【ジョージア】夏のヘヴスレティ③~テオナの踏み分け道
私の日常的な興味のひとつに音楽があります。
ジョージア民謡のアーティストにテオナ・クムシアシヴィリさんという人がいました。
テオナはジョージア音楽のなかで私が特に興味を惹かれたアーティストのひとりです。
テオナの歌には、魂がこもっている気がします。
↑シャティリ村からムツォ村へ続く道を臨む(シャティリ要塞より)。
しかしながらそのテオナは2010年7月22日、ヘヴスレティ地区ムツォ村にて、自動車転落事故によりふたりの息子とともに命を落としています。
享年26歳。
私は音楽が好きなので、興味を持ったアーティストのゆかりの場所には行ってみたいと思います。
そのムツォ村はシャティリ村から12km奥にあります。
↑シャティリ村よりアナトリ方面を臨む。
シャティリ村からムツォ村にいたる12kmのハイキング・コースは私にとって、テオナをたどる踏み分け道です。
シャティリ村を出発すると、ハイキング・コースはチェチェン国境に向かって北東に続いています。
山肌には、まるで毒キノコのカエンタケを思わせるような形の岩が。
また、シャティリ要塞の壁に使われていた平たい石の地層も目立ちます。
↑シャティリ村~アナトリ間のハイキングコース。
↑まるでカエンタケのような岩肌。
↑平たい石の地層。
2kmほど歩いたアナトリという場所がチェチェン国境と最も接近する地点。
この地点で、チェチェン国境からは1km弱です。
このアナトリには、かつてのネクロポリス(共同墓地)の跡が残っています。
その史跡をしばし見学。
↑アナトリのネクロポリス跡。
↑床に散らばっているものの多くは人骨です。
このアナトリでは、ほかの者たちを救うためのいけにえとなって自死するという悲惨な風習があったそうです。
その死者たちを祀っているのがこの史跡だとのこと。
アナトリの村は18世紀に疫病によって衰退したそうです。
英語を含むこのような説明が表示してありました。
↑シャティリ要塞やアナトリのネクロポリスには英語案内がありました。
↑チェチェン国境付近。
アナトリを過ぎると、ハイキング・コースは南に向きを変えます。
山岳地帯のルートですが、多少の起伏がある程度で、登山道といった感じではありません。
アルグニ川と並走するハイキング・コースを歩き続けます。
↑川と並走するハイキング・コース。
山岳地帯であっても、7月初旬の日中は太陽が照りつけ、かなりの高温になります。
飲料水の確保と日射病/熱射病対策は必要です。
途中に2ヵ所、湧き水の給水所がありました。
↑アナトリ~ムツォ村間の風景。
↑給水所。
途中、通りかかる車のうちの何台かが、ヒッチハイクのために停車してくれました。
最後はさすがに疲れたので、2kmほど乗せてもらうことに。
ヒッチハイクさせてくれたのはジョージア人の男性のふたり組。
↑アナトリ~ムツォ村間の風景。
車内では、ジョージアの人気バンド33aの曲がかかっています。
音楽に詳しそうなので、テオナのことを尋ねてみました。
すると、さすがは地元の人たちです。
テオナの事故現場を知っているので、連れて行ってくれるとのこと。
↑アナトリ~ムツォ村間の情景。
10分ほどで、ムツォ村の中心部にあたる辺りまで連れて行ってもらいました。
その背後が、事故現場の付近だと言います。
↑テオナの事故現場付近。
しかし、この辺りの村道は断崖絶壁の道ではなく、転落事故が起きそうな場所ではありません。
テオナの事故は、このヘヴスレティ地方の祭りであるアテンゲノバを訪れた際の出来事で、アルグニ川に転落する事故であったことは記録に残っています。
しかし、危険道ではない場所でどのように事故が起きたのか、詳細はわかりませんでした。
いずれにせよ、今回の目的の場所のうちのひとつにたどり着くことができました。
↑ムツォ村中心部から事故現場方面を臨む。
その後、私はこの事故現場のすぐ近くにある、アルグニ川沿いのゲストハウスに2泊することになります。
前日までは晴れていたという天気が、日暮れ後に2日連続でひどい土砂降りになりました。
水かさを増したアルグニ川は、まるで命を吹き返した龍のように、辺りを脅かす轟音を立てて流れていくのでありました。
↑アルグニ川。
【ジョージア語表記と発音】
・テオナ・クムシアシヴィリ(თეონა ქუმსიაშვილი/teona kumsiashvili)
・アナトリ(ანატორი/anat'ori)
・ムツォ(მუცო/mutso)
・33a(33ა/otsdatsamet'i a)
・アテンゲノバ(ათენგენობა/atengenoba)
・アルグニ川(მდინარე არღუნი/mdinare arghuni)
↑アナトリのネクロポリス跡。
↑ムツォ村。
筆者
ジョージア特派員
fujinee
ジョージアのトビリシに住んでいます。音楽や芸術が好きなので、そのような記事が多くなります。
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