[パリ]海の味を生かした二ツ星の優雅なレストラン「Le Clarence」
ボルドーの複数のシャトーを有する、Clarence Dillon Winesが昔の貴族の館を移築したという美しいレストラン、ミシュラン二ツ星のClarence(クラランス)に行ってきました。
Christophe Peléシェフは、Ledoyen、Lasserre、Pierre Gagnaire、Bristol, Royal Monceau、La Bigarradeをなどを経て、2015年、Clarenceのオープンとともに、エグゼクティブシェフに就任。
アラカルトなしのおまかせコースが特徴で、コースの数を選び、苦手な食材を伝えるだけ。「サプライズを楽しむ」というのがコンセプト。
"Gourgeres" with conte cheese, Barbajuan, clam with parsley's butter
ハマグリのパセリーバターパン粉焼き、コンテのグジェール、ほうれん草とリコッタチーズを入れた、南仏風の揚げラビオリ、Barbajuan。胡椒が効いていて、やや軽いフィリング。
ハウスワインの、すっきりとしたソービニョンブランをいただきました。
バターは生産量が少なく、希少なポンクレをたっぷりと。
自家製のブリオッシュ、縁は揚げワンタンの皮のように、しっかりと厚めのカリッとした層になっていたのが印象的。
Oyster, karashi
マスタードソースの上に、揚げたカダイフ、牡蠣、ピレネーの生ハム、タイム、オレガノのようなハーブをかけて。
Cuttlefish, ravioli, potatoe, buffalo cream
もっちりとしたイカスミのラビオリの中には、リコッタチーズとタラゴンのフィリィング、ケイパー、焦げた感じの香ばしく焼いてエスペレット唐辛子を散らしたコウイカ、シーバックトーンベリーのピュレ、イカスミ、酢漬けのアンチョビ。
サイドディッシュは、今が旬だという、ポムドテールのジャガイモ、バッファローのクリーム、なめらかな生のイカの薄造り、黒オリーブ、ローズマリーの花。
生のイカを加えてはありますが、サラダニソワーズの再構築を思わせるような一皿。
Turbot, cockles, XO sauce,
カレイの一種、ターボットに緑のソース、コックル貝に自家製XO醤、カラマンシーのピュレに、コリアンダーの花、フレッシュアーモンドを添えて。
Sweetbread, daikon radish, caviar
もう一つ、このターボットに合わせる皿はスイートブレッドと呼ばれる、子牛の胸腺の一皿。ねっとりとした後味に、すっきりとした大根のスライスとキャビアを合わせます。キャビアは、 Petrossianの Daurenki Imperial という種類。 ソースはブールブランとシェリービネガーのジェル。
Avocado and shrimps
ラングスティーヌに、小さな若いアボカド、乾燥したイチジクの葉を乗せたもの。
ソレルのソース、じゃがいものピュレを詰め込んだズッキーニの花、蒸した魚、パルメザンのスライス。
シャキシャキしたフレッシュなズッキーニの花に、ジャガイモのピュレの優しい食感が合います。パルメザンチーズのスライスで、旨味をプラスして。
Rabbit, fried artichoke, tomato sauce, rocket flower
うさぎのバロティーヌ。もも肉の所はとてもレバーのような鉄分のコクとなめらかな食感があり、胸肉は柔らか。少し酸味がある、乾燥したロケットの花を乗せて。
後ろには、アーティーチョークのグリルに、ツナを使ったトンナソース。
Gnocchis with parmesan cheese
もう一つは、パルメザンのソースのニョッキ、こちらも乾燥したイチジクの葉を乗せて。
お隣の席の方が食べていた鳩がとても美味しそうだったので、こちらを少なめのポーションで、追加でお願いしました。
Pigeon, whelk, asparagus
とても香ばしくて、オーブンの熱々の熱をまだ感じるような鳩は、ほんのりコーンのような甘い香り。ウェルクと呼ばれる貝を乗せて。レバーとアンチョビ混ぜたものが敷いてあります。サルミソースも見事。一番気に入った料理で、少なめとお願いしなければよかったと後悔しました。
果実の凝縮味を感じる、オーブリオンの赤ワインと。
チーズも色々と。
炭を使ったチーズの食感がとてもふんわりとしていて気に入りました。
デザートも、小皿で色々と出てきます。
Red fruit sorbet
赤いベリーのソルベに、ピスタチオのコクと味わいをしっかりと感じるクランブル、
Lemon cream
レモン、ミント、きゅうりのスープの乗ったパンナコッタ。
Strawberry tart, elderberry syrup
バニラの効いたショートブレッドの上に、オリーブのクリーム、野いちご、エルダーフラワー、渋いマスカットのような味のエルダーフラワーのゼリー、レモンの苦味あるピュレを添えたタルト。
Chocolate cake
粒の大きな海塩を散らしたチョコレートタルトは、下はヘーゼルナッツのプラリネ。どこか昆布のような旨味を感じるチョコレートを使っています。クリームの中にはチョコレートの球体が入っていて、割ると中からチョコレートキャラメルのリキッドが出てくるという、意外性ある演出。
旨味も酸味の強いコーヒーにフォームドミルクを入れたラテ。
小菓子はアーモンド入り焼きメレンゲ、と言いたくなるような軽いサクサクのマカロン、クリームとバニラ、中に板状の薄いプラリネが入っています。
Christophe Peléシェフにお話を伺いました。
(私は残念ながらフランス語が話せないので、サービスのMatthewさんが通訳してくれました。)
Q. Christophe シェフはパリ近郊のご出身ということですが、全体的に、南仏を思わせるような軽やかなお皿が多いように思いました。ヘルシーな料理というのは心がけていらっしゃいますか?
A. 私は、きちんと作られた「健康に育った」食材を使うことを一番に心がけています。フランス料理なので、どうしてもクリームやバターを使いますから、日本料理などと比べると、どうしてもカロリーは多くなってしまいますね。
Qほとんどの料理にシーフードを使っていますが、これは以前働いていた、ガニェールシェフの影響ですか?
Aもともとフランス西海岸の海辺が好きで、ブルターニュに家を買ったほどです。海、魚の味は塩気に旨味を加える上で大切なもので、ガニェールシェフというよりも、Hostellerie Jerome のBruno Cirinoシェフから学んだことが大きいと思います。
Q未来にフランスの食文化を伝えるために、大切だと思っていることはなんですか?
A今、フランスでも、生産者たちが減っています。未来の食のために、上質な食材を作る生産者や、ワインメーカーなどを含め、作り手を育てていくことが大切だと考えています。良質の食材を使うことは、彼らの仕事を支えることでもあります。例えば、パンは薪釜で焼いているパン屋から仕入れています。長時間発酵で手間のかかる手法を取っている店です。こういった伝統的な店を支えることも、私たちの仕事の一つです。
Q. 自家製XO醤など、アジアの要素も積極的に取り入れていますね。
A. そうですね、日本でいうと、日本の魚の処理の技術は素晴らしいですね。クラランスのオープンから、今はイケジメの魚を使っています。流行だから、とか、デュカスが使っているから、などの理由ではなく、それが新鮮な魚を使うために必要だからです。私たちは海岸沿いにある店ではなく、パリにある店なので、魚の新鮮さを保つ技術が必要です。魚の肉の部分に血がはいっていないから、新鮮さを保てるのです。値段は普通の魚の2倍しますが、そのクオリティに惚れ込みました。
フランス北西部のPort St. Guénoléで、日本に8年住んでいたカップルがやっている神経〆の鮮魚店から買っています。神経〆した魚の良さは熟成ができることですから、買った魚は、数日、冷蔵庫でドライエイジングさせて、味を凝縮させてから使っています。
Q. ご自身の料理のスタイルを、どう表現されますか?
A. 自分のスタイルは、「革新」だと思っています。昔の店、ビガラートにいた頃よりも、少し落ち着いた感じになりましたが、毎日の旬に応じた料理を作っていくことが大切だと思っています。ここは、30席だけのレストランですから、毎日メニューを変えていくことができて、そんな点も気に入っています。
クラッシックな店内には、様々なアート作品が並ぶ豪華な雰囲気。食材の魅力を、複数の調理法で多角的に引き出して小皿で表現するスタイル、南仏のような軽やかさと、様々な海の味をアクセントに使っているのがとても印象的でした。
<DATA>
■ Le Clarence (ル・クラランス)
営業時間:ランチ 12:30~14:00 (L.O.)、ディナー 19:30〜21:30(L.O.)、日曜、月曜休
住所:31 Avenue Franklin Delano Roosevelt, 75008 Paris, France
電話:+33 1 82 82 10 10
http://www.le-clarence.paris/
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
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