赤土の大地で日本人が手掛けるコーヒー豆!東山農場の楽しい見学

公開日 : 2014年06月11日
最終更新 :

前回お伝えした『ハルとナツ』の撮影地である東山(とうざん)農場では、コーヒー畑の見学もできます(そもそもこちらがメイン)!

畑を見るだけじゃありません。ガイドさんが付いてくれ、コーヒーの栽培と収穫作業についてあらゆる説明をしてもらえます。

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コーヒーの木は雨期が始まる9~11月に通常3~4回花を咲かせるそうで、そのため一つの木に未熟な緑の実と熟した赤い実、そして完熟を通り越し、枝で乾燥した茶色い実とが同時についているという状況になるのだそうです。

開花時は無数の白い小さな花が枝を覆い、ジャスミンに似た芳香を放つのだとか。今度はコーヒーの花、見たいです!

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この実の真ん中にコーヒー豆となる種子が入っているわけですが、皮と種子の間にはうっすら果肉があり、甘いのです。食べるところは少ないですが、コーヒーは果実、フルーツなんだということを実感しました。他のフルーツと同じで昼夜の寒暖差が大きいとコーヒーの果肉は甘くなり、甘い実は種まで甘いとのこと。焙煎しても甘味のあるコーヒー豆になるそうです。

東山農場の標高は600~700m。昼夜の寒暖差が大きい土地なので甘味のあるコーヒー豆が収穫できます。

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摘み取りは機械が導入されていますが、手摘みが必要な場所もたくさんあります。手摘みした豆は今でも写真のようにふるいにかけ、果実と葉などとを分ける作業をしています。

私も体験させてもらいましたが、重くてたいしてふるうことができないですし、果実だけを分けるなんていうことはとてもできそうにありませんでした。手本を見せてくれた写真のおじさんは東山農場で働いているハイモンドさん。9歳の時から55年間もこの作業をしている大ベテランです。

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こちらはコーヒー豆を大きさごとに分ける旧式の選別機。1950年代のブラジル製の機械で現在は使われてはいませんが、新しいものでも原理は同じだそうです。収穫後に水で洗い、選別。天日干しの後、大型の乾燥機でも乾燥させます。

コーヒーがブラジルに来た歴史

コーヒーがどのように世界に広まり、どのようにブラジルに入ってきたのかも、わかりやすく説明してもらいました。

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エチオピアの羊飼いが見つけた、コーヒー豆が眠気覚ましとしてイスラム圏で広まり、その後ヨーロッパでも嗜好品として愛されるようになりました。当時貴重であったコーヒーの苗木は持ち出し禁止でしたが、それでもヨーロッパ各国はなんとか苗木を手に入れ、それぞれの植民地でコーヒー栽培を試みました。そしてやがてブラジルにも。1727年、アマゾン河口の町ベレンからこっそりとコーヒーの苗木はブラジルに入りました。

これにはちょっとした恋のエピソードがあって...。

「コーヒーの苗木を手に入れろ」という命を受け、ブラジル人の青年将校がコーヒー栽培が盛んだったフランス領ギアナに派遣されました。すると滞在中、彼はギアナの総督夫人と恋に落ちてしまいます。しかし目的の苗木は手に入らないまま、ついにブラジルへ戻ろうというお別れの時、総督夫人から花束が贈られました。それはコーヒーの苗木をしのばせた花束だったということです。この苗木が後にブラジルを世界一のコーヒー生産国に導いたわけですね。

このような「へぇ~」というお話を楽しく聞かせてもらいつつ見学は続きます。

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写真は今年植えられたばかりの苗木。隣に植えられているのは風や直射日光から苗木を守るためのトウモロコシです。

土の赤さもお気づきでしょうか。この辺りは養分の多い赤土が特長です。

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経営者は日本人

ブラジル北東部のベレンから入ったコーヒーの苗木ですが、気候や土地の条件が合わず、大量生産にまでいたりませんでした。コーヒー栽培は最適地を求めて南下していきます。しばらくして現在東山農場のあるサンパウロ州カンピーナスでもコーヒー栽培が始まりました。

カンピーナスでコーヒー栽培が盛んになった頃にこの農場を買ったのが岩崎久彌氏。三菱創始者の岩崎彌太郎氏の長男です。こうして日本人によるコーヒー農場の経営が始まりました。1927年のことです。

社名の「東山(とうざん)」というのは岩崎彌太郎氏の雅号。「1891年に創設された小岩井農場を始め、普通の会社ではリスクも大きく、時間もかかる農林畜産業を通じて、社会貢献をする為の私的な活動として東山事業を立ち上げた」そうです。

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写真は岩崎家がこの農場を買う前から、代々の農場主が住んできた邸宅。今は現経営者の岩﨑透さんがこちらにお住まいです。

当時岩崎家はブラジルだけでなく韓国や台湾、マレーシア、インドネシアに農地を買い、農林畜産事業を行っていましたが、第二次世界大戦敗戦によりすべて没収されてしまい、現在残っているのはここブラジルの東山農場と岩手の小岩井農場だけだそうです。

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農園に奴隷がいた頃

岩崎家が購入する前、この農場にはたくさんの奴隷が働いていました。ブラジルの奴隷解放は1888年で、それまではどこの農場にも黒人奴隷がいたのです。

奴隷解放を受け、労働力に困った農園主は移民を募集します。日本人より先にイタリア人などの移民が入っていました。下の写真は元奴隷小屋ですが、移民を住まわせるために改装したものです。

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奴隷小屋として使われていた時はこの細長い建物に、たった1つの入口と小さな窓が2つあるだけだったそうですが、岩崎家の前のオーナーが移民を住まわせるために入口と窓を増やしたようです。

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奴隷小屋の内部ですが、これも移民が家族ごとに暮らせるように改装された後。奴隷が住んでいた頃は一切の仕切りもなく百数十人が詰め込まれており、しかも鎖につながれていたということです。これはドラマのセットではありません...。

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この小屋の屋根の瓦は、奴隷の太ももで形作ったものだそうです。脱走しようとした奴隷はアキレス腱を切られ、重労働ができなくなった奴隷がこの瓦造りをさせられていたとか。

おどろおどろしい話ですが、ブラジルのコーヒーと奴隷の話は切っても切れない関係であり、コーヒーなくしてブラジルの発展もなく...。

遠足気分で訪れた農場ですが、実はブラジルのかなりコアな部分を見学しているわけです。

コーヒー園を見渡す展望台へ

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さあ、最後は農場内の展望台へ。800ヘクタールの敷地のうち300ヘクタールに135万本のアラビカ種のコーヒーを栽培しています。収穫された豆の中から高品質の豆だけを日本やヨーロッパなどに輸出。それが全体の3割に当たるそうです。残りはブラジル国内で消費されます。

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もちろん、産地直販の豆、農場内の売店で買ってきました。苦味も酸味もマイルドで香りのいいコーヒーでしたよ。ブラジルのコーヒー豆は癖がなく、ブレンドのベースとして重宝されています。ここの豆たちも日本やヨーロッパ等に輸出された後はおそらくブレンドされてしまいます。

ブラジル国内向けのコーヒー豆も農協に卸され、他の農場の豆とも混ぜられて販売されます。ですからこうやって、東山農場だけのコーヒー豆を買えるのは、現在のところ農場内だけなのです。

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東山農場の姉妹会社が製造する「東麒麟」という日本酒があって、ブラジルでは有名なのですが、農場内の売店の冷蔵庫には「生」があったので、そちらも購入。

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そしてコーヒー豆を入れる麻袋も!実はとても欲しかったのです。ブラジルだからどこにでもあるのかと思っていたのですが、今まで売っているのを見たことがありませんでした。

収穫や花が見られる時期

毎年5~9月頃の間で、通常は約3か月間がコーヒーの収穫期。この期間は収穫や乾燥の様子が見られると思います。9~11月は一面にコーヒーの花が見られるかもしれませんね。コーヒー好きの方、『ハルとナツ』を見て感動された方はぜひ訪れてみてください。

見学は予約制です。

見学料は平日が大人1名R$ 66,00、5~12歳R$33,00、5歳以下無料。

土日および祝祭日が大人1名R$ 76,00、5~12歳R$38,00、5歳以下無料。

ただし、最低料金が大人8名分になりますので、大人数で見学された方がお得です!

見学料とは別にガイド料金が必要。日本語ガイドR$250,00、英語ガイドR$220,00で、グループのトータル料金に加算されます。

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■東山(とうざん)農場

Tel. ( 019) 3257-2269

E-mai ; osamu@tozan.com.br

Rod. Dr. Gov. Ademar Pereira de Barros, km 121,5 - Campinas - SP

見学部担当者: 新垣 修(あらかき おさむ)さん

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