6300km の距離を超えた情熱「Passion Made Possible」

公開日 : 2018年02月22日
最終更新 :

6300km の距離を超えた情熱

...と言っても、何も遠距離恋愛の話ではありません。

シンガポール政府観光局は今、「Passion Made Possible」と銘打ち、世界にシンガポールがアツい!と伝えるプロモーションを行っていますが、2月21日には、世界18箇所目として、オーストラリアにこのブランドを上陸させました。

「Passion Made Possible」には、ファッション、デザインなど7つの柱がありますが、オーストラリアもシンガポールと同じく、特に「食」を大切にする国、ということで、その共通項をアピールしようと、シンガポールのメディアの食の担当者と、オーストラリアメディアの食の担当者を集めての食事会が行われました。

「食事会」と言っても、IT国家シンガポールならではの、ハイテク食事会。私たちシンガポールメディアは、円卓の半分に座り、その向こうにはなんとテレビのスクリーン。7つのテーブルがインターネットでつながり、マイクとスピーカーを通して会話し、食事を楽しむという趣向。

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一緒に席を囲んだ仲間たちも、「こんな食事会は初めて」と口を揃えてこの斬新な体験を楽しんでいました。

料理を担当したのは、シンガポールとオーストラリアを代表する、それぞれ2人のシェフ。

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シンガポールからは、CandlenutのMalcolm Leeシェフ、日本でもデザートバーを展開していることでも知られる、2am:dessertbarのJanice Wongシェフ、オーストラリアからは、テレビ番組、Destination Flavourで知られる、シドニーのAdam Liaw シェフ、Shangri-La シドニーの、Anna Polyviou シェフ。

あらかじめ、オーストラリア在住の二人のシェフは、シンガポールを訪れ、それぞれMalcolmシェフ、Janiceシェフと共に、様々なシンガポールの味を試食。共に料理を作り上げ、4Hands x2=8Handsという豪華な内容に。

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バタフライピーと呼ばれる青い花のエッセンスを使った食前酒のジントニックからデザートに至るまで同じメニュー、よく見ると、卓上の花まで同じで、まるで本当に同じテーブルを囲んでいるかのよう。

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まずは、シンガポールならではのローカルフードの盛り合わせ。

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Pork Satay 豚肉のサテは、甘いピーナッツソースと合わせて。

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Otak Otak 魚のすり身を通常はバナナの葉に挟んで焼き上げる料理ですが、セルクルで抜いて上品な見た目の仕上がりに。

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Fruit Rojak 同じく、ローカルフードのサラダ、ロジャックは、トーチジンジャーの花を刻んだものを散らして。

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メインコースは、海南系の血を引くAdamシェフが特にこだわりを持つ海南風チキンライス。

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シンガポールで食べられているチキンライスは主に海南風ですが、プラナカン出身のMalcolmシェフと話し合い、チリクラブの要素を入れようと、チリソースにカニみそを加えたコクのある味わいに、そしてシンガポールらしいブアクルアのペーストを添え、海南&プラナカン風チキンライスに。

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柔らかくシルキーな口当たりの身、ゼラチン質の皮.

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横に添えられたのは、しっかりとしたコクのあるスープと、食べ終わると鶏肉の脂が少し底に残るほど、濃厚な鶏のエキスがしみ込んだぱらっとしたご飯。

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このご飯がチキンライスのメイン、という人がいるくらい、重要なところですが、こちらにチリクラブ風チリソース、ブアクルアペースト、中国のキャラメル感のある甘い醤油、ダークソイソース、パイナップルときゅうり、唐辛子たっぷりのシンガポール風の漬物、アチャーと一緒にいただきます。

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デザートは、

Passion-Ate Singapore

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情熱的、という言葉と食べる、という言葉を掛け合わせた面白いネーミング。

まず渡されたのは、トーチジンジャーの香りを染み込ませたおしぼり。

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香りでシンガポールらしさを感じてからデザートに移るという流れは、ただ香りを嗅ぐだけでなく、自分でおしぼりを手に取り、拭いて香りを感じるという演出、という意味でとても新鮮でした。

ガーデンシティーという別名を持つ、シンガポールを象徴する意味で作ったという、エディブルフラワーを飾ったわたあめに、温かいパッションフルーツとマンゴーのソースをかけて溶かしていただきます。

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わたあめの輪の中はバナナのムースケーキ、パッションフルーツをゼリーに閉じ込めた球体、ココナッツのアイスクリーム、キャラメルやクレープダンテルを挟み込んだパッションフルーツののムース。ピーナッツとライスパフを飴で固めた、おこしのようなローカル菓子など。Janiceのそんな話を聞くと、わたあめに包まれた様々な形のデザートが、風水の影響で、様々な形のビルが立ち並ぶシンガポールの街並にも見えてきます。

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Janice シェフは、オーストラリアの人の口に合うように、酸味を強く、糖度を控えめにしたということで、スッキリした味わい。シンガポールにも実は結構いる、甘いものが苦手、という人たちにも評判が良かったです。

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食べながらも、Adamシェフがシンガポールで気に入ったという、ローカルカレーの店などお気に入りのレストランについてや、シンガポールとオーストラリアのフードトレンドについての情報を交換するなど、食を愛するもの同士、様々な話で盛り上がりました。

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一緒に食事をするというのは、世界共通の根本的なコミュニケーション。シンガポールとオーストラリア・シドニー、場所は6300kmも離れているのに、すっかりと打ち解けられたのは、スクリーンを通して一緒に食事を取るという体験のおかげかも。

コラボレーションを終えて、Adam Liaw シェフは、

「素晴らしい共同作業だった、Malcolmと一緒に働くことで、プラナカン料理のスタイルについて洞察することができた。プラナカン料理は大好きだけれども、これまでは、自分が育って来た食文化の背景の中でしか理解して来なかったと思う。プラナカン出身のMalcolmと一緒に料理を作ることで、シンガポールの食文化をよりよく理解することに繋がったし、オーストラリアとシンガポールの食通たちがコラボレーションして同じ料理を一斉に食べるというのはシュールリアリズムみたいな出会いで、本当に面白かった。

海南系の出身だから、チキンライスは生まれてからずっと食べて来た味。チキンライスと一口に言っても、家庭ごとに、また店でもシェフの考え次第で、色々なバラエティがある。鶏肉の火の入れ具合にしても、ピンク色が残ったくらいのレア目に仕上げるところもあれば、しっかり火を通すところもあるし。骨つきで切るのか、骨を取り外して切るかも違う。チリソースの味のバランスや、出汁で炊いたご飯の香りもね。シンガポールで色々な所でチキンライスを食べたけれど、それぞれのこだわりを比べてみるのも楽しかったな。だからこそシンガポールの人たちは食べ物についてこんなにも話し合うんだろうな、と思ったよ。

今回のイベントでは、プラナカンの良さと、本場海南の良さを合わせようと話し合ったんだ。海南のスタイルは、とても慎ましやかで合理的なのが特徴。鶏の骨も脂肪も、無駄なく使って、あまり他のものを加えないシンプルなスタイル。プラナカンの料理はもっと精緻で円熟している。だから、今回はスープやご飯に様々な香りの要素を加えたよ。レモングラスやガランガル(生姜の一種)、昆布、干したシーフードを色々。チリソースにも、豪華な食材であるカニミソを入れて味わいをより高めてあるのも、プラナカンらしい感じだね。4種類のソースは、シンガポールの多様性を表現してもいるんだよ」とのことでした。

Anna Polyviouシェフは、

「Janiceとコラボレーションしたことで、シンガポールを地元の人のように見ることができるようになったし、それは私たちのコラボレーションデザートの 'Passion-Ate Singapore'にもきっと現れているはず。Janiceのスタイルは伝統の影響を受けたアーティスティックなスタイルで、私はもっと、エッジのきいたスタイル。それが合わせたデザートを作ったことによって、将来的にもっと常識から離れた面白いアイデアが湧いてくるように思ったわ。例えば、ジンジャーフラワーとカヤなんて、私は考えもしないもの。かつ私のオーストラリアのヘリテージとジャニスのシンガポールのバックグラウンドが溶け合ったフュージョンだと思うわ」と話していました。

それぞれの地域に息づく伝統的な組み合わせも、初めて食べる人からするととても意外で面白かったりするもの。私も、二人のオーストラリア人のシェフの目を通して、当たり前に食べて来たシンガポールの味を、改めて新鮮な切り口で見られた気がします。

シンガポールの魅力を伝えるPassion Made Possible、これからも新しい都市でイベントを行い、シンガポールの魅力を発信していくそうです。

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■Passion Made Possible

日時:2018年2月21日 17:00〜(終了)

会場:Shangri-La Hotel, 22 Orange Grove Road, 258350, Singapore

TEL:+65 6737 3644

URL: http://www.visitsingapore.com/about-passion-made-possible/

アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩10分程

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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