No.546 マリー・アントワネット最期の76日に寄り添ったロザリーの話
フランス最後の王妃マリー・アントワネットが処刑されたのは、1793年10月16日のことでした。最期の日々を過ごしたのは、パリのコンシエルジュリー(Conciergerie)。
コンシエルジュリーでは、王妃の命日となる今年の10月16日から2020年1月26日まで、「マリー・アントワネット、イメージのメタモルフォーゼ(Marie-Antoinette, métamorphoses d'une image)」展開催中です。
非常にユニークなこの展覧会については、コンシエルジュリーの歴史やマリー・アントワネット観とともに、こちらの記事にまとめましたので、是非お読みいただけたらと思います。
さて、今日話題にしたいのは、マリー・アントワネットの最期の日々に仕えたロザリー・ラモルリエール(Rosalie Lamorlière)についてです。
「コンシエルジュリーの王妃(La reine à la Conciergerie)」, A Sceffer
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ごく一市民に過ぎないロザリーについて、10年に亘り、歴史を愛するリュドヴィック・ミズロール(Ludovic Miserole)氏が、わずかな記述をたどって調べた内容が、最近France 3のニュースで取り上げられました。タイムリーな話題ですので、簡単に紹介しておきましょう。
同記事によれば、ロザリーの本名は、マリー=ロザリー・ド=ラモルリエール。生まれたのは、1768年オワーズ県のブルトゥイユ(Breteuil)でのことでした。
パリに出たのは22歳の頃、革命前夜ともいえる時期です。その頃から、ロザリー・ラモルリエールと名乗るようになります。
ロザリーが初めてマリー・アントワネットに出会ったのは、1973年8月1日、王妃の収容されるコンシエルジュリーでのことでした。夜着への着替えの手伝いを申し出たロザリーに、王妃が、「牢獄に入ってから、ひとりでできるようになりました」と答えたと言います。
その日から76日間ロザリーはマリー・アントワネットの世話をしましたが、記録によれば、大変細やかな心配りができる女性だったようで、いくつかの逸話は、ロザリーと王妃の間に一種の信頼関係が芽生えていたことを示しています。
「コンシエルジュリーを後にするマリーアントワネット, 1793年10月16日」William Hamilton (1794), © Coll. Musée de la Révolution française - Domaine de Vizille
ロザリーは、マリー・アントワネット亡き後も、ロベスピエールや、バリー夫人といった収容者の面倒を見て、計6年間コンシエルジュリーで働きました。
1801年には娘を出産。1824年には健康状態悪化のため施療院に入院。その費用は、マリー・アントワネットの関係者が出していたそうです。そのまま施療院でロザリーが亡くなったのは1848年2月2日、彼女が80の時でした。
彼女の亡骸は、モンパルナスの共同墓地に埋められましたが、ロザリーの娘が母のことを刻んだ墓碑は、ペール・ラシェーズ墓地に立っています。
碑に曰、
"母、ロザリー・ドラモルリエールを偲んで。囚われの身である故王妃マリー・アントワネットのそばに76日間仕えた最後の人物であり、優しさと敬意をもってその役を全うした人物。1848年2月2日没。享年80。彼女のために祈りを"。
ロザリーは亡くなるまで、マリー・アントワネットについて積極的には語ろうとしませんでした。ただ2度だけ、例外的に、歴史家のインタビューを受けたそうです。
コンシエルジュリーで描かれたというロザリーの肖像画は、いまだ見つかっていません。ミズロール氏の探求はまだ続いています。
コンシエルジュリを訪れる時は、是非、ロザリーのことも合わせて思い出してみてください。
「マリー・アントワネット、イメージのメタモルフォーゼ(Marie-Antoinette, métamorphoses d'une image)」
場所:コンシエルジュリー
住所:2 boulevard du Palais, 75001 Paris
最寄り駅:メトロ1,7,11,14番線のChâtelet駅、4番線のSaint-Michel駅/Cité駅
開館時間:9時半~18時(水曜日は20時半まで)(入場は閉館の45分前まで)
休館日:12月25日
入館料:大人9ユーロ
(冠ゆき)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
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