京王線事件 海外在住者が電車で気をつけていること

公開日 : 2021年11月10日
最終更新 :

2021年10月31日に、東京都調布市を走行中の京王電鉄京王線車内で、ジョーカーの姿をした男が乗客を刃物で切りつけ、車内に火を放つなどした事件がありました。この京王線刺傷事件で18名が重軽傷を負いました。その2ヵ月前にも、走行中の小田急電鉄小田急線車内で、無差別刺傷事件が起きていました。

事件の少しあとに、京王線の車内がオレンジ色の炎に包まれ燃えている中を、こちらに次々に逃げてくる人々を撮影した動画がTwitterで流れてきました。車内を逃げる映像を見てとても怖くなったのですが、それは1回見ただけでほとんど気分が悪くなるほどで、なぜこんなに怖いのだろう?と思っていました。

年数が経ち、日々の生活の中ですっかり忘れていましたが、筆者も2006年10月17日に起きた死傷者も多く出たローマ地下鉄衝突事故で衝突された車両に乗っていて、こんなふうに逃げたことがあったのでした。京王線の映像を見た後に、後続列車から追突された時のパーンという音と、不思議な列車の揺れと、すぐに立ちこめた白い煙の匂いをゆっくりと思い出して行きました。フラッシュバックはあるものなのですね。

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↑ ローマのトラム(路面電車)です。ヘビちゃんのような緑色の長い車体でくねくねと走ります。写真奥に見えるのは、ローマの四大聖堂のひとつ、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂です。

参考記事:ローマ特派員ブログにて、筆者がサン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂について寄稿したものは多数ありますので、代表してひとつのみこちらに貼りつけます。

2014年12月7日号 有名観光スポットの夜の顔。大聖堂編(サン・ピエトロ大聖堂、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂)https://tokuhain.arukikata.co.jp/rome/2014/12/post_271.html

日本で相次ぐ列車内での犯行ですが、おそらく海外に住んでいる人は無意識のうちに危機管理に関することをやっていると思うのですが、対策方法はどういったものがあるでしょうか?

本日は、ローマの地下鉄衝突事故の際に経験したことも含めて、公共交通機関を利用する際の防衛策などをお届けしたい思います。ローマの地下鉄衝突事故については、また後日、こちらの特派員ブログにてお届けしたいと思います。

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↑ ローマの地下鉄C線の車内です。乗客が少ない時間帯は、これはこれで逆に怖いです。

筆者(イタリア在住者)が公共交通機関の中で普段から気をつけていること

-バス、地下鉄、電車に乗る時はイヤフォンをしない

-バス、地下鉄、電車の駅に入ったらイヤフォンをしない(これは暴漢よりもスり、ひったくりを防止する目的。ローマの場合は、ぼったくりタクシーも多くいるため、タクシーも同じようにし、乗車中は目を皿のようにして運転手の動きに注視します)

-公共交通機関の中で寝ない(寝るフリもしない)

-常に走れる靴を履く(ローマは石畳が多いので、ハイヒールなどは治安上の意味でなくても踵が折れやすいので普段から危険なタイプの靴)

-荷物は少なめで外出(荷物は軽く少ないほど逃げられます。今、巷ではどんなバッグが流行っているのか、令和の時代はどんな服装をすれば安全なのかは、最近の世界のファッションの流行もあわせて、後日こちらの特派員ブログにてお届けします)

-日頃から体を鍛えておく。全速力で走れるような、しなやかなですてきな身体づくり。ある程度筋肉をつけておく(暴漢に抵抗でき殴り倒すまでの必要はないですが、男女ともガリガリに痩せ細っているよりは、筋肉があった方が、いざという時に頑張れるパワーが出ます!体験済み)

-自分の近くに人を寄せつけない。ヒラメみたいな目で半径180度くらい見る(赤の他人と行動を共にする時は、常に視野を広く持つように)

-変な液体、煙などの周囲の臭いも気をつける(バス、地下鉄、電車は密室だということを忘れてはならない。筆者は、床に何か液体が流れている時や、変な匂いがする時は決して乗車しません)

-爆発物があるのでゴミ箱の近くは通らない(欧州および中東で爆弾テロが続いたため、一時期、ローマもとても注意を促されていました。現在でもゴミ箱があると5メートルくらい急に離れて通るため、怪しいタイプの人になっているかと思います→筆者)

-救命救急講習を受けておく(どこから流血しても即座に所持品を使って止血できるように。ハンカチ、タオルがなくても、靴紐を使って止められます。心臓マッサージ、人工呼吸などの練習)

-何かあった時に素早く動けるような体作り(相手がナイフを取り出して近づいてきたら、すぐにバッグやリュック、新聞、傘などを盾にして心臓、腹部を防御。何もなければ鍵の束、携帯電話でも防衛することができます)

-スマホに集中し過ぎない(とにかく公共交通機関で無防備な状態を作らない)

-五感を鍛える(匂いに敏感に反応できるようにしているため、バスのエンジンから出火した車両火災を事前に回避したこともあります)

-地下鉄、列車は一番前と最後尾の車両には乗らない。路線バスの場合は、一番後ろの席に座らない

-座席はなるべくドアの近くがよろしい(大変なことが起き車内でパニックが発生した時にも、周囲の人の動きに影響されずすぐに逃げられます。体験済み)

-路線バスで初めて乗るような路線で夜(外が暗くなってから)に乗車する場合は、なるべく運転手さんの近くの席を選ぶ。余裕があれば、バスに乗車するときに運転手さんとおしゃべりをしておくと安全(このバスは〇〇へ行きますか?などのたわいもないお話でも大丈夫です。何かあった時のために、運転手さん、周りの人の記憶に残ることが大切です)

-日頃から心の声に耳を傾ける。何かおかしい、違和感があると思ったらその思いに従う(ローマの地下鉄の衝突事故の時に聞かれた話ですが、人によっては第六感のようなもので「今日は会社行きたくないな~!」「何か胸騒ぎがする」と事前に感じた人もいたようです。筆者も、あの朝に限ってホームのいつも待つ位置でないドアから入りました。結果、事故が起きた時に、ドアが改札へ上がる階段のぴったり真ん前に来たため、すぐに階段を駆け上がり逃げることができました。地上部へ出た一等最初のグループの、5人くらいの中にいたと思います)

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↑ イタリアの高速列車「イタロ」の車内です。新幹線は次の停車駅までの距離が長いことから、車内で何かが発生したときにすぐに止まることができません。いつもドアに一番近い席か通路側の席を選んでいます。飛行機の場合も同じです。

昔の1993年頃、妻殺しの罪を着せられたハリソン・フォード扮する医師が、警察に追われながら真犯人を見つけ出すという映画『逃亡者』がありました。あの映画を見た時に、「う~ん、これからは何かあった時のために、女性でも逃げられるようにいつでも鍛えておかないとな!」とハリソン・フォードの逃げっぷりに感銘するとともに、まだ若かった筆者は身が引き締まる思いだったのですが、それから長い時間が経ち、自己研鑽はさぼり気味になっていました。

事件、事故というものは、突然で本当にパニックになります。中年となった今、私もまた鍛え直し、気をつけて行動したいと思います。

それでは、また次回にお会いしましょう!

筆者

イタリア特派員

阿部 美寿穂

ローマからイタリアの日常やイタリア旅行に役立つ情報などをお送りしています。

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