包丁と文化

公開日 : 2011年09月12日
最終更新 :
筆者 : monalisita

いろんな国を旅し、そこで生活すると様々な点で文化の違いを感じるが、包丁とその使い方の違いから文化研究をしたら、意外と面白いかもしれない。

今回は、台所での調理方法、特に包丁にスポットを当てたい。日本で常識と思っている調理の概念は、他の国では当てはまらない。例えば、バングラデシュでは、包丁というか刃が上を向いた鎌のようなものを床において、野菜や肉を動かして切る風習が見られる。鶏一羽も、このごっつい包丁できれいに解体(?)される。カンボジアでは、果物や野菜の皮を剥くときなどは、自分の方(親指の方)ではなく、向こう側に包丁を動かして切る。聞くと、「自分の方に向けたら自分の親指を切ってしまうじゃない!」と。私からすれば、「親指を当てないと力加減を調節するのが難しいし、そもそも他人を切る方がイヤよ」。どちらも慣れないと難しい。

ところかわって、カリブの国ハイチではどうか。ドミニカ共和国に住み始めて以来、ハイチ人のメイドを何人か使ってきたが、その全員が基本的にまな板を使わない。はじめは、その個人の特徴だと思っていたけど、どうやら文化としてまな板を使わないようだ。では、どうやって切るのか。そう、全て両手だけを使って切る。これが意外と上手。たまねぎのみじん切りも、日本人が豆腐を手の上で切るように、縦横に切れ目を入れて上手に切る。だから、使う包丁は果物ナイフのような小ぶりのもの。

骨付きの肉や堅い野菜などはどうするのか、と疑問に思うかもしれないが、ここで文化の違いがまた見えてくる。ハイチ料理は、私に言わせればいわゆる離乳食のよう。つまり、全てが柔らかく、歯を使わずにも食べられるほど、野菜も豆も煮詰める。茹でるときは、野菜は豪快にまるごと鍋に入れる。で、茹って柔らかくなってから切るのが、ハイチ人の調理の順番のようだ。だから、まな板を使わずに手だけでも切れるのだ。特に指示をせずに茹で野菜を作ってもらうと、舌でつぶせるくらいの柔らかさ。あまりに、柔らかすぎるので「もっと、茹で時間を短くして」と頼んでいる。切らずに、つぶすこともある。ナスやキャベツ、冬瓜、人参などいろんな野菜を茹で上がった後につぶし、調理した肉と混ぜて作る「レグーン」というハイチ料理、黒豆スープと一緒にご飯にかけると結構おいしい。ただ、離乳食のように柔らかいので、こんなものばかり食べていると、あごが発達しないのではと余計な心配をしてしまう。

その他、私が気になるのは、ガスの消費量。メイドが調理するものの、ガス代は私が支払うのだから、彼女たちが2‐3時間もずっとガスコンロを使っているのを見ると、気が気でない。はっきり言って、日本人の調理法はエネルギー節約型。ハイチ人はきっとこの点は気にしていない。豆を煮込むにも、前日から水につけてふやかしてから茹でる日本文化に対し、ハイチでは乾燥した硬い豆をそのまま煮込む。だから、コンロの上でグツグツと数時間かけて調理する必要がある。こんなんだから、ガス代を節約するためにも、先日圧力鍋を買ったさ。

そのほか、びっくりするのは、包丁の使用目的。普通包丁って言ったら調理道具でしかないけど、こっちの人は「切る」ことは何でも包丁。ダンボール箱の荷物を開けるのも、はたまた草木を切るのも調理用の包丁(ナイフ)を使おうとする。そんなときは、すかさず「ちょっと待った~!」をかけないと、包丁がすぐにボロボロになるのは言うまでもない。

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