温室で楽しむ地中海料理、Pollenの新シェフによる5周年記念メニュー

公開日 : 2017年07月22日
最終更新 :

去年10月に、新しく、ロンドンのミシュラン一ツ星レストラン、Gordon Ramsay at Claridge'sのヘッドシェフだった、Steve Allenシェフが就任したPollen。マリーナベイサンズにほど近い植物園、Gardens by the Bayの温室内に5年前にオープンした地中海料理のお店です。

今回は、そんなSteve シェフがPollenの5周年を記念したアニバーサリーコース(ペアリングのドリンク込み$155)が8月17日〜21日の期間限定で提供されるということで、一足早くいただきに行って来ました。

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食事のスタートは、オニオンバターから。

チャイブとリークアッシュを散らし、最後にリークオイルをかけていただきます。自家製のサワードゥブレッドは、オープン当初から変わらないレシピ。去年の10月にやって来てから、ほぼ全てのメニューを変えたそうですが、唯一買えなかったのがこのパンとか。小麦粉のスターターを使っているとのことで、酸味があまり強くなく、香りも穏やか。そして、クラストはカリカリ、内側はとってもしっとりしています。プレーンタイプと、たっぷりのゴマや雑穀を練りこんだものの2つのタイプが提供されます。

今回のアニバーサリーコース、5周年、という意味もありますが、「少ない皿数の方が、人の心に残る」というStevenシェフのポリシーから、これまでの8コースから、5コースに絞り込みました。

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Story 1 - Pollen's Garden:

そしてここで提供されるのは、「ジュースペアリング」「Pollen風のロゼからスタートしましょう」と提供されたドリンクは、なんとルバーブとバジル、Hendrick'sのジンで作ったオリジナルカクテル(モクテルにすることも可能)。

シンガポールでのジュースペアリングの先駆者は、発酵ジュースを生み出したアンドレかと思いますが、このPollenの特色は、何と言っても、スティームドジュースを使っていること。3重ねになった蒸し器のようなものの一番上に果物を入れ、その下にジュースを受けるものが用意されていて、一番下には水を張り、その蒸気で蒸しながらエキスを抽出するという方法。もともとヨーロッパで、フレッシュジュースでは保存がきかないので、長期保存に適したジュースを生み出すために作り出された手法で、こっくりとした濃厚な味、旨味を引き出します。また、アルコール入りとノンアルコールのものが入り混じって出されるのも特徴的。

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ルバーブの酸味が生きた、すっきりとしたスタートにふさわしいドリンクでした。

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中央に置かれたのはバーニャカウダのアイスクリーム。イタリア人とドイツ人のハーフだというスーシェフのCarmineさんから「ピエモンテの伝統料理なんです」と説明が。コンフィしたガーリックにオリーブオイル、しっかりとアンチョビの海の香りがあるアイスクリームです。

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今が旬のジロール茸、湯むきしたチェリートマト、トーチしたアーティーチョーク、炭火焼きしてからメープルシロップに漬け込んだシャロット、黒オリーブのクランブル。そら豆、そしてグリーンピースのピュレにはほんの少しミントを加えて。タラゴンのペストソース、細かく刻んだ人参のピクルス、ごく薄いクルトンなど、16種類の食材が盛り込まれた花畑のような一品。

ソースを冷たいアイスクリーム仕立てにするのは最近よく見かけますが、しっかりとアンチョビの味がするのに魚臭くなく、上品に仕上がっているのは、クリームを加えてあり、かつ冷たいアイスクリーム仕立てのおかげかも。とてもまろやかで、優しい一品に仕上がっていました。

Story 2 - Langoustine & Lardo

Carmineさんのバックグラウンドを反映させた一皿。

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キヌアとヘーゼルナッツを下に敷き、バナナシャロットという種類のシャロット、軽くスモークした自家製のリコッタチーズ。豚の脂肪をローズマリーなどのハーブやスパイスと共に、8ヶ月塩漬けにして作ったトスカーナ地方特産のLard di colonata。非加熱のものを特別に持って来ているのだとか。ズッキーニとズッキーニの花はナポリから。フレッシュな花をこんな形で食べるのは初めて。ベルベットのような柔らかくしっとりした食感、そして噛むと苦味はなく、ほのかに甘い味。花の後ろの小さな実は、スライスしてカリカリに揚げてあります。

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アブルッツォ産のラングスティーヌは表面を軽く炙って、ヒッコリーの木のチップで軽くスモーク。

ラングスティーヌの滑らかな食感にラードの濃厚なコクが重なり、香ばしいヘーゼルナッツが焦げ感とコクを強調する。リコッタチーズが重すぎないクリーミーさをプラス。タラゴンと塩に48時間漬け込んだ卵黄を上から削って、旨味を足しています。

最後に、目の前で作るドレッシング。ニンニクと唐辛子に、バジル、オレガノ、マージョラム、タラゴン、ディル、コリアンダー。数え切れないほどのハーブを入れて、最後はほうれん草ウォーターを足して作ります。

合わせるのは、イタリアのオーガニック、バイオダイナミック製法のオレンジワイン。

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元々はオーガニックのオリーブオイルの生産者として有名なのだそうですが、シチリア島でその2代目がワイン造りを行っているそう。自然派ワインですが、もったりした感じはなく、クリアな色目に、きりりとした辛口。あんずやドライフルーツのよう香りがあり、ヘーゼルナッツの香ばしさとよく合います。

次に合わせるのは、Pollenは冷房が効いていて寒いというお客様も多いから、何か温かいものを、とSteveシェフが考案した白ぶどうとカフィライムのスティームジュース。温めてから、ジャスミンの花を浮かべていただきます。ジャスミンティーの代わりに提供しているのだとか。

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そして、3皿目は、イギリス・イーストサセックス地方のの海にほど近い町、Eastbourne,で育ったというSteveシェフの子供時代の思い出から。

Story 3 - Sea & Sand

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鮭が大好きだというSteveシェフ、ニュージーランド産の、なるべく自然に近い方法で養殖したというAkoara King salmonをフランス産の海藻でマリネしてから湯がき、表面だけを軽く炙ってあります。火が通っていながらもしっとりとした身、スモークしたムール貝のエマルジョン、スコットランド産のブラウンクラブとそのブラウンクラブのビスク、セロリ、マスの卵、薄切りにしたフェンネルの根、軽く塩漬けにして凝縮感をあげ、ねっとりとした食感を実現した帆立貝、ピンクグレープフルーツのゼリー、シーレタスやシーアスパラガスなど、海を感じさせる野菜などと合わせて、海水の印象を表現。淡いブルーの皿に盛られていて、砂浜をイメージさせるクランブルも。これは、酢を入れて作ったキャラメルで、ほんの少しだけ日本のみりんと醤油で味付けしたカツオやゴマ、海苔などを使ったふりかけを混ぜ込んでいます。

Story 4 - Beef Cheek Tea

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そして、次はゴードン・ラムゼイ時代に作っていた、「とてもイギリスらしい」一皿を、マレーシアで食べて大好きになったという、バクテーのスパイスを加えてアレンジ。マレーシアで4年半を過ごしたというSteveシェフ、奥様もマレーシアの方ということで、すっかり東南アジアの味が気に入っているそう。

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もともと、牛肉と人参を煮込むというイギリス伝統料理から。ニンニク、白胡椒、カルダモン、四川胡椒(花椒)を加えたスープでしたが、そこに枸杞やリコリスなどのバクテースパイスを加えたスープで仕上げます。

「ゼラチン質がスープに合う」と選んだ牛ほほ肉は、10%の塩水に一晩漬け込んでからこのスープで3時間煮込み、このスープでターニップやシャロットなどの野菜もそれぞれに適した時間だけ煮て、表面だけ炙ってあります。スープは卵白で清澄した後、一緒に盛り付けて。ゼリー状のものは、牛肉と相性の良い、ホースラディッシュのジェル。

牛肉は、とろけそうなほど柔らかく、南イタリアのtropeanという玉ねぎは、ほのかにサクッとした食感を残しながらも甘みを引き出し、ターニップもみずみずしさを残しています。

合わせるのは、バイオダイナミック製法のローヌの赤ワイン。

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樽からなのか、重たすぎないキャラメルトフィーのような焦げた甘い香りが、野菜の甘みに合います。実際は野菜はどれも茹でてあり、表面を軽く炙っているだけですが、これに合わせることで、まるで、オーブンで表面が飴色になるまで香ばしく焼き上げた野菜のようなニュアンスを感じるペアリング。

デザートは、シンガポールらしいものを、ということで、シンガポールスリングがテーマ。シンガポールスリング発祥のラッフルズホテル、といえばお茶、ということで、イングリッシュブレックファーストティーをどうぞ、とSteveシェフが注いでくれます。

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その上に、ミルクアイスクリームを、と思ったら、なんといつの間にか紅茶がゼリーになっていてびっくり。冷たい器に、ギリギリの温度のゼラチンを入れて注ぐことで、このような食感になっているのかも。最後にアイスクリームを入れるのも、冷却の意味があるのかもしれません。

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アイスクリーム自体は、ドルチェ・デ・レチェのような焦がしミルクのような香りがあって、タイミルクティーや、シンガポールの紅茶、テ・タリなどが好きな方に受けそうな濃厚さ。それをさっぱりとしたイングリッシュブレックファーストのタンニンで洗い流すような印象です。

続いては、シンガポールスリングの原料でもある、ドン・ベネディクティンに漬けたチェリーを、サブレブルトン、ブルターニュ風のバターたっぷりのガレットのようなクッキーの上に乗せ、山羊のミルクで作ったカスタードクリーム、パイナップルソルベを加えたもの。タイムの芽がアクセントになっています。

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あんずをシャンパンイーストで1ヶ月で発酵させてから、ブラウンシュガーを足してさらに2週間発酵させたというベントナイトという粘土で清澄した自家製アプリコットワイン。適宜ブラウンシュガーを足していきますが、イーストはアルコール度が40度以上になると死んでしまうので、アルコール度を上げすぎない調整も必要なのだとか。醤油のような発酵の香りや旨味、複雑性があります。

Story 5 - Cherries

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デザートは、シンガポールスリングがテーマ。クローブやジュニパーベリー、サフラン、コリアンダー、タイム、バニラなど12種類のスパイスにチェリーを一晩漬け込んでからスティームして作ったチェリーのジュース。フレッシュなチェリーに、レモンやローズマリー、レモンバームに漬け込んだチェリーを混ぜ、レモンバームとコリアンダーの葉を散らして。色々なチェリーの味のグラデーションを楽しみます。

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そして、半分ほど食べ終わったところで、サプライズ。液体窒素で冷やし固めた、クリーム控えめのチェリームースパルフェ。こちらを、木のスプーンで叩いて割ってからいただきます。

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ひんやりしたパルフェは、口の中で溶けるに従ってなめらかなクリーム感が生まれ、アイスクリームのような印象に。

締めくくりのお茶は、自家製のシンガポールスリングティー。パイナップルやチェリーなどをディハイドレーターで乾燥させ、ウーロン茶の白茶と混ぜたもの。人工の香りをつけたフレーバーティーとは違う、ほんのりとした甘みと、穏やかだけれども複雑な香り。

美しい温室の中で、自然をテーマにした料理とともに、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?ちなみに、シンガポールの温室は、外の暑さから植物を守るため、外気温より低く温度が設定されていて、20度程度です。羽織物などのご用意をオススメします!

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■Pollen(ポーレン)

(アニバーサリーメニューの提供は2017年8月17日〜21日)

営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:00~22:00、火曜休

住所:Flower Dome, Gardens by the Bay, 18 Marina Gardens Drive, #01-09, Singapore 018953

電話:+65 6604 9988

アクセス:MRTベイフロント駅から徒歩15分程度

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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