70年の時を経て蘇った「びわ湖疏水船」で、特別なタイムスリップ体験!

公開日 : 2018年04月15日
最終更新 :

蘇った「びわ湖疎水船」

「びわ湖疏水」ってご存知ですか?

京都南禅寺の水路閣や蹴上インクラインなど、京都でも特に風光明媚な岡崎エリアの見所を形成する1つとしてご存知の方も多いと思います。

この「びわ湖疏水」。その名の通り、琵琶湖の水を京都まで運ぶ水の路です。

明治維新の後、東京遷都によって京都は首都機能を失い、急速に衰退しました。

その京都に活気を取り戻した、国の歴史上とっても重要な土木プロジェクトが「びわ湖疏水」の建設です。

ただしそのためには滋賀県と京都の間の山を越える必要があります。なんとこれをトンネルを掘って繋ぐという、当時としてはトンデモナイ大事業だったのです。

その水は京都に水と電力を供給し続ける大切なライフラインとして、完成から120年以上経った今でも現役。

100年先を見据えたこの大事業、偉人達のトンデモナイ発想と行動力に頭が下がります。

そんな「びわ湖疏水」、当初は水利用や水力発電の他にも、大津と京都を繋ぐ【水運】としても大いに利用されていました。

しかし車や鉄道といった交通の発達の中で、水運についてはすっかり姿を消してしまったのです。

それから長い時間、人が入ることから閉ざされてきた「びわ湖疏水」...。(僕も疏水に人が入れるなんて考えたことなかった...)

なんと70年ぶりに一般の方でも「疏水船」に乗って、未知なる疏水の中への旅を体験できるようになりました!

今回「疎水船」の一般予約スタートと同時に、Funazushi-maruも早速予約して行ってきましたよ。

「びわ湖疎水船」で新緑の水の旅

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大津閘門 撮影:Funazushi-maru

京阪石山本線の「三井寺」駅で下車。すぐに琵琶湖から水を疏水へ引き込む「大津閘門(おおつこうもん)」へたどり着きます。

大津閘門は開け閉めすることで、運河のように疏水の水位を調節しています。

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予約していた時間の20分前に集合し、乗船の際の注意事項など説明を受けます。

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普段は入れない疏水の路 撮影:Funazushi-maru

その後、疏水船の場所まで徒歩で移動。ここからは普段は一般の人間が入れない特別なエリアなのです。

大津閘門の真上を通って、通常は真上にある道路から見下ろしていた疏水脇の道を歩きます。

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観光化に向けて新たに造られた疏水船 撮影:Funazushi-maru

さあ、いよいよ乗船。

予約順に1人ずつ名前を呼ばれて席に乗り込みます。屋根付きの小さな船なので、頭をぶつけないように...

席には腰巻タイプのライフジャケットとブランケット一式が設置されており、席に着いたらライフジャケットを取り付けます。

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いよいよ出船! トンネルの中は... 撮影:Funazushi-maru

一緒に乗り込んだガイドのお姉さんの案内で、未知の世界への探検ハジマリハジマリ!

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第1トンネルの琵琶湖側入り口 撮影:Funazushi-maru

疏水の各トンネルの洞門には明治の本格的な洋風建築による重厚なデザインが施されています。

疏水最大の難工事であった第1トンネル洞門東口には初代総理大臣 伊藤博文が揮毫した「扁額」が刻まれています。刻まれるのは「気象萬千(きしょうばんせん)」と言う言葉...意味:様々に変化する風光は素晴らしい。

第1トンネルは長さ約2.4㎞。当時の日本としては初めての「竪抗方式」によって、かつ外国人に頼らず、日本人の技術力だけで作られた国の土木史上大変重要なもの。

トンネルの中には今も当時の距離を示す金属製プレートや、京都方面から折り返すためのロープ、また疏水建設の大きな立役者であった第三代京都府知事「北垣国道」の揮毫した扁額(「寶祚無窮 ほうそむきゅう」...意味:皇位は永遠である)を見ることができます。

こういった歴史的な遺産も70年ぶりに見ることができるようになったのです。

トンネルの中については今回は写真は載せていませんので、是非皆さんの目で見て体験してくださいね!

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船は暗闇を脱し... 撮影:Funazushi-maru

そして暗闇の向こうに見えていた小さな光が徐々に大きくなっていきます。まるで過去へと旅していたタイムマシンが現代へ帰還してきたみたい...

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桜が散った後の新緑が出迎えてくれました 撮影:Funazushi-maru

トンネルを抜けるとそこはもう京都。船から見上げると新緑の木々がキラキラを輝いています。

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疏水中間地点の四ノ宮舟溜 撮影:Funazushi-maru

僕の過去へのタイムスリップツアーはここまで。

四ノ宮舟溜は第2トンネル前に池のような広い場所が設けられており、以前は荷物の揚げ降ろしや船頭さんの休憩場所となっていました。

わずかな時間の旅でしたが、時空間を移動したかのような不思議な感覚が残りました。

帰りは陸の古の道を...

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第1トンネル西口の洞門 撮影:Funazushi-maru

帰りは徒歩で大津へ戻ります。ちょうど疏水の真上を通る旧道をテクテクと約3㎞のハイキング。

さっき疏水船で出てきた第1トンネル西口洞門が見えました。

扁額の揮毫者は「山県有朋」(第三代・九代内閣総理大臣)です。明治の元勲たちの名前がこの疏水がいかに重要な事業であったのかを今に伝えます。

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小関越えの道 撮影:Funazushi-maru

東海道の逢坂の関が有名ですが、大津の三井寺と京都を繋ぐ巡礼の道として「小関越え」と呼ばれる古の道が存在します。

この細道を歩いていくと...。

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疏水の第一竪抗 撮影:Funazushi-maru

こんなところにありました。疏水工事のために掘られた「第一竪抗」。ここから約47mも下に疏水のトンネルがあるのです。

よくまあこんな山の上から掘るなんて考えたもんだ‥。(直径は5mもあります)

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小関越えハイキングコース 撮影:Funazushi-maru

真っ直ぐ降りてもいいですが、ちょっと寄り道して小関越えのハイキングコースへ。ここは途中の展望台を経て三井寺の境内を通って戻ることができます。(三井寺拝観料が必要です。大人:600円)

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三井寺の展望台から大津の街を望む 撮影:Funazushi-maru

自分の脚で京都から大津までを山を越えて歩くことで、いかに疏水の工事が大変な場所で行われたのか思い巡らせることができますよ。

昔の京都の人々もここから見える琵琶湖の景色をみて、都と琵琶湖を繋ぐことを夢見たのではないでしょうか...

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疏水船は様々な季節で楽しめる新たな観光スポットに 撮影:Funazushi-maru

春の桜、夏の涼、秋の紅葉...と様々な季節の風光を愛でながら、過去へのタイムスリップ体験ができる「びわ湖疎水船」。

京都と滋賀を繋ぐ新たなスポットとして人気になること必至ですね。

問い合わせ:びわ湖疏水船受付事務局(JTB西日本京都支店内)

      TEL.075-365-7768 FAX.075-365-7757(※お電話での予約は承っておりません)

アクセス:大津 乗下船場...京阪・三井寺駅から徒歩約2分 

     ※各乗下船場には駐車場がありませんので、公共の交通機関をご利用ください。

筆者

滋賀特派員

フナズシマル

皆様に是非訪れてほしいマニアックな滋賀のマニアックなスポットをご紹介していきます!

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