「ヨシ」と共に生きる郷

公開日 : 2017年10月31日
最終更新 :

皆さん、「ヨシ」って知っていますか?

ヨシとは水辺に生えるイネ科の多年草の植物で、「葦」と呼ぶこともあります。

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全国の河辺にも多く生えているのを見かけますし、葦簀(よしず)や茅葺にも使われてきたので馴染みの深い植物だと思います。

琵琶湖の周辺にも大変沢山生えており、万葉集なんかにも多く読まれていたりします。

元はアシと呼ばれていましたが、「悪し(あし)」と読めることから、「良し(よし)」と変えていったのだそう。

それだけではなく、実際に「葦」と呼ばれるものもあって、ヨシは茎の中身が空洞なのですが、葦は中身に綿状のものが詰まっており、葦簀の材料には使えないのだとか・・・。このあたりの由来もいろいろ奥深いですね。

琵琶湖の周囲には内湖という小さな湖が点在しますが、そのうちでも最大規模の内湖が「西の湖」なんです。

もともとこのあたりは琵琶湖の一部であったのが、70年ほど前から干拓が始まり西の湖と一部の水路が残りました。

干拓前から水深の浅い内湖が点在していたことから、ヨシの群生があちこちにあったものと思われます。

滋賀県の観光地の中でも特に人気の高いの近江八幡周辺なのですが、このエリアで有名なのが「水郷めぐり」。

エリアに広がる静かな内湖とヨシ原を万葉の昔を感じながら船でゆったり巡る・・・それが水郷めぐりです。

で、今回は僕が所属しているサイクリングの団体にヨシの保全や地域コミュニティーを推進している方々との水郷を自転車で巡るイベントに参加しました。

ただ台風の接近に伴う生憎の雨・・・まあ小雨ではありましたが。

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水郷めぐりのある西の湖とその周辺は今でも広大なヨシの群生が見られ、湖岸を走っていても湖面が見えないくらいです。

そのくらいヨシが沢山ある地域ということもあり、昔からこの地ではヨシを生業にされてきている方々が多くいました。

しかし今回訪れた円山町でも今では2~3軒にまで減ったそうです。

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実はこのあたりのヨシはすべて持ち主がいて、管理されてるものなんです。

ヨシって勝手に生えてるものなのかと思ってました...

大きく育ったヨシは12月頃から3月にかけて刈り取り、春にに野焼き「ヨシ地焼き」をして雑草などを焼き払います。

そうやって管理することで次の良いヨシが育つのだそう。

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倉庫の中を見せてもらいましたが、長さ4mはあるかと思われる長ーいヨシが。

刈り取ったヨシを長さや太さ、真っ直ぐ度合いなどで選別し、利用先ごとに最適な物を出荷するそうなんです。

最近ホームセンターなどで売られているのは中国産だそうですが、こちらのヨシは祇園などの花街などで利用されている「軒吊り簾」などに加工される高級な物も。

ただのヨシと思うなかれ!って感じですね。

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簾を編む機械も見せてもらいましたよ。

写真の向こう側からヨシを機械の右側に通してスイッチを押すと、沢山の紐が一斉にクルッと捻られて編まれていきます。

その様子がなかなか面白い!

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ちなみに中国産はこの時のヨシの本数は1本の物が多いみたいですが、琵琶湖産はヨシを2本ずつ編み込みます。

なぜかというと、ヨシは根本が太く先が細いので、1本ずつだとすき間が大きくなってしまいます。なので2本ずつ天地を逆にしたものを1セットにして編むのだそう。このあたりが伝統ある琵琶湖の簾のこだわりですね!

円山町の公民館ではヨシネットワークの方々に様々なヨシにまつわる体験をさせていただくことに。

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紙漉体験や、ヨシの額縁作りなど...

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そして完成!

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センスないとか言わないでくださいね。

結構童心に帰って楽しんじゃいました!

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ヨシの葉っぱを粉末にして練り込んだ生地を、ふんわりサクサクに焼き上げたクッキー!

これが意外と(意外と言ったら怒られるかな?)絶品!

めちゃめちゃ美味しいクッキーでした。

他にもヨシ笛デュエットのコンサートなど、ヨシ笛の郷愁を誘う音色に思わず「ジーン」としちゃいました。

近江八幡の観光地から少し離れた「西の湖」周辺。ここは万葉の昔から延々と続く琵琶湖の風景と文化が確かに残る地域でした。

水郷巡りの後は、是非サイクリングで巡ってみるのもいいですよ。

その時はヨシをただの草なんて思わないように。ヨシの「良し悪し」なんかをじっくり見るのも面白いかも。

筆者

滋賀特派員

フナズシマル

皆様に是非訪れてほしいマニアックな滋賀のマニアックなスポットをご紹介していきます!

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