[World Gourmet Summit] 注目のメキシコ料理、Daniel Ovadiaシェフ来星

公開日 : 2017年04月09日
最終更新 :

毎年行われる食の祭典、World Gourmet Summit の今年のテーマは、United Nations。世界の国にもっとフィーチャーし、幅広い食文化を取り上げています。

あのNomaがメキシコに行く、ということもあって今注目のメキシコ料理。そんな中、メキシコ大使館のサポートのもと、Miele Galleryで、メキシコからDaniel Ovadiaシェフを招いてのイベントが行われました。

まずは、Danielシェフによるクッキングデモンストレーション。

(下の方に、虫の画像があります。苦手な方はご注意ください)

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1億2000万人の人が住むメキシコ。その食文化も、とてもバラエティに富んでいるといいます。600年前にスペイン人がアステカ帝国にやってきて、その時に持ってきた食材が今は多く使われており、そういう意味で、メキシコ料理はフュージョンである、とDanielシェフは語ります。

メキシコを代表するソースは、モレソース。一般的には、カカオを使った濃厚なソースのことを指しますが、元々は「モレ」という言葉自体が、ソース、という意味。唐辛子を使ったもの、果物を使ったもの、カカオを使ったもの。その全てがモレ、と呼ばれるのだそう。

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今回は、南部の港町、Veracruz(ベラクルス)地域に伝わるソースを作ります。シナモンの産地でもあること、また港町でヨーロッパからの船が着くため、その影響も受けているのだとか。

今回は、辛味は強くなく、甘くて香りの良い緑の唐辛子、Chile Poblano(チレ・ポブラーノ)を使ったソースを作ります。

メキシコでは、唐辛子を干してから、グァバやシナモンでスモークするため、より香りが甘くなるのだとか。

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この干した唐辛子をそのまま鍋に入れて温めると、唐辛子の中から自然なオイルが出てきて、香りが良くなるのだとか。鍋に入れる以外にも、直火で炙ったり、サラマンダーにかけたりして温めることもあるそうです。

そして、ラードを加えて、鍋をこそげて焦げた糖分を取ります。そして、豚肉や鶏肉、野菜などの出汁、もしくは水などを加え、さらにシナモン、オレガノ、塩を加えれば、スープの元になるものが出来上がります。

ここに、さらに表面が黒くなるほど熟したバナナ、(調理用バナナ、プランテーンの場合は甘くないので砂糖を加える)、ピーナッツ、アーモンド、カカオ、トーストしたパン、クミン、黒胡椒、レーズンなどを加えて、ソースを作ります。本来はメタテと呼ばれる石臼で材料を潰して混ぜていくため、中には作るのに1週間かかるものもあるそうです。なので、特別な行事の際に、みんなが集まって総出で作るもの、という側面もあるのだとか。その中でも特に高価なのは、chilhuacle(チルワクレ)と呼ばれる唐辛子の中でも高級品。生産しているのは8家族のみ、5エーカーほどの広さのエリアでしか育たないため、毎年3〜8トンしか収穫できないのだとか。生でもフレッシュで香りがよく、それを更に3〜4ヶ月石の上に並べ石の上にひっくり返し、天日で乾かさないといけないのだとか。

そして、もう一つ高価なものが、虫。メキシコでは、伝統的に虫食が行われていて、特にアガペと呼ばれる竜舌蘭の根の部分を食べて育つChinicuil(チニクイル)と呼ばれる虫。赤いものは根の部分を食べて育つため、特に高価だとか。葉の部分を食べて育つ白いものは、頭を取らないと食べられないそうですが、赤はそのまま食べられるのだとか。

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油で揚げてカリカリにしたものを食べてみると、表面がカリッと軽く揚がっていて、竜舌蘭由来なのか、キクイモのような香りが。内臓の部分はほのかなコクがあり、後味には、海老のような旨みを感じます。

塩と混ぜて、マンゴーにかけて食べたりもするそうです。ちょっとアジアの海老塩のような感じでしょうか。

「Chinicuilの魅力は、そのエレガントな味わいだ」とDavidシェフは語ります。

そして、もう一つ作り方を見せてもらったのが、サルサ。味のキーになるのは、Danielシェフが大好きだという、Chilmoleと呼ばれる、黒いペースト。

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トマトやオレガノ、唐辛子などを焦がして、酢とオレンジジュースを加えたものだそうです。少しだけ味見すると、スパイスを焦がした味に、野菜の濃厚な旨みを感じます。黒い色は、焦がした灰を加えているからだそうで、加えていない白色のもの、コチニール色素を加えた赤色のものもあるそうです。

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そして、これを使って作ったサルサは、ネギや玉ねぎ、トマトなどが加わっていて、サルサの主要原料であるトマトと玉ねぎのフレッシュな香りの中に、キャラメリゼされた野菜の旨み、そして唐辛子の甘い香りが感じられます。

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このモレもこの虫も、600年前にスペイン人がやってくる前のプレ・スパニッシュフードと位置付けられる、伝統的な料理なのだそう。豚のラードは、スペイン人が来てから食べるようになったそうですが、その前からイベリコ豚に似た種類の豚がいたのだそう。

そして、Danielシェフによるお料理の試食タイム。

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まず一皿目は、先ほど登場したChilmoleを使ったサルサと、メキシコの珍味、竜舌蘭につく虫のChinicuil。

柔らかいタコスの皮に包んで、アボカドと一緒にいただきます。干しエビのような感覚で食べられるクリスピーなChinicuil、菊芋のような香りと、サルサのハーブの香りが合います。アボカドの食感との対比も面白い組み合わせでした。

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もう一つは、豚の肩ロース肉に、炭を加えたChilmoleのソースをかけたもの。炭の少しざらっとした食感があり、焦がしたことによる凝縮した野菜の旨味が感じられるスパイシーなソースが、豚の脂の甘みに合っていました。

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そして、ワカモレに子豚の丸焼きを組み合わせた一皿。本来はメキシコ料理では伝統的にドライなトルティーヤは使われておらず、テキサスなどで食べられているTex-Mexにしか使われないナチョスを逆輸入して散らしてあります。

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そして、中にはオリーブオイルの中でコンフィにした卵黄が。混ぜて食べると、アボカドと相まって、濃厚なコクが感じられます。

私が一番気に入ったのは、鴨肉に、バナナとカカオを使ったモレソースをかけたもの。熟したバナナとカカオの甘みでいただく鴨肉、サイドには甘いかぼちゃのピュレ。程よく焦がしたシャロットを添えて。サイドにはトルティーヤの生地を丸めて茹でたものが。

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メキシコ料理といえば、タコス、というようなイメージがまだまだ一般的ですが、豊かな食材のバラエティや、ソース一つとっても色々な作り方があって面白いメキシコ料理。

世界がより小さくなる中で、こういった新しい料理との出会いも、世界でどんどん増えてくるのかも知れません。

<DATA>

■World Gourmet Summit 2017

国内各地のレストランで4月16日まで開催

■Culinary Master class and Luncheon featuring Chef Daniel Ovadia by Miele

日時:2017年3月31日(終了)

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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