No.513フランス北部:アールデコを巡るおはなし、あれこれ
建設から110年になるグラン・ブールヴァール
フランス北部のリル(リール)には、北方に向けて、トラム(路面電車)の路線が走っています。マルカンバロル(Marcq-en-Baroeul)から、二手に分かれ、あるいはトゥルコアン(Tourcoing)、あるいはルーベ(Roubaix)へと続きますが、どちらも、「グラン・ブールヴァール」と呼ばれる大通りを通って行きます。
夏のグラン・ブールヴァール ©冠ゆき
グラン・ブールヴァールについては、ずっと以前こちらの記事にも書いたので簡単に記しますが、ちょうど110年前の1909年に作られたものです。先見の明があったのでしょう、幅50メートルもの広い通りで、最初からトラム敷設計画込みでした。
枯れ葉舞う秋のグラン・ブールヴァール ©冠ゆき
高い木が連なり、車で走っても気持ちのいい通りですが、ジョギングやサイクリング用のレーンも整っていて、時間があれば、いくらでも遠くへ遠くへと足を伸ばしたくなります。
・
建築のショーウィンドー
グラン・ブールヴァール沿いの家。手前の線路はトラム ©冠ゆき
また、グラン・ブールヴァール沿いの建築には、なかなか見応えのあるものが多く、特にアールデコ調のものが目立ちます。というのも、この地方が、主に繊維産業で経済的繁栄を迎えたのは、20世紀前半のこと。すなわちアールデコ全盛期だったのです。
建築家たちにとって、グラン・ブールヴァールは、名刺代わりとなるショーウィンドーのようなもので、特に凝った力作が並んでいるというわけです。
散策せずにはいられないバルビユー公園
さて、上述の通り、リルから北に延びるこのグラン・ブールヴァールは、マルカンバロルで、二手に分かれ、右はルーベへ、左はトゥルコアンへと続きます。
このうち、ルーベへと延びるグラン・ブールヴァールは、途中からバルビユー公園(Parc Barbieux)に沿って走ります。バルビユー公園は、19世紀末から計画され、1905年に完成した公園です。1.5キロメートル、34ヘクタールという細長い形をしており、池や遊び場も充実した緑多い美しい公園として知られます。1911年には、国際博覧会の会場にもなりました。
つい足を踏み入れたくなるバルビユー公園 ©冠ゆき
バルビユー公園で寛ぐ人々 ©冠ゆき
東京都庭園美術館と繋がるエスプリ、カヴロワ邸
このバルビユー公園からクロワ(Croix)の閑静な住宅街に入ったあたりにあるのが、カヴロワ邸です。繊維産業で財を成したカブロワ=マイユ―(Cavrois-Mahieu)社のオーナー、ポール・カヴロワが自宅用に建てたもので、デザインしたのは、建築家ロベール・マレ=ステヴァンス(Robert Mallet-Stevens)。アールデコの宮殿を作ればこうなるに違いないと思える傑作です。
カヴロワ邸 ©冠ゆき
余談になりますが、日本で、アールデコの建物といえば、東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)が有名です。この建物は、フランス滞在中に負傷した朝香宮鳩彦王が、やむなくパリ滞在を延ばし、その間に見学の機会を得た1925年パリ万国博覧会(アール・デコ博覧会とも呼ばれる)でアール・デコに感銘を受けたことから現在のスタイルで建設されることになりました。
直接朝香宮邸建設にはかかわっていませんが、カヴロワ邸を建てたマレ=ステヴァンスも、このパリ万国博覧会では、パヴィリオンのひとつを設計していましたから、鳩彦王の目に留まったことは想像に難くありません。
カヴロワ邸の話に戻りましょう。詳しくはこちらの記事に書きましたが、このカヴロワ邸は、第二次世界大戦時ドイツ軍に占拠され、戦後も手入れされることなく、長く放置されていました。その後、これを丁寧に修復し、四年前2015年の6月に博物館として公開したのが、国立モニュメントセンター(Le Centre des monuments nationaux)です。
以来、さまざまな展覧会や、イベント、また映画ロケの舞台として活躍しています。
例えば、現在開催中のドデーニュ展についてはこちらの記事をご覧ください。
カヴロワ邸で朝ヨガのレッスン!
前置きが長くて恐縮ですが、実は、ここからがようやく本題です。
この夏は、このカヴロワ邸で、ヨガのレッスンが開かれます。
夏はバラが美しいカヴロワ邸庭園 ©冠ゆき
【カヴロワ邸】
住所:60 Avenue JF Kennedy, Croix
最寄り駅:LilleからRoubaix行きトラムのVilla Cavrois停留所下車。徒歩10分。
URL: http://www.villa-cavrois.fr/Actualites/Yoga
【日時】
6月21日(金)8時半~
7月13日(土)9時~
8月10日(土)9時~(予約は6/28以降から)
8月31日(土)9時~(予約は6/28以降から)
予約必須。予約はこちらから
【料金】
18.6ユーロ
ヨガ用のシートは持参不要ですが、水分補給のためのミネラルウォーターと、タオルをお忘れなく。
整然とした幾何学模様の広い庭園に囲まれたカヴロワ邸で、フランスの爽やかな夏の朝をヨガで始めるのはいかがでしょうか?
(冠ゆき)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。