イギリスの中の異国【ウェールズ】

公開日 : 2020年02月19日
最終更新 :
筆者 : June
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Sut Mae!(シュマイ! こんにちは!) 前回は私が暮らすウェールズ中部の町、ウェルシュプールをご紹介しましたが、皆さん、ウェールズと聞いて、何を思い浮かべられますか?2019年、日本で開催されたラグビーのワールドカップではベスト4とウェールズのナショナルチーム"レッドドラゴンズ"が活躍したことでラグビーを挙げられるかもしれません。 私は元添乗員という仕事柄、イギリスには何度もきていましたが、主人と出会うまではウェールズを訪ねる機会がなく、辺境の地といったイメージだけでよく知りませんでした。 世界遺産の古城や美しい大自然に恵まれながら、ウェールズはイングランドやスコットランドに比べ、日本での認知度はまだまだ低く、イギリスの中でもマイナーな国といわれています。実際、日本でウェールズのガイドブックを探しても、イギリス版に少し掲載されている程度で情報も少なく、日本の旅行会社が企画するイギリスのツアーにウェールズはほとんど含まれていません。 今回はそんなあまり知られていないウェールズの基本情報をお伝えしたいと思います。

■ウェールズは国?

イギリスは正式名称をグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国といい、グレートブリテン島のイングランド、スコットランド、ウェールズと北アイルランドの4つの国で構成されています。私たち日本人は関東や関西といった地方名のように思いがちですが、イギリスではそれぞれが国として、しっかり区分されていて、政治やスポーツなどでこの国同士の対立や試合を見ることがあります。 ウェールズはグレートブリテン島の中でもっとも小さく、面積と人口は日本の四国と同じくらい。イングランドの西側、海を隔てて、アイルランドに面しています。 首都はウェールズ南部に位置するカーディフ市で人口は約30万人。ウェールズは人口よりも羊の数の方が多いといわれています。

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■ウェールズのシンボル"ウェルシュドラゴン"

ウェールズの国旗は白と緑の2色のベースに"ウェルシュドラゴン"と呼ばれる赤い竜が描かれた独特のデザインでイギリス国旗のユニオンジャックには含まれていません。その理由はウェールズが16世紀にはイングランドの一部として、すでに統合されていたためでほかの国々が連合王国になった状況とは異なるからです。

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■古城王国ウェールズ

ウェールズには現在、世界遺産の4つを含め、600以上の古城(城址も含む)があり、城の密度は「世界一」(※ウェールズ政府公式サイトによる)です。これはイングランドとの戦いなど、歴史の名残といえるのですが、今ではウェールズの重要な観光資源であり、実際にウェールズの古城巡りはイギリス人だけでなく、ヨーロッパ人にたいへん人気です。観光案内所や大型スーパーには古城巡りに便利な無料の地図が用意されていて、どこでも簡単に手に入れることができます。

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■大自然の宝庫ウェールズ

そして、ウェールズの最大の魅力は美しい大自然です。日本の山とは違って、木がほとんどないのがウェールズの山の特徴で北スノードニアから南のブレコンビーコン国立公園まで中央をカンブリア山脈が走り、なだらかな丘陵地が広がってます。西側にはイギリスで唯一のコースタル国立公園、ペンブロークシャー海岸国立公園があり、国土の約20%が国立公園に指定されています。また、イギリス発祥の遊歩道「フットパス」も多く、誰でも気軽にウォーキングを楽しみながら、この雄大な自然を体感できます。

Footpass sign.jpg

■バイリンガルの国 ウェールズ

最後にウェールズはよく"イギリスの中の異国"と例えられます。それはヨーロッパ最古の言語のひとつであるウェールズ語が現在も公用語として使われているからです。

イングランドから国境を越えて、ウェールズに入るとすぐに道路標識や町の案内表示、駅名などがウェールズ語と英語の2ヵ国語表記に変わります。

Road sign.jpg

このウェールズ語はケルト語の一種で英語とは単語や文法、発音がまったく異なります。もちろん公用語ですから、ウェールズ国内の学校(義務教育課程)ではウェールズ語が必須科目となっています。ただ実際にはウェールズ語を不自由なく読み書きできるのはウェールズ人の20%程度だとか......。イングランドとの国境近くに住む私の周囲にはウェールズ語を普段から使っている人はいません。ウェールズ語の母語話者はウェールズ北部と西部に多いようで、西海岸の町、アベリストウィスに住む知人は日頃から家族や友人とウェールズ語で会話し、ウェールズ語のテレビ番組を観ています。

ちなみに現在の国名である「ウェールズ」はウェールズを侵略したサクソン人の言葉「ウェーリス」が由来で意味は「外国」。つまり、サクソン人が言葉や文化が異なるウェールズを「外国」と呼んだことからはじまります。

ウェールズ語で「ウェールズ」は"Cymur"(カムリ)といい、意味は「同胞・仲間」です。そして、「ようこそ」は"Croeso"(クロイッソ)。

ウェールズの多くの場所でこの"Croeso i Gymru"が掲げられていて、訪ねる人々を温かく迎えてくれます。

"ようこそ ウェールズへ(仲間たちへ)"これから、皆さんにウェールズの魅力をたくさんお届けしたいと思います。

筆者

イギリス特派員

June

60カ国以上の渡航歴あり。2016年、結婚を機に英ウェールズへ移住。

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