No.571いつもと違う2020年のラマダン、始まりはいつ?
前回No.570では、いつ満月になるかによって復活祭の日程が毎年決まることを書きました。実は、今日お伝えするのも月が決める宗教行事日程の話です。
© Kanmuri Yuki
それは、ラマダン。イスラム教における聖なる月です。
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ラマダンの始まり
太陰暦であるイスラム暦の9つ目の月にあたるのがラマダンです。そのためラマダンの時期は、毎年(西暦上では)異なる日程にあたります。しかもイスラム教では、計算によってわかる新月の日ではなく、実際に月を観測して初めてラマダンの始まりを公式に宣言するのです。
フランスの場合、パリのモスクから責任者数名が観測し、確認が取れてからがラマダンの始まりとなります。気象的な理由で見えない場合は、次の日にずれることもあるのです。
今年2020年は、今のところ4月24日がラマダンの始まりであろうと考えられていますが、すべては23日の月の観測にかかっているため、確実なことは3日後の夜までわかりません。
フランスの人口約6.8%がムスリム
具体的に、ラマダン期間中のムスリムたちは、太陽が出ている間、飲み食いしたり、たばこを吸ったりすることが禁じられています。ただし、日が沈めば、飲み食いはすべてOKなため、日没後は、普段より贅沢で品数の多いご馳走を皆で集まって食する傾向にあります。フランスでも例年ラマダンの時期は、普通のスーパーでもイスラムのお菓子売り場などが増設されます。油や蜂蜜をたっぷり使った甘いお菓子は、ムスリムでないフランス人にもファンが多く、なかなかの盛況を見せるのが常です。
ずらっと並ぶラマダン用ムスリムのお菓子売り場 ©Kanmuri Yuki
フランスにおけるイスラム教徒の数は、およそ人口の6.8%。数にすれば、410~840万人と考えられています。1960年代から増えた移民が人数拡大のきっかけではありますが、アラブ世界研究所なども設立され、イスラム世界研究は活発だといえるでしょう。
新型コロナウイルスの影響
さて、聖なる月ラマダンではありますが、2020年はカトリック教徒が、復活祭を教会で祝えなかったのと同様、ラマダン中もモスクは閉鎖されたままとなる見込みです。
フランス・イスラム評議会(CFCM)代表も、祈りは自宅でするように、日没後の家族の集まりに参加できない場合は、スカイプ、WhatsAppなどのアプリを使ってバーチャルな集会とするようにと発表しています。メディア報道を見ても、これらの措置は、フランスだけではなく、中東、東南アジア、北アフリカと、世界中のムスリムに共通する話のようです。
本来、人々の行く手を照らし支えとなるべき宗教ですが、新型コロナウイルスは韓国、イラン、フランス東部などで、さまざまな宗教の集まりを介して拡がっており、こうした対策もやむをえないものといえるでしょう。
予測通りラマダンが2020年4月24日始まるとすれば、5月23日ごろまで続くことになります。フランスの外出制限解除は、5月11日から始まることになっていますが、宗教施設がいつごろから門戸を開くのかは、今のところ定かではありません。一気に開けば元の木阿弥になることは目に見えています。
ここは、敬虔な信者たちにとっても、堪えどころになるといえるでしょう。
(冠ゆき)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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