伝統料理に新風・若きシェフのモダン・プラナカンキュイジーヌ「Candlenut」

公開日 : 2014年07月26日
最終更新 :

シンガポールの伝統料理、プラナカン料理をモダンにアレンジしたレストランとして、今シンガポールで話題の「Candlenut」に行って来ました。

場所は、MRTの Outram Park 駅から徒歩すぐ、New Bridge Road という大通りに面していて、アクセスも便利。スタイリッシュなガラス張りのレストランです。

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中に入ると、暖かみのある、シックな色合いの木を多用した店内。カトラリーがコップに入れてあったりと、お洒落でありながらも、どこかくつろいだ雰囲気が感じられます。

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こちらはなんと、若干29歳という若さの、Malcolm Lee(マルコム・リー)ヘッドシェフがオーナーも務めるお店。Malcolmシェフは、シンガポール政府が主導する食のフェアでデモンストレーションを行う等、様々なイベントで引っ張りだこな他、ニューヨークでのイベントに招聘される等、新しい時代のプラナカン料理の担い手として注目を浴びています。

「Candlenut」とは、プラナカンの人たちがろうそくを作る為に使っていた木の実のこと。炒め物や、カレーにコクを出す為等、様々な料理に使われて来た歴史があるのだとか。プラナカンの文化を知って欲しいと、店内には色々な展示があるのですが、このキャンドルナッツも置いてありました。

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さて、今回は色々なお料理を試したいと、特別にドリンクとデザート以外は、4分の1ほどのポーションにして出していただきました(価格はフルサイズの場合のものです)。

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ドリンクは、ライスミルク(5シンガポールドル)をオーダー。夜でしたら、世界の様々なクラフトビール(日本のものも、兵庫県のKONISHIビール、秋田県の湖畔の杜ビール等、様々な種類が揃っています)からオーダーするのも良さそうです。

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このライスミルクは、薔薇の香りがする、ほんのりと甘いもの。食事の邪魔にならない、ちょうど良い甘さです。上にも薔薇の花があしらわれていて、雰囲気も素敵です。

最初に頂いたのは、クエパイティー(8シンガポールドル)。

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小さなカップに甘辛く炒めたターニップ、海老と豚バラ肉が入ったもので、最後にみたらし団子のみたらしの部分のような味わいの、グラ・メラカ(パームシュガー)のソースをとろりと掛けてあり、驚くほど薄くてカリカリのカップとの対照が楽しい一口前菜です。

続いては、熱帯のシンガポールならではの食材、ウイングビーン(四角豆)を使ったサラダ(12シンガポールドル)。

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絶妙に火入れがされたウイングビーンは、とても瑞々しく、シャキシャキした歯触り。ライムを使った甘酸っぱいソースとミントの葉がさわやかで、暑いシンガポールでの疲れを癒してくれるような味わいです。

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海老の優しい食感、カリカリした小魚、カシューナッツのコクも嬉しい一品です。

プラナカン料理の定番、ビーフレンダン(牛肉をココナッツミルクとスパイスで煮込んだもの、18シンガポールドル)

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カフィライムとレモングラスの香りが豊かで、牛肉もホロホロに煮込まれています。ソースの舌触りもよく、丁寧な仕事ぶりが伺えます。スパイシーな味付けなので、ご飯が進みます。

ニョニャ風の野菜と春雨の五目炒め、チャプチャイ(12シンガポールドル)

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一口食べた瞬間、これまでのチャプチャイ観を覆されました。濃厚な海老の出汁が効いていて、その出汁の旨味をたっぷり吸った茸やキャベツ、春雨はとても上品でリッチな味わい。辛くないので、スパイシーなものが苦手な方にもぴったりです。

海老とビタービーンの辛みそ炒め、サンバルペタイプラウン(18シンガポールドル)

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ほろ苦さの中に濃厚なコクと旨味のあるビタービーンと新鮮でプリプリの海老、上に乗ったフライドシャロットのカリカリ感が生きています。プラナカンの人たちにとって、各家庭で手作りされるサンバルはとても大切なもの。家庭毎にこだわりがあります。こちらのサンバルは、辛みの中に海老味噌の味が生きた、風味豊かなものでした。

そして、オリジナルのカニのココナッツカレー(24シンガポールドル)。

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伝統的なニョニャ料理でカレーに使う、海老とパイナップルの代わりに、ほぐしたワタリガニの身が入り、更にクリーミーな濃厚な味わいに仕上げてあります。カフィライムとレモングラスの香りに、ほんのりライムの酸味が効いていて、濃厚さの中にもさっぱりとした味わいがあります。カニの身がたっぷり入っているのですが、とても丁寧に細かくほぐされていて、滑らかな舌触り。手間を惜しまず、丁寧に作ったカレーと言う印象です。

そして、プラナカン料理と言えば忘れてはならないのが、ブアクルア(ブラックナッツ)の煮込みです。5昼夜かけてじっくりと水にさらして毒を抜いたあと、中の実を取り出してソースにしたもの。こちらにも、実物が飾ってあったので写真を撮らせてもらいました。

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以前に和牛を使ったものを頂いていたので、今回は違うもので、とイカを使ったメニューにアレンジしてくれました。(このようなリクエストがあれば、対応してもらえます)

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ブアクルアはどこかたまり醤油を思わせるようなコクがあり、良質なカカオ豆のような、独特の木の香りがあります。程よい火入れのイカは、火が通り過ぎておらず、しっとりとした食感で新しい美味しさでした。

そして、忘れてはならないのはデザート。(ここからの写真はフルポーションのものです)

私の一番のお勧めは、何とこのブアクルアを使ったアイスクリーム!(14シンガポールドル)。

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シンガポール中探しても、ここでしか食べられない、Malcolmシェフの創造力が生きたデザートです。

ヴァローナチョコレートとブアクルアで作ったアイスクリームの下には、塩キャラメルとチョコレートのクランブルとチリを合わせたもの。上にはエスプーマで作った温かいチョコレートソース。木の香りのブアクルアと、チョコレートの香り高さが良く合い、チリと塩のアクセントが効いています。口に運ぶと、チョココーティングされたパチパチキャンディーが弾けます。アイスクリームとソースの温度の違い、滑らかさとパチパチキャンディー、クランブルの食感の対比、甘みと塩気、辛みのバランス・・・・・・・ぜひ、お試しください!

その他にも、ローカルスイーツのチェンドルをアレンジしたチェンドルクリーム(7シンガポールドル)

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パンナコッタのような柔らかさに仕上げたココナッツミルクの上にグラ・メラカのソース、東洋のヴァニラと呼ばれるパンダンリーフのゼリーを添えたもの。パンダンリーフのゼリーも、しっかりとバニラと干し草が混ざったようなパンダンの甘い香りがあり、本物の味わいが楽しめます。

そして、お好きな方はぜひ、今が旬のドリアンスープ(9シンガポールドル)をお試しあれ。

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クリームの中に、ドリアンの柔らかいアイス、そして下には新鮮なドリアンのピューレが敷かれています。クリームにちりばめられたサクサクのクレープクッキーが、繊細なアクセントになっています。

こちらのお料理で一番感じるのは、繊細さと丁寧さ。

それもその筈、Malcolmシェフは、シンガポール人として初めて、ミーレガイドから優秀なシェフとして奨学金を受けて学んだと言う経歴の持ち主。Malcolmシェフに話を聞くと、元々はフレンチやイタリアンのファインダイニングを作るのが夢だったそうですが、自分のルーツでもあるプラナカンの伝統料理が廃れ始めている事に危機感を抱き、プラナカン料理のレストランを開く事を決めたとか。

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『「プラナカン風」の、新しい料理を作るのは簡単かもしれない。だけれども、僕がやりたいのはそういうものではなくて、プラナカンの歴史を理解し、なぜその料理は出来たのか、なぜこんな作り方をするのか、という事を知った上での、伝統に基づいた新しい料理なんだ。今、若いシェフ達は、「プラナカン料理は古くさいし手間がかかる」と、敬遠している。確かにプラナカン料理は工程が多くて大変だけれども、手間をかけて、丁寧に、創造性を持って料理を作ると言う意味で、僕たちが今やっている事と、西洋のファインダイニングでやっている事は基本的に同じだと思っている。若いシェフたちが僕の料理を食べて、こんなプラナカン料理があるんだ、と驚いてくれたら嬉しいし、プラナカン料理の見方を変えてくれれば良いと思っている』と熱く語るMalcolmシェフ。

伝統を大切に受け継ぎつつ繰り広げられる、新しいプラナカン料理の世界に期待が高まります。

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■Candlenut

営業時間:ランチ 12:00〜14:30 (平日のみ)、ディナー 18:00〜22:00 (日曜・祝日休)

住所:331 New Bridge Road, #01-03, Singapore 088764

TEL:+65 8121 4107

URL: http://www.candlenut.com.sg/

アクセス:MRTアウトラムパーク駅から徒歩3分程

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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