることから、今ではティンターン村の貴重な観光施設です。

入場時に許可を得られれば、ターナーのように一日中修道院を描きながら過ごすこともできるのだとか......私が訪れた時も数人がイーゼルを立てて、スケッチを楽しんでました。

IMG_9480.jpg

■ ワイ川のほとりにたたずむ巨大な廃墟「ティンターン修道院」

村の東端、ワイ川のほとりに建つティンターン修道院は現在、ウェールズの古城や景観地を守る政府関係機関「カドゥー(Cadw)」が管理・運営を行っています。

IMG_9493.jpg

入場料金は大人5.9ポンド、学生&小人4.1ポンド。

もちろん、カドゥーの会員であれば、メンバーカードの提示だけでOKです。

そして、ドッグ・フレンドリーなので、愛犬と一緒に入場することができます。

IMG_9492.jpg

受付には売店も併設。

ガイドブックや土産も購入できます。

IMG_9491.jpg

受付横の扉から入場するとすぐに屋外でトイレや案内パネル、展示物が並んでます。

修道院の歴史や修道士の生活を紹介した案内パネルは見学前に目を通しておくと、当時の様子がイメージしやすくなると受付の方にすすめられました。

一部だけ紹介するとこんな感じです。

IMG_9488.jpg

1131年にシトー会の修道院として、ウェールズのワイ川岸に創設されたティンターン修道院はその後、およそ2世紀の間に増築を重ね、現在の規模まで拡大、14世紀初めに最盛期を迎えました。

IMG_9490.jpg

そして、1349年の世界的なペスト流行により、その勢力も徐々に衰退、最後はヘンリー8世の宗教改革によって、1536年9月3日に修道院は解散、財産も没収され、その後、巨大な廃墟と化します。

では、ここから見学スタートです。

IMG_9445.jpg

決められた順路はないので、柵などで侵入できないようになっている場所以外であれば、自由に見学できます。

最初に入った小さな空間はウォーミング・ハウスと呼ばれた部屋で修道士たちが暖をとることを唯一、許された場所でした。

修道院内は真冬でも暖房はなく、このウォーミング・ハウスだけに暖炉が焚かれ、修道士たちは厳しい寒さに耐えられなくなるとこの部屋で身体を温め、また修行に戻ったのだとか......。

また、壁に設置された案内板には中世ヨーロッパで広く行われた瀉血(しゃけつ)治療がここでもされていたとの説明もあり、診療室も兼ねていたようです。

IMG_9447.jpg

他にも住居部分には暖炉跡が残るキッチンや......

IMG_9468.jpg

食堂跡があり、修道士たちが大きなテーブルを囲んで、スープやオートミールのおかゆなど質素な食事を私語厳禁の中、うつむいた姿で黙々ととっていた様子が案内板に描かれてます。

IMG_9475.jpg

残念ながら、住居部分のほとんどは基礎だけが残っている状態です。

修道士たちはこの住居部分の上階で寝泊まりし、教会につながる階段を上り下りして、1日5回の礼拝に向かいました。

そして、限られた自由な時間は住居と教会の間にあった長方形の回廊に出て、瞑想や祈り、読書などに勤しんだようです。

IMG_9449.jpg

手前が基礎のみの住居跡で奥の広い芝生エリアが回廊跡、その奥が外壁と内部を残す教会跡。

さて、いよいよ、修道院の見どころとなる教会部分です。

幾度かの修復が行われていますが、身廊西側の窓の装飾は現在もしっかりと残っています。

IMG_9467.jpg

また、支柱や側廊の壁の残骸も置かれていて、それらを間近で見ることができます。

IMG_9456.jpg

そして、修道院の南の側廊を歩くとその教会のスケールの大きさに圧倒されるでしょう。

IMG_9457.jpg

側廊にはティンターンの聖母マリア像も立っていました。

IMG_9460.jpg

ゴシック建築独特のアーチ型の窓や柱、壁などに残る美しい装飾は細部まで丁寧に仕上げられてます。

IMG_9463.jpg

当時の建設技術の高さにただただ驚かされる巨大な廃墟です。

IMG_9466.jpg

ティンターン修道院では、最盛期の14世紀初めには、およそ400人に修道士が生活していたそうで厳格な規律を守りながら集団生活を送っていました。

ウェールズの自然に囲まれた静かな村は生涯、祈りと労働に勤めるだけの修道士たちにとって、最高の環境だったのかもしれません。

そんなイギリスの田舎の村はウェールズといっても、イングランドとの国境にあり、ロンドンからでも車や公共交通機関を利用して、3時間ほどで訪れることができます。

今はまだ旅行が難しい状況ですが、事態が収束したら、ぜひ訪れてほしいウェールズのおすすめの場所です。

■ ティンターン修道院への行き方

・ ロンドン・パディントン(London Paddington)駅から鉄道でブリストル・パークウェイ(Bristol Parkway)駅へ(約1時間15分)。

・ ブリストル・パークウェイから19番バス、17番バスと乗り継いで、チェップストウ(Chepstow)へ(約40分)。さらに69番バス乗り継ぎ、ティンターン(Tintern Abbey)へ(約15分)。

筆者

イギリス特派員

June

60カ国以上の渡航歴あり。2016年、結婚を機に英ウェールズへ移住。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。