室生寺は平安仏教美術の宝庫

公開日 : 2018年05月31日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
DSC07291 (2).JPG

今回は室生寺(むろうじ)をご案内。

DSC05471 (2).JPG

奥深い山と渓谷に囲まれたここ室生(むろう)の地は、太古の火山活動によって形成された室生火山帯の中心部にあります。また室生寺の東方約1キロには、龍神を祀る室生龍穴(りゅうけつ)神社があり、雨乞いの祈願なども行われてきたことからもこの辺り一帯は古くから神々の座(います)聖地とされてきました。(いかにもパワーがありそう...)

奈良時代の末期この聖なる地で、皇太子・山部親王(後の桓武天皇)のご病気平癒の祈願が行われ、龍神さまのお力で見事に回復されました。

その後興福寺の僧・賢憬(けんけい)と修円(しゅうえん)によって創建された室生寺は、山林修行の道場とともに法相・真言・天台といった各宗派の兼学寺院として独特の文化を形成していました。

不思議なオーラが漂う山の中で、次第に密教の色が濃くなってきたようで、江戸時代の1698年には正式に真言宗の寺院として確立され、現在は真言宗室生寺派の大本山であります。

DSC07293 (2).JPG

また古来より厳しく女人を禁制してきた真言密教の本山ともいえる高野山(こうやさん)に対して、女人の救済も受け入れる真言道場として参詣を許したことから「女人高野」とも呼ばれています。

DSC07272 (2).JPG

女人高野ということなので、優しいお寺かと思いきや...山門をくぐれば、いきなり厳しい石の階段が目の前に立ちはだかります。通称、鎧坂(よろいざか)と呼ばれるこの石段は、まるで参詣者に室生寺へ入山することの覚悟を問いかけてきているようにも思います。

DSC02875 (2).JPG

登りきった所にはこちらの本堂である金堂が建っています。平安時代初期の建物で、単層の寄棟造りで屋根は木の薄い板を重ねた杮葺き(こけらぶき)という工法で葺かれています。

DSC02802 (2).JPG

金堂の内陣には、ご本尊の釈迦如来を中心に向かって右側に薬師如来、地蔵菩薩、左側には文殊菩薩、十一面観音菩薩といった平安初期に造られた仏像が並び立ち、その前には鎌倉時代特有の躍動感のある十二神将が一列に並んでおられます。

S__54181892 (2).jpg

とりわけ十一面観音像は、日本にある国宝・十一面観音菩薩像七体のうちの一体で、凛としたお顔の中に、どこか優しい雰囲気があってとても人気がある仏像です♪

DSC02799 (2).JPG

金堂の左手にある弥勒(みろく)堂は、興福寺の伝法院を受け継いだと伝える鎌倉時代の建築。内部の四本柱の中に須弥壇を置き、厨子入りの弥勒像を、右には国宝・釈迦如来坐像が安置されています。

DSC07285 (2).JPG

もう一段上に上がると出てくるのが灌頂堂(かんじょうどう)という建物。一般にお寺では金堂といえばほぼ本堂と呼んで差し支えない所が多いですが、室生寺ではこの灌頂堂が真言密教のもっとも大切な法義である灌頂(かんじょう)を行うことから、本堂と呼ばれています。ご本尊は、平安時代の如意輪観音菩薩像。とても穏やかな表情で素晴らしい仏像です。靴を脱いで内陣でお参りできますので、ぜひお参りしてください。

DSC02823 (2).JPG

さらにもう一段上がったところには、高さ16.1mと小柄ながら、檜皮葺の屋根や朱塗りと白壁と周りの緑の調和がなんとも優美な雰囲気をもつ五重塔が立っています。室生寺の中では最も古い平安初期の建築物であり堂々の国宝です。彩色がかなり綺麗なので、新しいもののようにも見えますが、これは1998年9月に、台風7号の強風でそばの杉が倒れた際に屋根を直撃する大被害を受けた後、2000年に復旧した際に綺麗に修復されたためです。

DSC02834 (2).JPG

そしてまたさらにこの先から、まるで天に上るような長い階段をどんどん上がって行きますと...

DSC09639 (2).JPG

舞台造りで建てられた位牌堂と弘法大師・空海の四十二歳の像を祀ってある御影堂(みえいどう)が建つ奥ノ院があります。

あまり心臓や足腰に自信のない方や、夏場にはお勧めいたしませんが、奥の院まで到達できた時の達成感はなかなかのものです。山林修行の厳しさを体感してみたい方は、ぜひお参りしてみてくださいね。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。