桜について思うこと

公開日 : 1998年04月08日
最終更新 :

ソウルもすっかり春めいてきました。冬が長く寒さも厳しいだけに春はうれしいですね。日本では冬も暖かいところにいたので、春のありがたさはソウルに来て知りました。ソウルの春はレンギョウとヤマツツジで幕を開けます。冬枯れた色の無い街にいきなり黄色いレンギョウが咲き乱れるのには目を奪われます。ソウルを取り囲む岩山には赤紫のヤマツツジが咲き、そこだけ凛とした雰囲気に包まれます。これまた鮮やかな色にはっと目を覚ますのです。韓国人に好きな花は?と聞くと、レンギョウがよく挙がるのもわかります。そして渋めのかっこいい人が黄色が好きと言ったりするのを聞くと、レンギョウを思います。春の風にカーテンのようになびくレンギョウは本当に美しいです。ところで日本の春といえば桜ですよね。ソウル市内で桜の名所といえば、いくつかの故宮と南山、国会議事堂のある汝矣島、こども大公園あたりでしょうか。今ちょうど桜は満開で、お花見する人も大勢います。でも日本のようにそこら中みんな桜で、敷物で場所取りをしたりっていうのはあまりないです。韓国にも桜の木はあるし、桜並木が美しいところもありますが、日本の盛り上がり方とはちょっと違うんです。いつも満開の桜を見ると思うんですよね。韓国の桜の運命を…です。まだ韓国に来てまもない頃、韓国人の友達が言ったことに驚いたことがあります。友達:「幼稚園の遠足で昌慶宮(チャンギョングン)に行った時には、桜がホントにきれいだったんだ」わたし:「今だってきれいだよ」友達:「いや、その頃はもっと桜だらけだったの」わたし:「え?じゃあ桜がなくなったってこと?」友達:「その頃は動物もいたんだ」わたし:「故宮にどうぶつー??」友達:「むかし日本が動物園つくったの知らなかった?」こういう時の気持ちをどう表現したらいいのでしょう。今は故宮として韓国情緒たっぷりの昌慶宮に動物園があったり、お花見をしたりしたなんて…。その後本で調べると、「日本は朝鮮を植民地支配した直後の1911年、昌慶宮を昌慶苑と名を改め、日本式庭園を造り桜を植え、動物園や大温室を造った。1924年頃から夜桜見物をする人でにぎわうようになった。」ということでした。戦後も公園はそのままになっていたので、友達のような話があっても当然なのです。動物をソウル大公園に移し、大々的な復元工事が始まったのは、1983年からといいますから、ずいぶん最近まで植民地の名残はそのままだったわけです。抜かれた桜の木や動物たちのことも気になるけれど、大切な王宮を勝手に荒らされた韓国の人の気持ちを考えると、胸が痛みます。何も知らずに出かけた動物園がそういういきさつで造られたと知ったら、どんな気持ちがするでしょう。きれいだなと見上げていた桜のいきさつを知ったら…本当にがっかりするでしょう。それで満開の桜を見ても、どんちゃん騒ぎができないような…少し感傷的な気分になったりするのです。昌慶宮への行き方地下鉄3号線安国駅下車徒歩20分。日本文化院前から543番か205番バスに乗れば次の停留所下車。昌慶宮から連絡橋(これも植民地時代の名残らしい)を渡り、宗廟の中を抜けにぎやかな鍾路通りに出るコースはおすすめ。

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昌慶宮でレンギョウを背景に写真を撮る新婚カップル。春の故宮は結婚アルバム作りにやってきたカップルであふれ、さながら写真館のようです。

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