No.269パリ同時多発テロ事件より1週間のフランス:状況まとめ

公開日 : 2015年11月20日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

先週金曜夜フランス・パリを襲ったテロ事件。即日非常事態宣言が出され、自爆したテロ犯の仲間や首謀者の捜索が行われています。

今日まで5晩の成果は、

793件の捜索、90人勾留、174の武器押収、64の麻薬押収、25万ユーロ押収、164件の居住指定となっています。

同時に、新たなテロを防ぐための策も編まれ、毎日どころか毎時のように事態に新しい展開が見られるフランスです。

フランスのみでなく、ベルギーブリュッセルでも逮捕者が複数出たりと、周りの国とも関連して捜索は進んでいるようです。

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こういう状況だと、みんな息を殺してひそやかに暮らしているのでは、、、、と思われるようですが、そういうわけでもありません。もちろん、18日(水)朝のサン・ドニのように、テロリストの潜伏場所と思われる場所を襲撃するような状況では、地区の人は、家に閉じこもって、安全を図る必要がありますが......

私の住むフランス北部では、市民の日常は、意外に普段通りです。

重苦しい空気を感じないわけではありませんが、テロのあった先週末も、この地方では、博物館・美術館とも閉館したところは、私の知る限り、ありませんでしたし、喪中にあっても、コンサートなどは普通に開かれました。

かといって、テロ事件のことを忘れているわけではなく、美術館のセキュリティチェックでは、みなおとなしく並び、いつもより進んでセキュリティに鞄を開いて見やすいように協力しているように思えましたし、コンサートの始まりには、黙祷を捧げ、マルセイエーズを歌う場面もありました。

この一週間で、私も美術館へもコンサートへも行きましたが、美術館の空気や、音楽の場が、こんなにも心の癒しになるとは、今まで気が付きませんでした。

セキュリティ体制が間に合わなくて、パリでは先週末閉館した美術館が多くありましたし、爆弾脅迫を受けて、エッフェル塔が開業したと思ったらまた閉鎖されたりと、混乱もありましたが、一様に「条件さえ整えば開館」という姿勢であるのは、やはりフランスだな、と思います。

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市警察

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国家警察

それ以外目に見える変化は、やはり警官、軍人が町中に目立つこと。フランスには、市警察と国家警察、それに加えて憲兵がいます。市警察官は、普通武器を持っていないのですが、昨日19日木曜からは、希望地域の市警察官(また一定の条件を満たす者)は、武装できることになりました。

パリの地下鉄で1995年にテロがあった時、私はパリにいたのですが、その時も同じように武装警官が町や駅を巡回するのをよく目にし、安心感を得たものです。

「非常事態」は12日しか効力をもたず、延長には、上院下院の投票による可決が必要です。昨日下院では大多数の支持を得て可決されました。上院の投票がまだ終わっていませんが、おそらく可決され、3か月に延びると考えられています。

非常事態においての対応は、県知事の決定できるものが多くなるので、県によって大きく変わりますが、基本的に、いくつかの自由が制限されることになります。たとえば、危険があると見なされた場所が閉鎖されたり、通行禁止となったりしますし、公道を用いた集会が禁止されたりします。

リヨンでは、毎年光の祭典を開催しており、2-3百万人の観客を集めています。今年の開催予定日は12/5~8日だったのですが、昨日、開催中止の発表がありました。その代わり、12月8日一日だけ、テロ事件被害者を追悼する集会を開くことにしています。

毎年多くの観客を呼ぶストラスブールのマルシェ・ド・ノエルも、開催が危ぶまれて、ここ数日、憶測が二転三転しましたが、今日になって、市長が開催を発表しました。11月27日からの予定です。つつがなく開催されると良いなぁ、と思っています。

リールでは、既に11/18からマルシェ・ド・ノエルが開かれています。いろんなニュースに埋もれて、紹介する機会もありませんでしたが、例年通りリウール広場に丸太小屋が80以上立ち、人々の気持ちを盛り立てているようです。

1月のシャルリー・エブド襲撃事件と比べて、今回はマスコミの画像や情報の取り扱いは、慎重で、そのせいか、批判もあまり聞きません。

相変わらず、誰が流すのか、偽情報がSNSに流れることもあるようですが、早いうちに偽情報をつかまないようにという警告記事が各新聞社から出されていました。

また、こちらは1月のシャルリー・エブド襲撃事件の時と同じですが、警官への感謝の気持ちを言葉や態度に表す人も増えているようです。実際、RAID(特殊部隊)をはじめとして、軍隊はもちろんですが、警察官の仕事ぶりは素晴らしく、敬意に値するものという認識が広くいきわたっているようです。

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写真は市警

人々の連帯意識もあちこちに芽生えが見られます。

いろいろありますが、例えば、今晩(11/20)21:20には、どこにいようと、隣の人と手を取り合おうという呼びかけ#maindanslamain #neoresistanceがなされています。

その一方で、今この稿を書いている現在、マリのバマコのラディソンホテルで、テロリストと思われる犯人による銃撃と宿泊客を人質に取った立てこもり事件が起こっています。これ以上、テロの犠牲者が増えないことを祈るばかりです。

フランスの様子について続報はtwitterで流していますので、続報はそちらでご確認ください。

(冠ゆき)

外務省 海外安全ホームページ

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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