No.512パリで観る!自らのルーツと向き合う《イナバとナバホの白兎》

公開日 : 2019年06月16日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

ケ・ブランリー美術館

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Musée du quai Branly - Jacques Chirac ©Architecture de Jean Nouvel

パリのケ・ブランリー美術館は、西欧以外の地域の文化を扱うミュージアムです。故シラク大統領が、パリ市長時代から推進していたプロジェクトであり、2016年からはその名を冠し「ケ・ブランリー - ジャック・シラク美術館(Musée du quai Branly - Jacques Chirac)」が正式名称となりました。

劇場、映画上映室も備えており、文化を広い角度から紹介できるようになっています。

日本文化とインディアン文化のつながり

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© musée du quai Branly - Jacques Chirac, photo Cyril Zannettacci

この劇場で、今月上映されるのが、宮城總率いる劇団SPACによる《イナバとナバホの白兎(Le lièvre blanc d'Inaba et des Navjo)》です。

イナバの白兎は、言わずと知れた『古事記』のお話です。細かいことは覚えていなくても、だましたワニに毛を剥がれたウサギを、大国主命が助けるという大筋は、大抵の日本人の頭に入っているのではないでしょうか。

じゃぁ、ナバホってなんだろう?

ナバホというのは、アメリカ大陸先住民族であるインディアンの部族名です。

つまり、この劇は、日本とインディアンの文化の根っこのつながりを示唆・検証する内容となっているのです。

文化に優劣を認めなかった人類学者

なんとも大胆なこの仮説は、実はクロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss)が立てたものです。

レヴィ=ストロースは、20世紀後半の学問思想に多大な影響を及ぼした構造主義の祖として知られる人物です。同氏の日本に関する考察を集めた『月の裏側 日本文化への視角(L'Autre face de la lune. Ecris sur le Japon)』で、氏はアジアの特定の神話とアメリカン・インディアン文化が呼応しているように見える点を指摘しています。

簡単に言えば、まだ多くの島が大陸とつながっていた時代に、神話の素のようなものが、インドネシアからアラスカを経てアメリカ大陸まで広がったのではないかと考えたわけです。

レヴィ=ストロース没10年目の再演

この劇は、レヴィ・ストロースの考えにインスピレーションを得た宮城總氏が創作したもので、初演は、ケ・ブランリー美術館10周年を記念する2016年のことでした。

今年は、レヴィ・ストロース没から10年という節目で、ケ・ブランリー美術館での再演となったわけです。

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© musée du quai Branly - Jacques Chirac, photo Cyril Zannettacci

上演は下の5回を予定しています。

【日時】

6月19日(水)20時~

6月20日(木)20時~

6月21日(金)20時~

6月22日(土)18時~

6月23日(日)17時~

【料金】

20ユーロ(同日のケ・ブランリー美術館入場料金も含む)

席は自由席。開場は30分前。

チケットの購入はこちらのサイトからどうぞ。

【場所】

ケ・ブランリー - ジャック・シラク美術館

住所:37 Quai Branly 75007 Paris

開館時間:11時~21時

最寄り駅:メトロ9番線Alma-Marceau ou Iéna駅、8番線Ecole Militaire駅、6番線Bir Hakeim駅、RER C線Champ de Mars-Tour Eiffel駅

海外を旅したり、海外に住んだりしていると、自らが無意識のうちに拠り所としているアジア文化を意識する機会が多くあります。

《イナバとナバホの白兎》鑑賞は、真っ白な気持ちで、アジアの文化遺産を眺める最適な機会となることでしょう。

(冠ゆき)

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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