コロナ禍で注目される自然のスポット「ローマ水道橋公園」

公開日 : 2022年02月28日
最終更新 :

コロナ禍の今、ローマでは、都会の喧騒を抜け出して自然や緑の中でリラックスできるスポットがとても流行っています。筆者の友人の何人かは、コロナウイルスの影響で、仕事が自宅でも行えるテレワーク様式になったため、ローマの家を引き払って田舎に完全に移住をしてしまいました。全ての人が引っ越しをすることはできないため、都会(ローマ)から簡単に行けるスポットや、市内の大規模緑地、公園などが再び注目を集め始めています。

その中のひとつに、ローマの中心部より少し離れたところにある水道橋公園(パルコ・デッリ・アックエドッティ Parco degli Acquedotti)があります。

水道橋公園は、その名の通り水道橋達の公園で、古代のローマ水道の遺跡をたくさん見ることができます。ローマ水道とは、紀元前312年~3世紀前半にかけてローマで住民においしい水を運ぶために建設された水道です。

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↑ こちらがローマ水道のひとつ「クラウディア水道」です。美しい形の水道橋を体いっぱいに感じながら、ジョギングをすることもできます。この近くの地域には、羊の群れがたまにいることもあり、田舎の景色が広がり、とても郊外に来てしまったのかと思って焦ってしまいますが、実はまだローマの地下鉄A線の運行区間内にあります。

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↑ こちらは、ラツィオ州が発行する州立公園について市民に知ってもらうための地図です。水道橋公園は、アッピア街道州立公園(Parco Regionale dell'Appia Antica)というローマ市内にある大きな公園の一部の名称です。水道橋公園内には、古代のローマ水道11本のうち6本が公園内を通過しています。ずっとあとの16世紀に、ローマ教皇シクストゥス5世が建設したフェリクス水道を加えれば、なんと水道橋は7本もあります。まさに水道橋たちの楽園なのです。

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↑ ローマ水道は、全部で11本建設されました。古代ローマ人はコンクリートを発明したことでも有名で、非常に高度な建築技術を持っていました。それらは帝国内の領土のあちらこちらに建てた橋や水道橋などに存分に活かされ、今日でも遺跡として見ることができます。

驚くことに、11本の中のひとつ、ヴィルゴ水道は2000年近く経った今でも使えています。

地図上で赤い線が、クラウディア水道が建設されたルートです。クラウディア水道は、ローマ帝国の第3代皇帝カリグラが38年に着手し、52年に第4代皇帝クラウディウスが完成させた水道で、全長69kmあります。

古代といえども、約14年で完成するとはまったくたまげたものです。アニエーネ川の高い谷部分から、きれいな水を一生懸命に引いて来ました。

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↑ 一年中、散歩をしたりピクニックをしたりする人がたくさんいる公園です。

水道橋公園にあるローマ水道の中で、最も美しい形で見ることができるクラウディア水道(ラテン語:Aqua Claudia)への行き方をご紹介したいと思います。最も早くて簡単に行けるルートをご紹介します。

水道橋公園への行き方は簡単です。

ローマの地下鉄A線のスバウグスタ駅(Subaugusta)で下車し、公園のある方向へ真っ直ぐ歩くと、徒歩約10分で水道橋公園の入口に着きます。

この地下鉄のスバウグスタ駅では、"Via T.Labieno(ティート・ラビエーノ通り)"と書いてある地上出口から出ます。出口を上がるとバールが真右(道の角)にあるのが目印です。そのまま地下鉄の出口を背にして、ひたすら道の突き当りまで歩くと、そこはもう公園内へ入る入口です。

水道橋公園近くまでは、バスの557番、451番、503番、552番、558番、559番、590番、650番、654番なども行きますが、イタリアのバスは車内アナウンスが一切ないため、降車しなければいけない停留所を知るのが難しいかと思います。一番簡単なのは、地下鉄A線のスバウグスタ駅で降りて、10分間歩く方法です。

公園内に入ると、左側に子供達が遊ぶ遊具や、右側にサッカーをするスペースがある広場があり、コンクリートの小さな土手がありますが、土手を越える小さな階段が付いているのでそれを利用してさらに進みます。マリアーナ(もしくはマラーナ Acqua Mariana、もしくはAcqua Marana)という人口の小川も橋を渡って越えます。

小川(マリアーナ水道)を越えるとすぐに、きちんとした道が出てきます。

この時点で右斜め前方向に、もういくつかの水道橋の残骸が見え始め、興奮されるかと思いますが、この道を右ではなく、左の方向に進みます。

少し行くと、左側に建物(カサーレ・ディ・ローマ・ヴェッキアという13世紀に建てられた塔の家 Casale di Roma Vecchia)が見えてきます。この建物を通り過ぎて道なりに右方向に曲がると、迫力あるクラウディア水道が見えてきます。

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↑ 同じくクラウディア水道です。美しい水道は、誰でもお写真がきれいに撮れます。

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↑ 手前の左側に見えるかわいい青紫色のお花は、ハーブのボリジです。イタリアではこのように道端に普通に生えています。遠くに並んで見える樹木は、ローマのシンボルともいえる松の木です。傘を開いたような樹形をしているので、イタリアカサマツ(学名:Pinus pinea L.)といいます。日本では、幼苗の銀葉が美しいので、クリスマスの時期にお花屋さんで"ミニクリスマスツリー"として鉢植えで売られていることがあります。しかし一回地植えをしてしまったらもう最後です。とんでもない大きさになるお化けのようなマツなのです。成長すると8階建ての建物くらいにもなります。松ぼっくりもとても大きく、新生児の頭の大きさくらいはあり、落ちてくると凶器になりかねませんので、風の強い日はチルコ・マッシモなど、カサマツが大量に植わっているすぐ下は歩かないようにしているくらいです。

ローマは、冬は温暖な典型的な地中海気候です。イタリアカサマツは、耐寒性があまりないため、日本では地植えにせずに鉢植えにして育てるとよいかもしれません。このカサマツが本気を出してくると、本当に信じられない高さになりますので、その意味でも地植えにしない方が安全かと思われます。

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↑ 壊れた水道橋がぽつぽつと残っています。まるで古代の夢の跡のよう。昔のローマの栄華を感じさせる物悲しい遺構です。水道橋公園は、昼間はとてもすてきな場所ですが、日が暮れる頃にはだんだんと人影も少なくなるので遅い時間の訪問は避けた方がよいかと思います。家族連れが多い土曜日、日曜日は、たくさんの人がいます。初めての方は、これらの日の昼間に訪れると、より安心して楽しめるかと思います。

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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