モントリオールの「カナダ鉄道博物館」への旅(5):いよいよカナダ鉄道博物館へ
カナダ最大規模をうたう「Exporail(カナダ鉄道博物館)」。昨日は空振りでしたが、早朝ホテルをチェックアウトし、土曜日の朝のスムーズなドライブを楽しみながら開館30分前の9時半に到着。ゆっくり過ごす時間が取れて、瓢箪から駒でした。
アクセスは3種類
鉄道博物館は大きな敷地面積を必要とするため、所在地がダウンタウンから離れた郊外になってしまうのは仕方のないところ。それでも公式ウエブサイトにはバスなどの公共交通機関でのアクセス方法が記載されています。
平日の場合(月曜〜金曜)
公式ウエブサイトに掲載されている方法は、
1)1000, de La Gauchetière Street West (Bonaventure 地下鉄駅)のバス停に行く
2)プラットフォーム13の130番バスに乗る
3)DelsonのGeorges-Gagnéオートパークで下車
4)バスを乗り換え、30A、30Bあるいは35番 (その時のスケジュールにより来るバスが変わる)に乗る
5)通りの反対側にExporailの駐車場が見えたら、そこで下車する。
「Daily, hourly bus service」と書いてありますから、毎日運行で、1時間に1本という感じでしょうか。http://www.citroussillon.com
試しにGoogle Mapでルートを入れてみると(モントリオール中央駅〜Exporail)所要時間が2時間8分と出ます。結構かかりますね。
週末の場合(土曜・日曜)
一方、Google Mapで日時を土曜日に指定すると、公式ウエブサイトに記載のある週末のみの近郊列車を使ったアクセスルートが出てきて、平日よりかなり早く到着できます。
1)モントリオールLucien-L'Allier駅2番ホームで9時35分発の電車に乗る
2)Candiac/St-Constant駅で下車
3)帰りは午後1時28分発でモントリオールLucien-L'Allier駅に戻る
公式ウエブサイトでは出発と帰りに乗る列車の時間指定がありますが、確かにこの時間以外だと乗り換えなどが発生してややこしくなりそうなので、この方法に従うのが最も分かりやすいと思います。
Google Mapでルートを入れてみると(モントリオール中央駅〜Exporail)所要時間44分と出ます。
今回はラ・プレーリにも行きたかったのでレンタカーを借りましたが、平日が2時間かかるのは橋を渡る時の渋滞が要因かと想像します。その分、週末の近郊列車は渋滞がありませんから、半分以下の時間で目的地に着くわけです。普段トロントに住んでいる私にとって、カナダであっても大都市ダウンタウンの交通渋滞は特別なことではありません。実際に走ってみると、モントリオールの場合、郊外に出るためにセントローレンス川を橋で渡る行程がネックになり、さらに事故や工事などが引き起こす平日の渋滞(特に朝夕)はなかなかのものになります。
鉄道利用で44分、バスを使うと2時間8分と、3倍の時間がかかる理由は乗り換え時間も含め、この辺にありそうですが、10ドル以下で行けてしまいますからレンタカーの費用の10分の1。時間がかかっても、公共交通機関を使って「とにかくたどり着ける」ルートがあるというのは、大事なことです。
入場方法
鉄道博物館の入り口は、蒸気機関車が目印。まわりは駐車場になっていて、入り口はその奥です。
展示場は「Angus Pavillion」と屋外の2つに分かれ、屋外は時間になるとビンテージの路面電車に乗れたり、ミニ鉄道が走ったりと子供向けになっています(週末)が、今回のお目当ては屋内のアンガス・パビリオン。
正面建物がそれです。
中に入ると正面に受付があり、入場チケットは右側のギフトショップのカウンターで買います。
普通に買うとお金を払い、手にリストバンドをまいておしまいなのですが(1日出入りができる)、カウンターのあるショーケースにギフト用チケットが販売されています(写真の右側にある2枚のチケット)。それを買うと(自分に贈り物をする)入場できて、お願いして持ち帰れば入場記念になるでしょう。
入場券を買ったら正面入り口に戻り、中央のインフォメーションカウンターで、館内のパンフレット(簡単な見取り図のみです)と「今日のアトラクション」が印刷された小さな紙をもらい、説明を受けます。時間でガイド付きツアーが行われたり(英語)、映画が上映されたりしますから要チェックです。ガイドツアーは時間前に館内放送が行われ、入り口近くに集合して行われます。
館内は、驚くほど整理整頓されていた
では、中に入ってみましょう。
まず誇らしげに展示されている入り口そばの古い蒸気機関車。名前は「The Dorchester」。これは昨日訪れたモニュメントのカナダ初の鉄道「Champlain and St. Lawrence Railroad」で使われていたカナダ初の蒸気機関車です。
この手の博物館は、背景となる歴史をある程度学んでおくとより深く楽しむことができるので、関連施設などを組み合わせる旅行は楽しいもの。展示を企画した人との「対話」は、こちらのレベルに合わせて起こりますから、自分がどれだけ知っているのか腕試し、ということだって可能でしょう。昨日探し当てたモニュメントを見た時の感覚が、新たに湧いてきます。実はこの蒸気機関車はレプリカで、本物はハリファックスにあるらしいのです。
展示場のレイアウトは、カナダらしく大変シンプル。左右に12本のレールが敷かれていて、向かって左から右に向けて過去〜現在というようにおおよそ年代が追えるように整然と車両が並べられています。
展示は「多すぎることもなく、少なすぎることもない」、ちょうど良いもの。ゆっくり見て回って約3時間くらい、そう考えておけば良いでしょうか。休憩&軽食ができるカフェは正面右手奥に小さなものがあります。
以下、私が考えるハイライトをまとめてご紹介します。
館内は、驚くほど整理整頓されていた
歴史を辿りたかったので、まずは正面に向いて左端へ歩きます。左端の展示を見る直前に、壁側にも展示があります。
「M.C.P.R.20」
19世紀にモントリオールでOmnibusを生産していた会社N. & A.C. Lariviere製。Omnibusは現在のバスの発祥となった乗り物で、展示されていたのは「そり(sleigh)」がついた雪の上でも走る馬車。この辺からの展示というのは、かなり本格的です。
最初の列は、歴代のストリートカーです。
「Streetcar MTC 350 "Rocket"」
1892年に初めてモントリオールで走っていた電動のストリートカー。動力が馬車から電力へと変わった、ことを表現しています。裏に回ると中に入ることができます。中にストーブがあるのが、びっくりですね。
「CN 6711 GE Boxcab」
この列のしんがりは、Canadian Northern鉄道用にわずか6台しか製造されなかったGE製の珍しい電気機関車。
この列を見終わると、お隣の列にはもう蒸気機関車が展示されています。
圧巻の歴代の蒸気機関車展示
子ども心の記憶といえば、鉄道と言えば常磐線のチョコ電と蒸気機関車。トロリーバスが火花をちらせて交差点を走っているというかなりレトロな感じです。昔からどちらかというと乗り物好きだったようで、どうしても蒸気機関車の展示に目が奪われてしまいます。
「CNR 49」
1914年〜1957年まで走っていたMontreal Locomotive製最後の蒸気機関車。カナダナショナル鉄道が保有していました。
「CNR 5550」
マリタイムとケベック州を結ぶ客車牽引用に製造された蒸気機関車。路線としてはグランド・トランクですが、後に買収されカナダナショナル鉄道で走るという流れですね。
「CPR 144」
1886年に製造された、カナダ製で現存するものの中では最古の蒸気機関車。それぞれ車輪の構成、車体のデザインが少しずつ違いますが、とても綺麗にレストアされていて、年代を感じさせると同時に、見ていて楽しいです。
貨物車両の展示もある
過去も現在も変わらず物流の重要な手段として使われている鉄道を表す展示も、いくつか行われています。
往年のグランドトランクの名前が入った貨車。
鉄道がもっぱら資材運搬に使われた時代の、材木運搬用の貨車。
ビーバーのロゴが入った、珍しい線路を走る自動車。このクルマの由来を調べると、面白いストーリーが出てきそうです。
ハイライトは、歴代の蒸気機関車
蒸気機関車の展示でハイライトは、中央正面の2台。
順番に見ていきます。
「CPR 2850」
1939年にエリザベス女王(Queen Elizabeth The Queen Mother)がジョージ6世とケベックを出発しバンクーバーまでの「ロイヤル・ツアー」を行った時、専用の客車を牽引したハドソン(4-6-4)蒸気機関車。ロイヤルと名のつくものは4台が保存されていますが、実際に「ロイヤル・ツアー」で使われたのは、展示されている「2850」1台のみ。この機関車だけが持つ名前「The Royal Hudson」を見ることができる、大変珍しい展示となっています。
また、この機関車は階段で下から覗けるようになっていますが、とても綺麗にお化粧がされていて、まるで今にも走り出しそうです。
「BR 60010 "Dominion of Canada"」
もう一台は、LNER Class A4 という蒸気機関車として世界最速の高速運転ができるように改良されたもの。なんと最高速度時速210キロを誇ります。LNERというのは、「ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道(London and North Eastern Railway)」の略称で、イギリス北東部の多くの路線を統括していました。
1937年にイギリスで製造された車体には美しい流線型のブルーのカバーで覆われ、「Dominion of Canada(カナダ建国時の国名)」という名前が付けられています。印象的なブルーは「Garter Blue」と呼ばれる色で、イギリス王室が使うロイヤル・ブルーを思わせるものです。
蒸気機関車は黒くて煙を吐いている、という私のイメージを全く変えるデザインの「Dominion of Canada」を現物で見ると、やはり率直に圧倒されます。
実はこのA4はイギリスのコモンウェルス(イギリス連邦)下にある南アフリカ共和国、インド、オーストラリア、ニュージーランドにそれぞれ1台ずつあり、カナダと本国イギリスを含めて全部で6台のうち、1台がカナダにあるという形になっています。
60009 Union of South Africa
60011 Empire of India
60012 Commonwealth of Australia
60013 Dominion of New Zealand
これらすべての蒸気機関車が一度だけ2014年にイギリスのヨークにあるイギリス国立鉄道博物館に集められるという展示が行われたほど、特別な車両です。
過去の歴史的な展示はもちろん興味深かったのですが、これまで見たことがない流線型の蒸気機関車の鮮やかさと存在感には、正直打ちのめされました。そして、実に質素な「Dorchester」から始まったカナダの蒸気機関車が、イギリスと深い関わりを持ちつつ時代の要求に従い、高速化されていたということに強い興味を持ちました。
そして、イギリスへ
この「Dominion of Canada」の由来を調べて行くうちに、「姉妹」として蒸気機関車として世界最速を記録した同型の「4468 Mallard」が、イギリスのヨークにある「国立鉄道博物館」に展示されているということを知ります。
そこで意を決してトロントから人生初のヨーロッパ旅行に向かうこととしました。
「善は急げ」とばかり、出発はこの旅を終えた1週間後の週末。夜11時すぎのエアカナダでトロントを出発し、ヒースローへの到着は現地時間の午前11時すぎ。時差がありますので、飛行時間は6時間ほどでしょうか。日本行きを考えると、その半分ですからずいぶんラクだと感じます。
鉄道博物館があるヨークという街はトロント市が誕生する前、時の副総督によって名付けられた街の名前とあって、縁とゆかりがあります。ロンドンからは約2時間ほどの鉄道旅で到着です。写真はヨーク中央駅。
最初に見た時に「カナダのドミニオンとカラーリングが同じ!」。まるで姉妹です(英語では蒸気機関車のことをSheと呼ぶ)。そして同じく流線型の車体がひときわ目立つ「Duchess of Hamilton」(右)。
本当にすごい迫力に圧倒されます。
滞在中はポンド高に苦しめられたものの、ロンドン〜ヨーク〜マンチェスター〜ロンドンと鉄道で回り、駆け足でしたが日本ともカナダともまた一味違う鉄道文化を味わうことができました。機会があったらこのイギリス旅行についても書いてみたいと思います。
旅の終わりに思うこと
振り返れば、カナダの歴史を学ぶ過程で、建国と関わった鉄道史を知り、モントリオールにあるカナダ最大の鉄道博物館を訪れました。さらに、カナダの建国と深い関わりにあるイギリスのヨークにある世界最大の鉄道博物館へ向かうという思いもよらぬ展開。
2つの鉄道博物館を見た上で思うことは、もう少し日本でカナダの「Exporail」が紹介されて良いのではないか、というほど「Exporail」の鉄道展示には力があり、充実したものがあったと思います。特にカナダの鉄道史において果たしたモントリオールの役割を考える時、鉄道博物館を通してさらにこの街の魅力を感じることができる、そんな風に思っています。
ここは近いうちにまた、訪れてみたいと思っています。
【記載内容について】
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