雪国生活、北海道「冬のヒーロー」とは

公開日 : 2022年02月24日
最終更新 :

最近のニュースで、梅の花の便りが流れていましたが、北海道の2月といえば、1年で最も寒く積雪も多い季節です。
そんな北海道・札幌の雪にまつわる冬の日常生活とは切っても切れない話題をご紹介します。

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2022年2月の北海道と、世界的にも珍しい豪雪の大都市、札幌

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Bare trees with snow after the heavy snowfall in Hokkaido

今シーズン(2021-2022冬)は、全国的に大雪に見舞われ、かつてないほどの降雪と積雪に交通をはじめ、日常生活に影響が出るほどの事態がたびたび起きています。
北海道も例外ではなく、例年以上の大雪となり、2022年2月24日現在も週末の大雪でJRが全線運休となった影響をいまだに受け、ダイヤは通常運行に戻っていません。
2022年の冬は、東京都心などでも大雪で足元が悪かったり交通の便が乱れたり、不自由な日常を経験された方は多いと思います。
道外在住の大雪を経験された方からは、「毎年雪が多い北海道、雪かき事情はどうなっているの」との質問をいただいたりもしたので、今回は札幌の冬の雪事情について書いてみます。

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大雪の札幌 / Heavy snow in Sapporo

まず、札幌は、年間降雪量が約5メートル、多い時には6メートルにもなる世界的に見ても珍しい豪雪の大都市です。
今回、初めて大雪を体験した方などは、毎年このような雪の中でどうやって暮らしているのか、と不思議に思うほどの降雪量。
冬のオリンピックで知られ、雪が多いイメージのカナダの都市モントリオールでも、年間降雪量は2メートルから3メートルだそう。
人口100万人規模の大都市としての札幌の雪の多さがわかります。

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1月下旬でも雪が少ない釧路エリア / Kushiro Area at the end of January

実は北海道の市町村でも、雪が多いところと少ないところがあります。
極寒の地のひとつとして有名な釧路や帯広では、意外にも降雪量は比較的少なく、同じく太平洋岸の苫小牧などや、そして北海道では温暖な気候の函館界隈も雪はあまり多くはありません。
それでも、釧路などでは雪が少ないにもかかわらず、あまりの寒さに積もった雪がすぐに氷のように固くなってしまうので、降雪は少ないながらもすばやく雪かきをしなければなりません。
北海道では雪は多くても少なくても、その地域ならではの雪かきの大変さがあるようです。
それでは、降雪多めの札幌の雪かき事情をご紹介します。

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雪置き場でコミュニケーション

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雪国の必需品、ママさんダンプ(スノーダンプ)

昨シーズン(2020-2021)は降雪がかなり少なかったため、2022年冬は例年以上の大雪に一層驚きを感じる雪の多さですが、近年は地球温暖化の影響もあり、降雪量は比較的少なめで推移していました。
「今年は、さっぽろ雪まつりに使うきれいな雪は足りるのかな」
という言葉が毎年1月半ばくらいから市民の間でしばしば交わされていましたが、それでも自宅前や駐車スペース、ときには自宅前付近の道路の雪かきは毎年必須です。
さらには、出勤後に勤務先の雪かきが必要な方もいるので、雪が降った朝は、あちこちで雪かきをする光景が見られます。
自宅前の雪かき(除雪)は、出勤や通学に間に合うよう、基本的に自分でやる家庭がほとんどです。
各家庭では、「早朝から誰が雪かきをするか」で攻防が繰り広げられることも。

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大雪で大活躍の小型除雪機 / Source: photoAC

北海道では普及している小型除雪機。ときにはご近所さんの除雪や歩道の除雪をボランティアでやってくれる親切な方もいらっしゃいます。
また、駐車場の隣りのスペースやご近所さんの玄関先など、余裕があれば「お互いさま」の気持ちで雪かきをし合ったりすることもあります。
最近では有料サービスや地域によってはボランティア制度があり、雪かきができない方はお願いしてやってもらうこともあります。
敷地が広かったり、雪置き場がある場合、小型除雪機を持っている一般家庭も珍しくはありません。
また、管理人さんがいるマンションでは、管理人さんが雪かきをしてくれるところもあります。

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札幌の家庭によくある雪かきグッズいろいろ

たいていの家では、玄関の前の通路や駐車場・車庫前などをメインに必要なスペースを雪かきし、かいた雪は敷地内の隅などにスペースをみつけて(作って)積みあげていきます。
札幌では、町内会などの団体が札幌市と覚書を交わして認められた特定の公園を"雪置き場"としており、近隣に住む人が自宅の敷地内ではいよいよ置ききれなくなった雪をスノーダンプやボブスレーで指定の公園内にせっせと運びます。

・遊具や植木の周りには雪を置かないように
・重機での雪入れは禁止

などの決まりごとがいくつかありますが、雪置き場があるおかげで、家の前の通路が雪で埋まることなく冬を過ごせます。

そして面白いのは、大雪の朝。
めったに会う機会がないご近所さんとも、雪かきでは必ずといってよいほど顔を合わせます。
「とうとう降りましたね」とか、
「今年は多いですね」などがそういった場合のあいさつの常套句になります。
気づけば、冬の雪置き場は、ある意味ご近所さんとのコミュニケーションの場にもなっています。

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冬のヒーロー、除雪車&排雪トラック

12月後半頃から始まる雪かきシーズンも1月下旬から2月上旬になると、道路わきの雪はいよいよ限界を超える量になってきます。
この時期は、住宅街の道路ともなると、歩道はとうの前に雪で埋もれ、場合によっては車道さえ車が1台しか通れない道幅になることも(北海道では通常住宅街でも道路は2台が行き交える幅です)。
大雪の今シーズンは、幹線道路さえ早々に片側一車線程度の道幅になっている場所がありました。
そうなると、市民が各自こまめに雪かきをする程度ではすまない状況です。
そんなとき、頼りになるのが「ロータリー除雪車」!

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冬のヒーロー「ロータリー除雪車」

大雪が降ると、市が派遣する除雪車(タイヤショベル)が道路の除雪をしてくれます。
除雪時には雪を道路の脇に寄せ、それが積みあがっていくので、2月ともなれば、道路わきの雪は大人の背丈以上になっているところも少なくありません。

そんな道路の脇の雪山を一掃してくれるのが「ロータリー除雪車」。道路の雪幅を広げつつ、排雪運搬トラックに雪を積み込む作業をしてくれます。
ロータリー除雪車による排雪は、札幌市の「パートナーシップ排雪制度」を利用しておこなっています。

幹線道路は市で排雪作業をおこないますが、市がおこなわない道幅が狭い道路は、町内会などのグループ単位で市に申し込むと除排雪費用を一部負担してもらえる制度です。
ワンシーズンに1度利用できる制度で、これを利用するため、地域住民の多くは町内会費とは別に毎シーズン「除雪費」を町内会に納めます。
(個人的に自宅の雪の排雪サービスを利用する世帯もあります。)

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最近は、町内会に入会しない世帯もありますが、冬の住宅街の道路除排雪は緊急車両が通る場合などを含めとても重要なので、一市民としては、より多くの住民の方に除雪費に協力してもらいたいとつい思ってしまいます。
そして空き地や雪置き場、道路が雪に占領され、街が雪に埋もれるなか、さっそうと現れる"除排雪チーム"。

タイヤショベル、ロータリー除雪車、排雪運搬トラック、交通警備スタッフが一丸となり、ときには作業付近を通行する人や車、自宅から出ようとする人や車にも気を配りつつ手際よく作業をしていく光景は、小さな感動すら覚えます。

何日もかけて町内一帯の雪を一掃してくれるのですが、近隣住民は毎年この数日を待ちわび、そしてとてもありがたく思っているのです。
みるみるうちに道幅を広げてくれるロータリー除雪車と除雪車チームは、まさに雪国のヒーローです。
※市内各所で一掃された雪はトラックで指定の雪捨て場に集められますが、今シーズンはすでに巨大な雪捨て場がいっぱいだそう。

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高速道路での除排雪 / On the highway in Hokkaido

今シーズン、北海道全域で道路や電車など交通網が大雪でダウンしてしまいましたが、ロータリー除雪車は日ごろから高速道路でも活躍しています。

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真夜中の幹線道路除排雪作業 / Source: photoAC

雪が降った時のタイヤショベルによる除雪は、人や車が少なくなった夜遅くにおこないますが、幹線道路の大掛かりな除排雪も交通量が少ない真夜中に行っています。
とりわけ大型の除雪車や排雪運搬トラックが何台も集まって作業する様子は壮観です。

日々の除雪を夜中におこなってくれる除雪車をはじめ、冬の除排雪にかかわる方々は、市民生活の生命線といっても過言ではない作業をされており、恐らく札幌市民のみならず、道民みんなが救世主として感謝していると思います。
2月に除排雪作業をおこなったあとも再び大雪になることが多く、市民の雪かき生活は本格的な雪解けを迎える3月頃まで続きます。

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それでも止められない、楽しい(?)雪国暮らし

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Sunshine through the snow clouds in the changeable weather in winter of Hokkaido

毎年、いつ雪がどっさりと降るかわからない、つまりいつ雪かきに時間をとられるかわからない生活をしばしばうんざりしながらも、雪がある生活をそう苦にならずに続けていられるのは、雪雲の合間に一瞬垣間見える太陽の光線や、音もなくしんしんと降る雪の光景は何度見ても同じものはなく、毎回とても美しいからだと思うのです。

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Red rowan berries in the heavy snow in Hokkaido

なので、冬の北海道旅は、ともすれば雪のために足止めされることもあるかもしれませんが、きっと忘れられない光景にも出会える旅です。
コロナ禍が落ち着いたら、ぜひ冬の旅にも北海道を訪れてみてください。
そして、美しい雪景色の傍らにある北国の生活にもちょっぴり思いを馳せてみてください。

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参考サイト

筆者

北海道特派員

市之宮 直子

小樽生まれ、江別育ち、札幌在住のフォトライター。三度の飯より北海道を撮ることが好きな道産子北海道Loverです。

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