34. 遊牧民族の血が騒ぐド迫力の騎馬競技・クプカリ観戦@サマルカンド

公開日 : 2022年04月15日
最終更新 :

サローム(こんにちは)!
前回に引き続き、イベント盛りだくさんだった春の祭典ナウルーズ@サマルカンドを紹介します。スマラク作りと同じく、旅行会社「SRP TRAVEL」( SRP TRAVEL | ウズベキスタン現地旅行会社)とカフェをサマルカンドで経営されている日本人の方のご案内で、ほかのウズベキスタン在住の日本人の方々とともにクプカリへ。


さて、クプカリ(ko'pkari)という聞き慣れないワードは一体どういうものでしょう。ウズベキスタンではコプカリやウロックとも呼ばれ、隣国アフガニスタンではブズカシ、キルギスではコクボルと呼ばれているこのゲーム、ひと言でいえば騎馬ラグビーでしょうか。砂を詰めたヤギや羊の死体を、馬にまたがった騎手たちが奪い合いながらゴールまで持っていくという、遊牧民族の血が騒ぐ圧巻の騎馬競技なのです。

ウズベキスタンではナウルーズの時期にイベントの一環で行われるほか、結婚式や割礼式の記念として村を挙げて行われることもあります。この場合もナウルーズ前後の2~3月に行われることが多いです。盛んに行われる場所はウズベキスタン中部から南部にかけて、特にサマルカンド州やカシュカダリヤ州など山が多い地域。今回はサマルカンド州主催のクプカリを観戦することになりました。

競技といってもクプカリが行われるのは市街地のスタジアムなどではなく、会場はだいたいどこかの村の広大な空き地。スケジュールも曖昧なことが多く、ウズベク人ですらいつどこで行われるのか正確に把握するのは至難の業(そもそもクプカリを見たことがない、または興味が無いウズベク人も多いのですが)。今回もサマルカンド市の隣のジャムバイ地区で行われることは決まっていたのですが、やはり詳しい場所はよく分からないのでその辺の人に道を聞きつつ向かいます。

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クプカリ会場が近づくにつれ、馬に乗った人の姿が増えていく

最後は悪路を走ることになりましたが、無事会場に到着。実は私はクプカリを観戦するのは2度目で、前回は割礼式記念か何だったかの村のクプカリ。そのときは真っ黒な服に身を包んだ男性たちがひたすらヒマワリの種をポリポリ食べながらフィールドを囲んでいる殺伐とした空間でしたが、今回は雰囲気が真逆。ナウルーズのフェスティバルとして開催されたものなので、美味しそうなシャシリク(串焼肉)などの屋台が延々と続き、日本の縁日のようなムードがただよっていました。

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馬もそこらじゅうにおり、見物しているとなんと飼い主が馬に乗せてくれました。ウズベク人度ほぼ100%の場にいきなり十数人の日本人軍団が降り立ったわけですが、このように皆さんウェルカムモード。彼らなりのおもてなしでしょうか。

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そしてクプカリのフィールドへ。フィールドといえば聞こえはいいですが、丘のようになっている草原に四方を囲まれたただの砂地が舞台です。
フィールド脇には「クプカリの賞品」と大きく書かれた車が。だいたいどのクプカリでも勝者には豪華賞品が贈られるのです。賞品はたいてい車や家電製品、そしてラクダや牛などの家畜です。

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実際にここに着いてわかったのですが、なんと今回は主催者側に日本人グループが来ることが伝わっていたようで仮設VIP席にご案内していただけることになりました。しかもこの寒い季節に吹きっさらしの場所で観戦する身にはありがたいことに、お茶も飲み放題とのこと。恐縮なことこの上ない...。

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そして眼下では無数の馬と騎手が。競馬のようにお行儀よく動いているのではなく、それぞれ縦横無尽に走り回っているカオス状態です。
何の合図も無くいきなり目の前で十数頭の馬と騎手が乱闘らしきものを繰り広げ始めましたが、これはなんとまだ練習段階とのこと!

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いつクプカリ本番が始まるのか皆目見当も付きませんでしたが、球場ウグイス嬢ならぬクプカリフィールドDJがそれらしきことを話し始め、VIP席の隣のテントに皆集合。サマルカンド州要人のスピーチを皆で拝聴していますが、とにかく馬の密度がすさまじいことになっています。

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そのあとやはりDJの主導でイスラム教のお祈りを皆で唱和し、競技スタート。

ルールは冒頭に説明したとおりで、フィールド端にゴールとなる白い円が描かれています。騎手たちはヤギの死体を抱え、そこに持っていけば勝者となります。が、おそらくこのヤギの死体は5~60kgはあるであろう大変重いもので、それを引っぱりあげて持ち運ぶ騎手たちの腕力たるや......!

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ルールは何となく分かっているものの、目の前を馬たちが猛スピードで行ったり来たりするだけで全く状況がつかめません。DJも(自分のリスニング能力が正しければ)騎手の名や車! ラクダ! 洗濯機! と賞品を連呼するのみ。それでもとある騎手がこぶしを突き上げ、反対側の草原にいる観客がワーッ! と沸いたので、ここで勝負あったと分かりました。

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けれどクプカリは一度勝者が決まったあとも何度も競技が行われ、全体で何時間も続くとのこと。これ以上観戦するのは皆寒さの限界だったので、騎手たちの更なる健闘を祈って1時間ほどで退出しました。

というわけで、このクプカリが壮観かつディープな競技であることがお分かりいただけたかと思います。相当ラッキーな方でないとクプカリ観戦のチャンスにありつけないかもしれませんが、その機会に恵まれた幸運な方は楽しみまくってくださいね!

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

筆者

ウズベキスタン特派員

伊藤 卓巳

根っからのスタン系大好き人間です。まだまだ知られていないウズベキスタンの魅力や情報を、サマルカンドより愛をこめてお伝えします!

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