夏ワーク報告:スモーキーマウンテン

公開日 : 2016年12月07日
最終更新 :

現地フィリピンへと足を運び、東京では出会えない、自然に満ちた村で、子どもたちと触れ合い、小学校教室の建設に汗を流す。一緒に授業をしたり、少しでも時間があれば、また子どもと遊ぶ。ホームステイ先では家族との団欒を楽しみ、また次の朝を迎える。思い返すと、これらの思い出は、私に、「あぁ、フィリピンはいいところだった。」と言わしめる。

しかし、我々は、確実に、自分たちの力ではどうしようもないと分かりつつも、それをすっかり無かったことにしてフィリピンを語ることはできない光景を目の当たりにした。

ごみの山、スモーキー・マウンテンである。

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スモーキー・マウンテンと言う名前は、見上げるほど積み上がったごみの山の中、ごみ同士が化学反応し、自然発火を起こして出る煙から来た名前だそう。

正直、私はフィリピンに行くことが決まるまで、つまり、この団体に入るまで、フィリピンでごみ明代が社会問題になっていることは全く知らなかった。実際にごみの埋め立て地に近づくにつれ、鼻を突くような異臭がする。私は、マスクや、鼻を覆うタオルを持ってこなかったことを後悔した。聞こえは悪かったかもしれないが、これが現実だった。ハエがたかった果物の食べかす、靴、色んな色のビニール、分かるのはそれくらいで、ごみ山の上の方は、いったい何が捨てられているのかもわからない。そんな中を、幼い子供たちが歩き、山の上をクレーン車が行く。

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日本ではまず見ない光景。なぜこのようにごみの山ができてしまったのか。フィリピンでは、そもそも、大気汚染防止の観点から、ごみの焼却処分は一定の排気ガスの基準を満たす場合以外は禁止されている。ごみを燃やすことで発生するとされる有害なガスなどは、高温処理することで、その量を軽減できるとされているが、その設備、施設を整えるにはかなりの費用が掛かる。だから焼却処分への転換を見合わせている東南アジアの国は少なくないのだ。

しかし理由はこれだけではない。このスモーキー・マウンテンと呼ばれるごみの埋め立て処理場には「ウェイスト・ピッカー」と呼ばれる人たちがいる。彼らは、このごみの中からまだ使えるものを取り出して、売ったり、リサイクルをしたりして、生計を立てている。もはやこれは職業の一つとなっており、その数は我々が訪れた地域では減少傾向にあるとのことだったが、依然として多くの人がこれを収入源としている。

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このように、フィリピンのごみ問題は、制度上の問題だけでなく、雇用といった社会システムとも深くかかわった重要間問題となっている。

少し難しい話になったが、私が実際にこれを知って痛感したのは、我々にどうこうできる問題ではないのだということである。我々にはこの問題を改善する力はもちろん、案もない。できるのは、見て、聞いて、知ることだけである。こう思うと、毎度、国際協力の意義に疑問を感じる。私事ではあるが、自身もボランティアの類には疑問があった。だからこそこの団体に入ったのだが、やはり、私はこの問題に頭悩ますことをやめられないし、できもしないのに、何とかせねばと思わずにはいられない。ボランティアとはこうなのかもしれない。できることは、変革と呼べないようなちっぽけなことで、大半は、現実を知って、見て、考える事しかできない。その現実は知らない方が幸せで、楽なものかもしれない。でも我々は知りたいのだ。知らずに生きるより、無力を痛感しても考えていたいのだろう。

この記事も皆さんに一握り情報を知らせる以上のことはできない。しかし、少しでも何かを伝え、異国の問題について、一時でも考えていただくことを願うばかりである。

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