修験道の本山・金峯山寺

公開日 : 2018年04月05日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
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金峯山寺(きんぷせんじ)は、世界文化遺産・紀伊山地の霊場と参詣道(きいさんちのれいじょうとさんけいみち)の中に含まれていて、吉野町にある金峰山修験本宗(修験道しゅげんどう)の本山です。

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紀伊山地の霊場と参詣道というのは和歌山県・奈良県・三重県にまたがる3つの霊場(吉野・大峰、熊野三山、高野山)とその参詣道(熊野参詣道、大峯奥駈道、高野山町石道)のことを指します。

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同じ吉野山にある吉野水分(よしのみくまり)神社、金峰(きんぷ)神社、吉水(よしみず)神社という文化遺産たちの中でも、とりわけ凄い存在感のあるのが、この金峯山寺だと思います。

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こちら蔵王堂(ざおうどう)とよばれる本堂は、1592年に豊臣家の寄進により再建されたもので、高さ34メートル、奥行、幅ともに36メートルの巨大な建物です。重層の入母屋造(いりもやづくり)で、一見すると二階建ての様ですが、中は吹き抜けになっているという構造です。

内部の柱には製材されておらず、枝を落として皮を剥いだだけのような自然の木に近い柱が使われており、他ではちょっとお目にかかることがありません。そして大きな屋根は瓦葺き(かわらぶき)ではなく、檜の皮を使う檜皮葺(ひわだぶき)が用いられていることにも注目して欲しいと思います。

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一般的にお寺の屋根というのは瓦を葺いたものが主流で、檜皮葺というのは神社建築に使われることが多いのです。

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それは、日本古来の神道における神々が、実態があるものではなく自然そのものを畏れ敬うことからはじまっていることに由来します。

そして拝殿や本殿といった建物には瓦のような人工物を使わずに、できるだけ自然のものを使うようにされてきました。インドが発祥で古代中国から伝わってきた仏教寺院の建物とは根本的に違いがあるということです。

しかし、修験道は神道と仏教を融合させてその良いところを取り入れた独自のものですから、お堂にもその名残があるのかもしれません。

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他にも奈良の室生寺の金堂や、京都の清水寺の本堂など、仏教寺院でありながら檜皮葺の屋根を使われている例は見かけますが、ただの仏教寺院というよりは、やはりお寺全体が自然のパワーを求めているような感じが漂っています。

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金峯山寺の開基は修験道の創始者でもある役小角(えんのおづぬ)で、役行者として多くの場所に伝説を残されている人物で、このように前鬼(ぜんき)と後鬼(ごき)という鬼の夫婦が両脇に仕えている像が一般的です。

前鬼と後鬼には5人の子供がいて、その子孫たちは五鬼(ごき)または五坊(ごぼう)と呼ばれ、奈良県の下北山村に修験道の修行者のための宿坊を開き、行者坊、森本坊、中之坊、小仲坊、不動坊を屋号とされました。

明治時代の廃仏毀釈の影響もあって次第に衰退していきましたが、小仲坊の五鬼助(ごきじょ)さんの家だけは今でも変わらず宿坊をされています。

このように古代から歴史がつながっているのを肌で感じられるのも奈良の魅力の一つだと思います。

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ご本尊は三体の巨大な蔵王権現(ざおうごんげん)像です。究極不滅の真理を体現し司る王が権(かり)の姿で現れた神仏という意味を持ち、仏や天神地祇すべての力を包括しているとされています。

像容としましては密教の明王像のように、激しい忿怒相(ふんぬそう)で、怒髪天(どはつてん)という髪が逆立っている状態で、左手は刀印を結び、右手には三鈷杵(さんこしょ)という密教の法具を持ち、力強く踏ん張っている左足に対して右脚を宙高く上げておられるのが一般的ですが、インドはもちろん中国にも同じ像容の仏像がないため、日本独自の尊像とされています。

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現在の像は桃山時代のものですが、長年にわたり秘仏とされてきたおかげで彩色が鮮やかに残っておりとても400年を経た像とは思えないくらい綺麗です。現在も特別開扉の期間以外は秘仏とされていますが、なにぶん巨大な像が三体も並んでいますので、そのオーラが伝わってくるのを感じていただけると思います。

ちなみに平成30年の春は3月31日(土)~5月6日(日)が特別開扉となっております。他の詳しい時期につきましては、金峯山寺へ直接お問い合わせくださいませ。

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