No.281パリ・テロ事件から1か月、フランスの様子まとめ
どんな時も、時間は迷いもなく進むもので、パリのテロ事件から昨日で1か月が過ぎました。
《メディアの関心》
テロ後、最初の2週はテロ事件関連ニュースオンリーにも見えました。
けれども、そのあとは、COP21(フランスは、テロ事件後、11/30-12/11の予定でCOP21の開催国となりました。最終合意は12/13に成立)、また地方議会選挙第一選(12/6)、第二回地方議会選挙第二選(12/13)がニュースのメインとなっています。
特に、第一選では、極右政党FNがかなりな優勢に立ったため、第二選にどう対応するか、それぞれの地方の各政党の出方が大きなニュースになりました。今日12/14も昨日の選挙結果の分析に関するニュースが大半を占めているように見えます。
《フランス人への影響》
テロ事件が及ぼしたフランスとフランス人への影響は数えればきりがないでしょうが、簡単にまとめれば、下のように分けることができるように思います。
【連帯意識】
いくつかの追悼セレモニーやテロ事件現場へ手を合わせに訪れるほかには、下のような現象が挙げられます。
・テロ事件後すぐの段階から、献血希望者が関連施設に殺到した。
・赤十字や白十字が行っている救急医療入門コースの希望者が、ぐんと増えた。
・フランス国旗が多く売れる。
・警察官や救急隊員に好感を抱く人が増える。
【抵抗】
・「前と同じように生活することこそがテロリストへの抵抗だ」という考えが早くから示される。みなでビストロへ行こう。テラスで食事をしよう。クリスマスを楽しもう、という傾向が見られる。(このあたりについては、「自粛とは無縁のパリ市民。「みんなでビストロへ」と呼びかけも」や「話題の映画にちなんだショーウィンドウも」にまとめましたので、興味のある方はどうぞお読みください)
・同じように、開催が危ぶまれたストラスブールのマルシェ・ド・ノエルも開催を選択しましたが、その理由の一つとして、「テロリストへの抵抗」を挙げている。
【怖れ】
・当然ながら、不安に駆られる国民も多く、睡眠薬、精神安定剤が良く売れている。
・心のケアに関しては、政府の対応は早く、専用電話番号や、専門家による相談室も素早く準備されました。心のケアに関する各メディアの記事も、早い時点から出されました。(子供への対応については、「不安を感じるニュース。子どもにどう伝える? 」にまとめました。よろしければ、ご覧ください)
・テロ事件から数日後、フランスの小さな町で人質立てこもり事件が起こりました。普段ならローカルニュースで終わったはずのこの事件。即座に全国ネット、全世界で報道されました。(CNNでもすぐ報道されたのは確認済み)。結局テロリストとは無関係でしたが、全世界がフランスに注目していることがよくわかる出来事でした。
【敵を知れ】
・アラブやイスラムについての本の売れ行きが増え、品切れとなる本屋が増える。
・テロ後すぐに、教育省では、11/16(月)学校で子供たちにどのようにテロについて話すかという手引きと、カウンセリングシステムを整備。ここにも、事件とその背景、思想について、正しい知識を与えようという姿勢が見られます。(教育現場での取り扱いについては、「黙祷の前に「子ども同士」で話し合いを。フランス教育大臣のメッセージ」と「1分の黙祷だけじゃ足りないよ」パリ、テロ後の子どもたちの反応」にまとめましたので、よろしければお読みください)
【反骨精神】
・11/27 には、130人のテロ犠牲者の追悼セレモニーをパリのアンヴァリッドで国が執り行ったが、犠牲者2名の遺族は、この招待をボイコット。理由は、テロ阻止の政策が足りないという国への批判。
・テロ事件後すぐにフランスには非常事態体制が敷かれました。その後上下院の了承を得て、2月末まで延長となりましたが、この非常事態により、「集会禁止」となった地域がいくつかあります。パリなどでは「集会禁止」に反対する集会(!)が開かれたりしました。(非常事態宣言については、こちらにまとめましたので、よろしければご覧ください)。
【治安】
・皮肉なことに、というか、これだけ警官が町にいれば当然というか、傷害事件や盗難事件が減少。つまり治安は、テロ事件後の方が良くなる。
私が実にフランスらしいと思うのは、【敵を知れ】や【反骨精神】、また【抵抗】に分類した現象です。良い意味でも悪い意味でも、足並みが揃いそうで揃わないというか、この辺の、決してお上に唯々諾々と従わないあたり、反骨精神というか懐疑主義というか、フランス人だなぁ、と思わずにはいられません。
(冠ゆき)
筆者
フランス特派員
冠 ゆき
1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。
【記載内容について】
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