ノートルダム大聖堂前の遺跡「クリプト」がリニューアル、パリとシテ島の歴史を地下で探索

公開日 : 2020年09月13日
最終更新 :
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パリの人気スポットであるノートルダム大聖堂。セーヌ川の中洲シテ島に建つフランスのシンボルです。火災の修復工事で現在は堂内に入ることはできませんが、大聖堂が立つ広場にある遺跡スポット「クリプト」は見学できます。クリプトとは広場の地下に広がる遺跡で、ここでは古代から中世そして20世紀までのシテ島と、パリの歴史を知ることができます。

クリプトは1965年〜1972年の発掘で発見され、1980年に整備されました。シテ島における都市と建築の発展の変遷を、遺構の周辺を歩きながら時間旅行できる場所であり、2000年以上にわたり変化し続けてきた、各時代における都市の歴史の重なりが、ここに残ります。そのクリプトが、2020年9月9日にリニューアルオープンし、特別展「ノートルダム・ド・パリ ビクトル・ユゴーからウジェーヌ・ヴィオレ・ル・デュク」が始まったので、行ってきました。

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特別展「ノートルダム・ド・パリ」

クリプト内では、シテ島およびパリの成り立ちを解説するとともに、ビクトル・ユゴーとウジェーヌ・ヴィオレ・ル・デュクというノートルダム大聖堂に関係する人物に、よりフォーカスした展示が加わっています。ユゴーは小説家、そしてヴィオレ・ル・デュクは建築家、この両者の共通点は「ノートルダム大聖堂の修復」です。

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▲ユゴーの似顔絵(右)

フランス革命などを経た当時のノートルダム大聖堂は荒廃しており、大聖堂を復興しようという動きがありました。危機を訴えたユゴーは小説『ノートルダム・ド・パリ』を著し、大聖堂は再び注目を集めることとなりました。そして国による修復決定に寄与したのです。

ヴィオレ・ル・デュクは、その修復計画のコンペに採用された建築家です。ヴィオレ・ル・デュクの計画案により大聖堂に、2019年に焼け落ちた尖塔が建てられました。

シテ島とパリの歴史

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パリの歴史はシテ島から始まっています。つまりシテ島の歴史は、パリそのものの歴史であると言えます。そこで、ここで少しだけシテ島について、クリプトのウェブサイトを参考に加えつつ、説明をしたいと思います。

パリは、ガロ・ロマン期にルテチアと呼ばれ、元はシテ島に古代ケルト人の一部族であるパリジイ人が住んでいました。そのあとカエサル率いるローマ軍に征服されパリは植民都市へ。またゲルマン人の進攻に防衛するため、シテ島はローマ人により戦略的な場所として要塞化されていきました。

5世紀末には、ルテチアと呼ばれていた町の名前がパリに。そしてフランク王国の首都となり、また987年にユーグ・カペーがカペー朝を興すとフランス王国の首都になり、現在へつながっています。

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▲ジオラマで作られたクリプト全体図

中世になると、1163年に建設が開始されたノートルダム大聖堂を中心に、シテ島はさらに発展しました。新しい通りである、ヌーヴ・ノートルダム通りが大聖堂前から伸び、大聖堂広場の南に病院・オテルデューの再建や、その他建物・教会の建設が進みました。

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18世紀になると、交通の便とシテ島の衛生状態を改善するために、中世に建てられた多くの建築物が破壊されました。広場は拡張され、ヌーヴノートルダム通りも広がりました。そして19世紀、パリ県知事オスマンにより大規模な都市再開発「パリ改造」が出されると、多くの古い建物や通りが壊されました。この時期に、大聖堂前広場の横にある現在のオテルデューや兵舎(いまのパリ警視庁)は建てられています。

ノートルダム大聖堂前の広場は広い正方形をしていますが、これら歴史の変遷を経て現在に至っているのです。

クリプトの予約と入場方法

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予約は公式ウェブサイトのリンクからオンラインでできます。11歳以上は、マスク着用の義務があります。

・住所: 7 place Jean-Paul II Parvis Notre-Dame 75004 Paris

・営業時間: 10:00〜18:00

・休日: 月曜、1月1日、5月1日

・料金: €9

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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