58. 在タシケント日本人留学生インタビュー!ウズベキスタン生活はどう?ウズベク語・ロシア語の難易度は?

公開日 : 2022年07月13日
最終更新 :

サローム(こんにちは)!

アジアや欧米の大都市に比べると在留邦人の数はかなり少ないものの、さまざまな日本人の方が住んでいらっしゃるタシケント。コロナ禍という難しい時期にもかかわらず、日本人留学生の方も数人いらっしゃり、こちらの大学で勉学に励まれています。

「スタン系の1つの謎の国」という印象がほとんどだったであろう以前に比べると、ウズベキスタンの知名度や注目度が日本で上がっており、留学してウズベク語をしっかり身につけたいとお思いの方も増えているかもしれません。また昨今の国際情勢によりロシア留学に行くのが厳しい状況となっている現在、ウズベキスタンやキルギス、カザフスタンなど中央アジア諸国への留学に興味を持っているロシア語学徒さんが増加していると聞きます。とはいえ中央アジア留学の情報はまだまだ少ないはず。そこでタシケントに住む日本人留学生さんたちのリアルな姿をこちらのブログでご紹介できないだろうか......と思っていたところ、快くインタビューのお願いに応じてくださり、じっくりお話を聞かせていただく機会ができました。


今回インタビューを受け入れてくださったのが、日本のとある大学からタシケントの大学へ留学されている学生さん2人。本名は伏せさせていただきますが、セヴィンチさん(女性)とコミルさん(男性)というウズベク人名でご紹介させていただきます。そう、この国の外国人留学生や、かつての私の身分だったJICA青年海外協力隊員は、ほぼ必ずどこかでウズベク人名をつけてもらえるのです。セヴィンチという名前とは「愛」、コミルは「完璧」という意味だそうで、日本人名にすると愛さんと完さんでしょうか。ちなみに私はモーヒルというウズベク人名を賜っていましたが、今は自分も周りも誰も使っていません(笑)

インタビューでは勉強に関することから生活面、この国の印象などなど幅広く突っ込ませていただきましたが、全て丁寧にお答えいただき、本当に貴重なお話を聞くことができました。それではケッディキ(始めましょう)!
---------------

伊藤(私):お2人は去年9月から約1年弱こちらに留学されているということですが、どうして日本人留学生がほぼいないウズベキスタンに留学することに?

セヴィンチさん&コミルさん:日本の大学でウズベク語を専攻していたからです。私たちの大学とタシケントで今勉強している大学が提携を結んでおり、日本の大学側からは派遣留学という形で毎年3人ほどの留学生がタシケントにやって来ます。逆にタシケント側からもウズベク人留学生がやって来るんですよ。

伊藤:まず日本でウズベク語を勉強している学生さんなんて激レアさんですよね......。ウズベク語を勉強しようと思ったきっかけは何でしょう?

1a-tashkent-university-classroom-atas-058-01.jpg
実際にお2人が勉強している大学の教室

セヴィンチさん:もともとあまり話せる人がいなさそうな言語を身につけたいと思い、ロシア語を勉強するつもりだったんです。でもせっかくなので2言語話せるようになったほうがいいかと思い、ロシア語もウズベク語も勉強できる今の大学を受けようと思いました。

コミルさん:僕はもともと中央アジアの現代政治に興味がありました。そうなるとまず言語を、となるわけですが、中央アジアの中でもウズベク語は最も言語人口が多いですし、今の大学だとちょうどウズベク語専攻があったので。

伊藤:こちらでの生活や勉強の話に移りましょう。大学で授業がある日の一日の流れをざっくりと教えてください。

セヴィンチさん&コミルさん:寮に住んでいますが、起床は8~9時。1限目はウズベク語の授業が10時から12時まで。先生の裁量によって時間が変わることもありますが(笑)
2限目はロシア語の授業で、それが終わるともうこの日の授業は終わりです。私たちのキャンパスには学食がないので、お昼は大学近くのファストフード店で済ますことが多いです。

tashkent-student-dorm-room-atas-058-02.jpg
お2人が住んでいる寮のお部屋

伊藤:じゃあ午後はほとんど丸々フリータイムなんですね! 大学から帰ったあとはどのように過ごしていますか?

コミルさん:寮で友達と喋ったり、昼寝したりとか......。夕ご飯はご飯当番を決め、当番に当たればバザールへ買い出しに行きます。ちなみに寮にはウズベク人学生もいますし、韓国人や中国人留学生もいます。夕食後は日本の本を読んだりします。

セヴィンチさん:私はご飯は自分で作ったり、ウズベク人の寮友達がご飯を作ってくれたり、あとはタシケントではウーバーイーツのような便利な出前サイトがあるのでときどき取ります。夕食前後に宿題をやって、夕食後はYouTubeで日本のニュースを見たり音楽を聴いたり、筋トレをしたりしていました。一時期民族楽器のドゥタール教室にも通っていました。(※ちなみに私とセヴィンチさんが知り合ったのもこのドゥタール教室でした)

tashkent-plov-in-student-dorm-atas-058-03.jpg
ウズベク人の友達が振舞ってくれたというプロフ

伊藤:コロナ禍での留学というのはある意味貴重な経験かと思いますが、いかがでしょう?

セヴィンチさん&コミルさん:オミクロン変異株が流行した冬は、一時期的に授業がオンライン形式になったり、マスク姿の人が増えたりして、パンデミック下で生活していることを実感しましたが、それ以外の時期はほぼ誰もコロナウイルスを気にしていない状況ですね......。

コミルさん:あと僕の寮ではタシケントにやって来てすぐの時期に高熱を出す人が増え、コロナ感染蔓延疑惑がありました。今となっては真相は分かりませんが。

伊藤:お2人は日本でもタシケントでもロシア語とウズベク語の両方を勉強されているわけですが、言語学習の難易度はどうでしょう?実際に留学に来てみて、それぞれの言語についてどう感じましたか?

tashkent-metro-dostlik-station-atas-058-04.jpg
公用語はウズベク語のみだが、いまだに町なかにはロシア語表記もあふれ、2言語併記看板なども多い

コミルさん:ウズベク語は日本語と文法が似ていることもあって比較的学習しやすいのですが、ロシア語は日本語はもちろん英語とも大きく違う難しい言語だと感じます。もし日本人が旅行のためにどちらかの言語を学びたい、と思っているならウズベク語の方がよさそうです。

セヴィンチさん:ウズベク語は日本語と語順が同じことが多く、勉強しているとすんなり頭に入ってきます。ただウズベク語は方言差が大きく、実際こちらの人と会話しているとリスニングが難しいかもしれません。あまり方言差がないロシア語の方がリスニングは簡単かも......。聞くのはロシア語、話すのはウズベク語、というのがベストですかね(笑)

コミルさん:あと日本で勉強したウズベク語と現地で聞いたり読んだりするウズベク語はやはり違いました。Yaxshi(良い)をYaxwiと書くなど(※この場合のwはキリル文字のшから来ており、メールやSNSなどで時々見る書き方)、書き方も人によって違いますし。

伊藤:こちらで生活していて一番困ったことは?

セヴィンチさん:こちらに到着してすぐ、寮に冷蔵庫にソーセージを入れておいたら誰かが取っていって無くなっていたのが衝撃でした! 最近もチョコレートが盗まれました。食べ物に自分の名前や、食べるな! と書いたりしても無意味でした(笑)

コミルさん:自分ってこんなに腹が弱いのか、、と思うほどお腹を壊しましたね......。生焼けの鶏肉のカンピロバクターにやられたのは本当にしんどかったです。ウズベキスタンに来られる方は食中毒に気をつけてください。特に夏のチキンサモサには要注意です! あと海老を食べて入院した韓国留学生もいるそうで、魚介類にも気をつけたほうがいいですね。ウズベキスタンでは、ウズベク語でRの文字が付かない月、つまり5月から8月の夏季は魚を食べない方がよいと言われているそうです。

伊藤:やはり留学生活にはトラブルがつきものなんですね......。もっと明るい話を聞きましょうか(笑) 国内やタシケント市内のお気に入りの場所を教えてください!

セヴィンチさん:あまり国内旅行ができませんでしたが、やはりサマルカンドは良かったです! 上ってよかったのか分かりませんが、レギスタン広場のミナレットに特別に上らせてもらったのは良い思い出です。
タシケントならナヴォイ劇場がお気に入りで、外観も内装も綺麗ですよね。オペラと新年のコンサートを鑑賞できていい経験になりました。

tashkent-navoi-theatre-atas-058-05.JPG
スケジュールが合えば公演も鑑賞したいナヴォイ劇場

コミルさん:僕が行ってよかったのはテルメズのあるスルハンダリヤ州です。国内最南端というだけあって5月に行っても暑く、植生やもタシケントと違いました。砂漠もありますし、州北部のボイスン地方の山に馬や牛がたくさんいる景色もよかったですし。一言でいうと牧歌的でした。
タシケントは公園が綺麗で、行く前は砂漠の町をイメージしていたのに東京より緑が豊かなのに驚きました。特に抑圧犠牲者の博物館周辺の風景が好きです。あと地下鉄ブユク・イパク・イューリ駅近くに住んでいたのですが、あのエリアは他に比べてロシア系が多く、タシケント内でもエリアによってこんなに民族構成が違うのだとびっくりしました。

tashkent-museum-of-victims-of-repressions-atas-058-06.JPG
気持ちいい散歩コースになっている抑圧犠牲者の博物館周辺

伊藤:行く前にウズベク人に抱いていたイメージはどうでしたか?実際に行って出会ってみると印象は違いましたか?

セヴィンチさん:ウズベク人はお祭り騒ぎで陽気な人たちかなあ......と思ってましたが、具体的なイメージはありませんでした。実際来てみると、路上で見ず知らずの人でも平気で話しかけてくるのに驚きました。あと買い物などでは、値段をよくふっかけてきます......。

コミルさん:タクシー運転手も料金をよくつり上げてきますしね(笑)

セヴィンチさん:日本人にはない商売魂を感じます(笑)

tashkent-alay-bazaar-atas-058-07.JPG
バザールでのお買い物はお気をつけて......。

コミルさん:他に感じたのが、行く前はイスラム教の戒律が緩い国だと思っていたけど実際そうでもないということ。知らない人から入信を勧められました、しかも3回ぐらい。

セヴィンチさん:あと連絡先を一度教えるとものすごい頻度で連絡が来ます。タクシー運転手に電話番号を教えると、しょっちゅう会おう会おうと連絡が......(笑)

コミルさん:僕にも来ます。日本人の女の子を紹介してくれとか、金貸してくれとか(笑)

伊藤:ウズベク人は人懐っこく、本当におしゃべり好きな民族性というのは私も日々感じます。対人距離の詰め方が日本人とかけ離れすぎているというか......。でもそのおかげでウズベク人の友達はすぐに出来ますよね!
それでは、ウズベキスタン留学してよかったことがあれば教えてください!

セヴィンチさん&コミルさん:ウズベキスタンに限らずですが、日本ではなかなか聞く機会がない生のウズベク語を聞けたこと、そしていろんな人と話せたことがよかったです。

コミルさん:欧米ではときどき留学先で人種差別的な体験をしたと聞くことがありますが、ここでは今のところ全くありませんし。

セヴィンチさん:いろんな場面でウズベク人のホスピタリティーを実感できたのも良かったです。友達の結婚式にも行かせてもらいましたし、本当に皆お客好きなんですよね。

samarkand-friends-house-atas-058-08.JPG
仲良くなるとすぐおうちに招待してくれるのはウズベキスタンあるある

伊藤:日本人だろうが結婚式などにすぐ誘ってくれますよね(笑) ちなみにお2人は将来ウズベク語やロシア語を活かしたお仕事をやりたいですか?

コミルさん:やはり日本ではウズベク語能力が活かせる職業がまだまだ少ないので、ロシア語が使える仕事に就ければと考えています。

セヴィンチさん:今はあまりこれといった職業を決めていません。ただ言語関係そのものではなく、外国人など色々なバックグラウンドを持つ人と関われれば、というマインドを持って将来の道を決めていきたいです。

伊藤:それでは最後に、ウズベキスタン留学を考えている方、これからいらっしゃる方にメッセージをお願いします!

コミルさん:ウズベク人は本当にフレンドリーな方が多く、こちらに住んでいると毎日誰かしらとコミュニケーションを取ることになるので、寂しくなることはありません(笑) 外国人も多いですし日本人もいるので、いろいろな人と知り合いになることができます。こっちに来て友達や知人はできるのだろうか......という心配はいりません!

セヴィンチさん:私は最初あまり積極的に現地の人々と関わることはしなかったのですが、この国の人々はウズベク系もロシア系もおしゃべり好きなので、ひとたび素直な心でいろんな人と話してみるといい経験になりましたし友達もたくさんできました。ぜひ心を開いて話しかけてみてください!
---------------

ウズベキスタン留学に関してお2人が繰り返しおっしゃっていたのが、この国の人々はとにかくお話し好きなので、実践会話できたり友達を作ったりする機会がたくさんあるということ。確かにこれなら言語の上達も早いかもしれませんね。

セヴィンチさんとコミルさん、興味深いお話をお聞かせいただき本当にありがとうございました!ウズベキスタン留学という貴重な経験を活かして、これからさまざまなフィールドで活躍されることを願っています!

筆者

ウズベキスタン特派員

伊藤 卓巳

根っからのスタン系大好き人間です。まだまだ知られていないウズベキスタンの魅力や情報を、サマルカンドより愛をこめてお伝えします!

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。