【NYC生活】コロナ禍の避難、脱出により空き物件が目立つニューヨーク市

公開日 : 2020年09月01日
最終更新 :

人種により住み分けられているニューヨーク市

私の住むニューヨーク市クイーンズ区は、マンハッタンよりレント(家賃)が安く、なおかつマンハッタンへ通勤しやすいということで、多くの庶民が住んでいます。マンハッタンへ通勤する人のベッドタウンですね。

マンハッタンを東京とするなら、ブルックリンが神奈川県、クイーンズは千葉県、ブロンクスが埼玉県というところでしょうか。クイーンズは世界一多様な人種が住んでいるといわれており、エリアによって住民が住み分けている印象があります。私が住んでいるエリアは、中国系とラテン系(スペイン語を話す人種)が多いです。隣の駅はタイやインドネシア系が多く、そのもうひとつ先の駅近辺はインド系が増えてきます。ニューヨーク市では人種が混じることなく、エリアにより人種がまとまっています。日本人は少数派なので、なんとなく中国系やジューイッシュ系がいるあたりに混じっている感じ。

ところが、ウチの近所では半々だったはずの中国系とラテン系の割合が変わり、ラテン系が減少している印象が。子供を3、4人連れた、子だくさんのラテン系ファミリーの全体数が減っている気がするのです。そして、気がつけば、あちこちにレント(空室あり)やSale(売家)のサインが。

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ニューヨーク市クイーンズ区の空き物件

ニューヨーク市クイーンズ区は出入りが多いけれど

クイーンズ区は移民の町であり、出入りは多いのですが、いままでになく空き物件が増えています。

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ニューヨーク市クイーンズ区の空き物件

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ニューヨーク市クイーンズ区の空き物件

2020年8月20日クオモNY州知事によると、住居用および商業用の賃貸物件の強制立ち退きを禁じる措置は、9月20日まで延長されています。ただし、すでに家賃を滞納したテナントの退出や追い出しが始まっているのか、路上に家具が出されているのも見かけます。

ニューヨーク市のお金持ちエリアは40%も脱出済

ニューヨークタイムスによると、2020年3月1日から5月1日までに、居住者の約5%(約42万人)がニューヨーク市を去りました。アッパーイーストサイド、ウェストビレッジ、ソーホー、ブルックリンハイツなど裕福なエリアでは、居住人口は40%減少。裕福な人たちはセカンドハウス(別荘)を持っているので、移動している可能性が高いです。ニューヨーク市を離れたのは、人種別に分けると下記のようなデータが出ています。

人口25%以上がニューヨーク市を離れたエリア(お金持ちのエリア)の脱出率

(8万3228人の人種内訳)

●白人 White             

脱出率 68%

●ヒスパニック ラテン系 Hisp. or Latino

脱出率 12%

●アフリカ系 Black         

脱出率 5%

●アジア系 Asian             

脱出率 13%

お金持ちエリアのニューヨーク市脱出者は、圧倒的に白人が多いです。ニューヨーク市のお金持ちエリアは、アッパーイーストサイド(代々の大富豪が住む)、ウェストビレッジ、ソーホー、トライベッカ、セントラルパークの周り(セントラルパークビューのコンドミニアム)、ブルックリンハイツなど家賃が恐ろしく高いところばかり。

お金持ちエリアの住民の世帯収入は、住民の半分以上が10万ドル(約1056万7473円、2020年9月1日換算)以上で、3人にひとり近くが200万ドル(約2113万4947円、2020年9月1日換算)以上。高学歴、高収入の白人だそうです。個人的には、実際の彼らの収入はこの2倍以上ではないかと感じますね。

いったいいま家賃はどうなのかと、マンハッタンで家賃が最も高いエリアのひとつで、物件が少ないと言われるウエストビレッジの賃貸アパートを検索してみました。過去には空き物件が少なかったエリアが、現在では驚くほどたくさんの物件が出てきます。脱出した人たちが住んでいた高級アパートなのでしょう。また、噂通り、家賃は10%程度下がっているようですね。市場価格が下がっているいまのうちに、先の投資用に物件を買うお金持ちもいるようです。

ニューヨーカーはどこへ消えたのか

逃げ出したニューヨーカーは、どこへ行ったのでしょうか。東はロングアイランドのナッソー郡とサフォーク郡(裕福な人たちのセカンドハウス(別荘)が多い)、西はペンシルベニア州のモンロー郡、南はニュージャージー州のモンマス郡、北はウェストチェスター郡、北東はコネチカット州のフェアフィールド郡や、もっと離れた地域へ移動しています。いずれも、名立たる高級住宅地です。南フロリダのパームビーチ郡は、ニューヨーカーにとって最も人気のある避難先。私の知人で、やはりフロリダへ避難した人がいます。お金持ちはグルメやショッピング、観劇、アートを楽しむためにニューヨークで暮らしていた人も多く、それが失われたいま、ニューヨーク市に魅力を感じなくなったようです。知り合いのなかには、自国へ帰った人も多く、寂しいです。

ニューヨーク市全域での脱出者はどうか

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ニューヨーク市クイーンズ区の空き物件

ニューヨーク市全域(760万人)における脱出率

●白人 White             

脱出率 28%

●ヒスパニック ラテン系 Hisp. or Latino

脱出率 31%

●アフリカ系 Black         

脱出率 24%

●アジア系 Asian             

脱出率 14%

庶民地域も含むニューヨーク市全域で一番多い脱出組は、ラテン系で31%、次が白人で28%、アフリカ系が24%、アジア系が14%の順番。感じていたとおり、ラテン系人口が最も減少しており、アジア系の脱出が最少です。ラテン系が離れた理由としては、彼らのほとんどはレストランのキッチンなど飲食系で働いているので、2020年内レストランの店内飲食が認められないのであれば仕事も少なくなり、家賃の高いニューヨーク市から離れざるを得ないのでしょう。もっと稼げる州(レストランがオープンしている、お金持ちが移動した州)へ向かったか、国へ帰ったかしたのだと思います。アジア系はおもに中国系だと思いますが、着の身着のままニューヨークへ来た人は少なく、家族や縁故があり、ある程度お金を持ってきている人が多いのでしのげているのではないかと感じます。

気がつけば、6月頃まではどこも入口に列ができていた地元のスーパーマーケットも、現在では並ぶこともなく店内に入ることができ、レジもそれほど混んでいません。人口が減っているのです。

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ニューヨーク市クイーンズ区の空き物件

ニューヨーク市に住む日本人も減っている

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ニューヨーク市クイーンズ区の空き物件

日本人も駐在員や学生などはすでに帰国済み、コロナ禍が落ち着くのを待って家族で完全帰国する人もいます。

ニューヨーク市は時代により人種が変わっていく町だと、以前知人が言っていましたが、昔はドイツ系やアイルランド系、そしてユダヤ系、そのあと中国系、インド系、ラテン系と移り変わってきました。この先のニューヨーク市はどう変わっていくのでしょうか。世界最多感染のニューヨーク市が現在の瀕死状態から再生するのであれば、やはり店舗および住宅物件の家賃を10%といわず、30〜40%ほど下げるべきだと思いますね。そうでなければ、ニューヨーク市の人口や企業は、どんどん減少していくばかりです。

■参照記事

All Photos by Sara Aoyama

筆者

アメリカ・ニューヨーク特派員

青山 沙羅

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

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