【世界遺産】ハドリアヌスの長城巡り「ハウスステッズ・ローマン・フォート」&「ブロコリティア」

公開日 : 2021年02月14日
最終更新 :
筆者 : June

Suet Mae!(シュマイ!こんにちは!)

ウェールズのロックダウンは2021年2月19日まで延長され、現在も厳しい外出制限が続けられていますが、同時にワクチンの接種も順調に行われていて、わが家も義父母がともに1回目の接種を無事に終えました。

ただ、対象となる国民全員に順番が回るのはまだまだ時間を要するため、政府は引き続き「ステイ・ホーム」や「ステイ・ローカル」を呼びかけています。

自由に旅ができるのはもう少し先になりますが、アフターコロナで行きたい場所を考えながら、おうち時間を過ごしてます。

そこで今回も2020年の秋に訪れたイングランドの観光地を紹介します。

いまだ新型コロナウイルスが猛威をふるっていますが、収束したら再訪したい、また皆さんにも訪れてほしいおすすめの場所です。

■ ローマ人がイギリスに残した文化遺産「ハドリアヌスの長城」

イングランド北部、スコットランドとの国境近くにある「ハドリアヌスの長城(Hadrian's Wall)」は、イギリスに侵攻したローマ帝国第14代皇帝ハドリアヌスが北方のピクト人やスコット人の侵入を防ぐため、2世紀に築かせた城壁です。

完成当時は東のニューキャッスル・アポン・タイン(Newcastle-upon-Tyne)から西のカーライル(Carlisle)まで、古代ローマの距離単位で80マイル(約120km)にもおよぶ城壁がイングランドの北辺を東西に横断していたとされ、ローマ人がイギリスに残した遺跡の中でも最も貴重なものとして、1987年に世界遺産(文化遺産)に登録されました。

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▲ 丘陵地帯の稜線に沿って続く「ハドリアヌスの長城」

高さ4~5m、厚さ2.5~3mの堅固な壁は完成当時は土塁でしたがその後、現在見られるような石垣に補強され、1ローママイル(約1.48km)ごとに見張り台「マイルキャッスル(Mile castle)」が設置されました。

また長城には16の砦も築かれ、常時数百人のローマ兵が各所に駐留し、防衛線としての重要な役割を担いました。

5世紀はじめにはローマ帝国の衰退とともに、ローマ軍もブリテン島から撤退し、ハドリアヌスの長城はそのまま放置されましたが、壁に使われていた石は地元の人々によって建物や土地を区切るフィールド壁などに再利用されました。

そのため、内陸部の田舎や丘陵地帯では現在も城壁や遺跡が多く残っていますが、都市部にはごく一部が見られるだけとなってます。

ただ、長城が築かれた場所は役割を終えた後もスコットランドとイングランドの境界線として認識され、現在の国境にも大きな影響を与えたとされます。

■ ハドリアヌスの長城巡り①「ハウスステッズ・ローマン・フォート」

およそ120kmにもおよぶハドリアヌスの長城のうち、最も保存状態がよく、近づいて壁の高さや大きさを体感できることで観光客に人気の場所が「ハウスステッズ・ローマン・フォート(Housesteads Roman Fort)」です。

その名のとおり、16の砦のひとつだったハウスステッズには城壁以外に駐留していたローマ兵が使用したとされる珍しいローマ式共同トイレや病院など、ローマ時代の遺構が残っていて、併設の博物館とともに見学することができます。

現在はイングリッシュ・ヘリテージとナショナル・トラストが共同で管理・運営を行い、一般公開してます。

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▲ 「ハウスステッズ・ローマン・フォート」のビジターセンター&案内板(入場料:大人£8.10、小人£4.90)

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▲ ビジターセンターに設置された周辺散策マップ

入口となるビジターセンターにはトイレと売店、カフェが併設されています。

通常は当日でも入場券の購入は可能ですが、私たちが訪れた際はCOVID-19対策のため事前に予約が必要で、残念ながら、入場が制限された博物館(写真右:周辺マップ⑥)と遺構(写真左:周辺マップ⑨⑩)は見学ができませんでした。

ただ、ビジターセンターのスタッフから城壁だけなら自由に見学していいと案内されたので、今回はカフェで軽食を購入して入場させてもらいました(ナショナル・トラストとイングリッシュ・ヘリテージのメンバーだからかもしれませんが......)。

ビジターセンターから城壁や遺構のある丘の上までは約750m、緩やかな上り坂を10分ほど歩きます。

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▲ ビジターセンターの裏手から望む「ハウスステッズ・ローマン・フォート」

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▲ 遺跡周辺は羊が放牧されたのどかな牧草地

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▲ 遺構近くの博物館(周辺マップ⑥)とアクティビティ・センター、ホリデー・コテージ(周辺マップ⑦⑧)

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▲ 遺構西側からの景観

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▲ 見張り台「マイル・キャッスル」

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▲ 1500年以上昔に築かれた城壁で記念撮影

緑の丘陵地帯にはるか彼方まで続く長城の美しい景観は季節を問わず、訪れる人々を魅了します。

壮大なスケールの長城で悠久の歴史とロマンを体感しながら、ぜひ記念撮影も楽しんでください。

■ Housesteads Roman Fort

・ 住所: Haydon Bridge, B6318, Bardon Mill, Hexham NE47 6NN

■ ハドリアヌスの長城巡り②「ブロコリティア」

ハウスステッズから東へ約7km、「チェスターズ・ローマン・フォート(Chesters Roman Fort)」との中間地点に16の砦のひとつ「ブロコリティア(Brocolitia)」があります。

約500人のローマ兵が駐留したとされるブロコリティアはノーザンバーランド国立公園を見下ろすわずかに高くなった自然のテラスでその面積は1.4ヘクタール(1万4000平方メートル)と広大です。

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▲ 「ブロコリティア」の案内板(見学無料)

ブロコリティアの見どころはローマ兵によって3世紀に建てられた「ミトラス神殿(Temple of Mithras)」の遺跡です。

ミトラス教は古代ローマで軍人を中心に流行した密議宗教(教義や儀式などの内容を口外することを禁じた宗教)で太陽神ミトラスを崇拝し、牛を屠る儀式を行いました。

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▲ 3世紀に建てられた「ミトラス神殿」の遺跡

遺跡の入口に設置された案内板には当時、行われていたとされる儀式の様子が描かれています。

また神殿は小さいながらも遺構の状態はよく、3つの石が並ぶ祭壇もレプリカですが、発掘されたものを忠実に再現しているらしく見応えがあります。(祭壇の実物は現在、ニューキャッスル・アポン・タインの博物館に保管されています)

ミトラス神殿もイングリッシュ・ヘリテージが管理していますが、入場無料でいつでも自由に見学が可能です。

■ Temple of Mithras

・ 住所: Humshaugh, Hexham, Northumberland, NE46 4DB

■ ハドリアヌスの長城への行き方

ハドリアヌスの長城を訪れる際、起点となるのはヘクサム(Hexham)駅とハルトウィッスル(Haltwhistle)駅です。

両駅ともニューキャッスル・アポン・タイン~カーライル間にあり、鉄道またはバスで行くことができます。

・ ニューキャッスル・アポン・タインからヘクサムまでは列車で約30分。685番バスで約1時間

・ カーライルからハルトウィッスルまでは列車で約30分。685番バスで約1時間

春から秋にかけての観光シーズン(2020年は4月4日から11月1日で運行)には、ヘクサム~ハルトウィッスル間で観光に便利な循環バス(AD122)が1時間に1便運行され、ハウステッズやチェスターズなどの主要観光地を気軽に巡ることができます。

ただし冬期は運休となるため、タクシーやレンタカーを利用する必要があります。

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▲ 長城周辺に設置された案内板の観光ルートマップ

長城踏破を目指す人もいれば、ハイキングやサイクリングを楽しむ人も多く、周辺にはフットパスやサイクリングルートが整備されています。

時間があれば、遺跡巡りついでにのんびりと自然を満喫しながらのハイキングもおすすめです。

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▲ パブリック・フットパスの案内板

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▲ フットパスから望む「ハドリアヌスの長城」

今回紹介したハウステッズやブロコリティアのほかにも、共同風呂跡が残るチェスターズ・ローマン・フォートや「ローマン・アーミー博物館(The Roman Army Museum)」など、遺跡巡り好きにはたまらない見どころが満載です。

湖水地方にも近いので、観光に訪れた際はぜひ、世界遺産「ハドリアヌスの長城」へも足を運んでみてください。

筆者

イギリス特派員

June

60カ国以上の渡航歴あり。2016年、結婚を機に英ウェールズへ移住。

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