ミシュラン1ツ星 Iggy's とフィリピン・ Gallery Vask のコラボレーション
新しくスペイン人シェフ、Aitor Jeronimo Oriveシェフを迎え、去年8月にリニューアルオープンしたIggy's。今年はミシュラン一ツ星も獲得して順風満帆、その初めてのコラボレーションイベントが、10月19日・20日の2日間に渡って行われました。
迎えたのは、オーストラリア生まれのスペイン人シェフ、Chele Gonzalezシェフ。マニラにある自身のレストラン、Gallery Vaskは、Asia's 50 Best Restaurants で35位にランクイン、フィリピン各地に眠るまだ知られていない食文化や食材を発掘して、新しい料理を生み出しています。
そんな2人のシェフがそれぞれのシグネチャーを紹介していくコースです。まずは、ローランペリエのシャンパンでスタート。
Snacks
Sardines, salted egg, ube dashi (G)
少数民族の料理なども研究しているCheleシェフ、こちらは、Palawan 地方のTagbanua 部族のテクニックを応用しているそう。通常、この部族は、ウベという紫芋をスライスし、山の上で乾燥させて保存し、食べるときに20〜30分茹でて、ピュレ状にして食べるのだとか。
それと同じように乾燥させたウベのスライスを、地元のイワシのような魚で取った出汁に入れて。乾燥してからスモークしたこの魚は、地元では通常Pancit Noodlesという、炒めビーフンのような料理に入れて食べられるそうですが、それを、玉ねぎ、かぼちゃや生姜、モリンガ、レモングラスなどの野菜やハーブとともに、日本の鰹節のように出汁を作り、ドライにしたウベに注いでいます。
このスープと共に、ウベのチップの上にこの魚をのせ、キャビアとエジプシャンスターの花を飾ったスナックが提供されます。塩漬けのニシンとキャビア、キャビアもジャガイモのパンケーキ、ブリニと一緒に提供されるように、こういった素朴な芋の味とも合うように思います。塩漬け卵黄とカシューナッツのソースとともに。スープが薄味なためか、しっかり塩気が効いていました。
Singapore sling, roti john, uni (I)
シンガポールを代表するカクテル、シンガポールスリングをイメージした球体。チェリーやパイナップルベースの甘い味が飛び出して来ます。サイドにはフリーズドライにしたラズベリー。
ロティ・ジョンは、通常は卵サンドイッチのこと。
とても軽く口どけの良いメレンゲでパンを表現、スモークサーモンとクリームチーズ、そしてオレンジの皮でできたフィリングを挟んでいます。
ウニは、スモークトマトのジュレにバフンウニを乗せ、ジュンサイや海ぶどう、カリカリの岩塩などを飾ったもの。
そして、サプライズでAitorシェフが持って来たのが、本物の唐辛子の鉢。
この中から、本物の唐辛子を探し(大きさが違うので簡単に見つかります)収穫するのですが、金属の金具のついた軸は本物、唐辛子の部分はココアバターでコーティーングしたフォワグラアイスクリーム。
あとでキッチンで型を見せていただいたのですが、本物の唐辛子で型を取ってアイスクリームを流していて、とても面白かったです。唐辛子なのに辛くなく、とても濃厚でクリーミーな味わいでした。
Hokkaido Scallop (I)
ほんのりライムで酸味を効かせた茹でた日本の毛ガニと、生の北海道産のホタテ、その上にKaluga Queen (カルーガ・クイーン)という、Kaluga種のメスとShrenckii種のオスをを交配させて生まれたチョウザメのキャビアを使っています。コリアンダーの葉のソースで、エキゾティックな雰囲気を加えています。
5.6 (G)
本来はフィリピンの牡蠣で作るそうですが、こちらでは手に入らないので、アイルランド産に変更。牡蠣は澄ましバターで1分弱加熱し、ココナッツクリームとターメリック、レモングラス、青唐辛子のピクルスなどで作ったフィリピンの伝統的なソースをまとわせています。表面には、ライムの皮の塩漬けをアクセントに使っています。
そして、店名にもなっているIggyことIgnatius Chanさんといえば、シンガポールを代表するソムリエとして知られ、ブルゴーニュを中心としたワイン、2万5000本のコレクションがあるそう。その全てがこのIggy'sで楽しむことができるので、ワイン好きの人は是非訪れてみてほしいところ。
こちらは、個人的にも大好きなLeflaiveのモンラッシェ。
最初ミネラル、白い花やグリーンのキリッとした印象が強いですが、少し開くとナッティーなボディが出てきて、コースの後半になるにつれて重くなる料理にもあってきます。
Foie Gras (I)
フォワグラには、中国ソーセージの甘い澄ましスープを添えて。シソの花などのハーブですっきりと仕上げています。クリアスープであっさりしているけれど、ほんのり甘い味は、シンガポールでは特に好まれそうな味。
肉料理に合わせて、Domaine des Beaumontモレ・サン・ドニの赤を。
5代目のMaxell Beaumont氏が作ったワインですが、Iggyさんによると、これからもっと有名になるブランド、と見込んでいるのこと。まだ若いせいかフルーツ感もしっかりとありましたが、ピノ・ノワールの優美な味わいを余すところなく表現しています。
Mole (G)
モレ・ソースをイメージした一皿。牛タンはほろほろに低温調理で火を入れてあり、グリーンピースと、カカオと唐辛子のソースを添えて。3日間塩水に漬け込み、さらに72度で2日間調理したそうで、とろけそうに柔らか。オーナーのIggyさんがちょうど話にいらして、「スパムの缶詰を高級にした感じ」と表現されていましたが、繊維のほぐれ方は、まさにそんな感じの柔らかさ。
ソースの作り方はモレ・ソースですが、モレ・ソースに似た、お粥と一緒に食べるフィリピンのカカオのソースをベースに、発酵した小エビのペーストや青唐辛子のピクルスなどを加えて、伝統的ながら、洗練された軽い味わいに仕上げています。ちなみに、フィリピン・ピサヤ地方で育てているクリオロ種のカカオ豆を使ったローチョコレートから作っているそうです。
Iberico "Char Siew" (I)
イベリコ豚の高級部位、トップ・ロインをバーベキューをイメージして仕上げた一皿。下にはトリュフの香りの大麦のリゾット、上には豚の皮を揚げてポップコーンのように仕上げた、その名も「ポーク・コーン」を乗せて。
甘辛いチャーシュー味のソースに、上質なイベリコ豚の柔らかい肉質、豚の皮のクリスピーさ。とても楽しめました。
Heirloom Tomatoes (I)
ゼブラトマトや日本のトマトなど、たくさんの種類のトマトを様々に調理した一皿。バルサミコとライムに漬け込んだもの、蜂蜜に漬けたもの、生など、味わいは様々。海水のようなみずみずしさと、にがりのようなえぐみのあるシーバナナ、きゅうりのソルベ、トマトのグラニテとともに。
Tear Drop (G)
"Cheeks"とだけあったのは、まるで肉のような食感のキハダマグロの頬肉。 Sibujingと呼ばれるネギの仲間、Kalingagと呼ばれるシナモンの仲間を使ったソース、ハモン・イベリコを入れたハトムギのリゾットを添えて。最近ではハトムギは健康に良いスーパーフードとして人気を集めているのだとか。Kalingagは、タイムとクローブを混ぜたような香り。
上に乗っているのはナスターチウムと、フィリピンの野菜で、玉ねぎの仲間の植物の茎だとか。
Pingol Bato (G)
Pingol Batoとは、ベゴニアの仲間の葉のこと。消化に良いと言われている、少し肉厚でシャキシャキ、酸味のあるこの葉を、Dalandanと呼ばれるオレンジの一種、発酵したジンジャーエールとヨーグルト、ピリナッツと呼ばれる、常温でもなぜかひんやりと感じるような、脂肪分の多い柔らかく砕けるナッツと共に、生姜のメレンゲも添えて。
Coconut (I)
ヨーグルトとライムのピュレ、ナタデココ、バジルシード、ココナッツのスポンジ。
ココナッツウォーターのテュイル、バジルシード、乳糖のテュイル。
最後は、フロランタンとシソの入ったホワイトチョコレートのボンボンで締めくくり。
Iggy'sにとっては初めてのコラボレーションということでしたが、実はCheleシェフとAitorシェフは、7年前にMugaritz の系列で、グッゲンハイム美術館内にあるレストラン、Neruaで一緒に働いていたのだとか。スムーズだったのも、長年の友情あってこそ。
今度はもしかしてCheleシェフのいるマニラでのコラボレーションが実現するかも。スペインにルーツを持つ2人のシェフのコラボレーションでした。
<DATA>
■*Iggy's & Gallery Vask Reunion Gastronomic Experience
日時:2017年10月19日、20日(終了)
■Iggy's
住所:Hilton Hotel Level 3, 581 Orchard Road, Singapore 238883
電話: +65 6732 2234
営業時間:ランチ12:00~13:30(L.O.)、 ディナー19:00〜21:30(L.O.) 日曜・月曜休
アクセス:MRTオーチャード駅から徒歩5分ほど
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。
掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。
本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。
※情報修正・更新依頼はこちら
【リンク先の情報について】
「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。
リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。
ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。
弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。