続・スペイン語の名前についての豆知識
前回の「スペイン語の名前についての豆知識」に続編です。日本にはないスペイン語の名前の習慣を紹介します。
スペインでは、父と息子、母と娘が同じ名前ということがあります。私のまわりにも何家族もいますが、ちょっと紛らわしかったりします(苦笑)ちゃんと区別するために名前の後にパドレ(父)、マドレ(母)、イホ(息子)、娘(イハ)を付けたりします。
例:お父さんの方のフアン→ フアン・パドレ(Juan padre)
例:娘の方のカルメン→ カルメン・イハ(Carmen hija)
私の知り合いのフアンの家族は、もう何代も前から長男はみんなフアンという名前だそうです。日本だと同じ漢字を名前のどこかに入れる、みたいな感覚なんでしょうか。
もうひとつ、スペインの名前で特徴的だと思ったのは、その土地の聖人にちなんだ名前が多いということです。たとえば、バレンシアの守護聖母はデサンパラードス(Desamparados)。短縮形はアンパロ(Amparo)ですが、特にバレンシアに多い女性名です。ほかの地域でもいることはいますが、もしかしたら先祖や出身地がバレンシアなのかもしれません。また、サラゴサ大聖堂の聖母ピラールはスペインの守護聖母ですが、ピラールという名前の女性もサラゴサに多いんです。バレンシアにはビセンテ・マルティールとビセンテ・フェレールという聖人がいるせいか、ほかの地方よりビセンテという名前が多い印象もあります。名前に地方性があるのは面白いですね。日本はどうなんでしょう?
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<聖堂から担ぎ出されたバレンシアの聖母デサンパラードスの像>
スペインには同じ名前の人が大勢います。たとえば、ホセ(José:キリストの父)やマリア(María:キリストの母)はその代表格。もともとフランコ独裁政権時代は、キリスト教聖人の名前だけが公式に許可されていたのです(※それもスペイン語のみ。カタルーニャ語やバスク語はNG)。カトリック教会のカレンダーには聖人の日があり、たとえば3月19日はキリストの父である聖ホセの日です。この日にはホセという名前の人たちはまわりから「おめでとう」と祝福されるんですよ。これも面白い文化ですね。名前には流行があり、最近はこのようにクラシックな聖人名は減少傾向にあります。ちなみに私の子どもは日本語名なので、聖人の日がありません。こういう場合は万聖節(諸聖人の日)が聖人の日になると洗礼を授けてくれた神父様に言われました。
男性でホセ・マリア、女性でマリア・ホセという名前もよく耳にするのですが、キリストの両親の名前を両方使うだなんて日本人の感覚からするとすごいですよね。もちろんヘスース(Jesús:イエス)というそのものの名前も存在します。
スペイン語の名前、豆知識でした。
筆者
スペイン特派員
田川 敬子
東京生まれの東京育ち。オリーブオイル専門家としてスペインと日本で活動するほか、複数のウェブサイトにスペイン情報を寄稿。
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