天平美術の宝庫・三月堂

公開日 : 2017年11月09日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
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三月堂は不空羂索(ふくうけんさく)観音菩薩を本尊とするので、かつては羂索堂(けんさくどう)といわれていましたが、毎年旧暦の三月に法華会が行われたことから、法華堂(ほっけどう)というのが正式名称です。一般には二月堂に対して三月堂の愛称としても親しまれています

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創建年代は明確にされていませんが、現在の東大寺の前身となります金鐘寺(こんしゅじ)があった頃にはすでに存在していたようで、東大寺境内の中でも最も古い建物だといえます。

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よく見ていただきますと左右の屋根の形が対象でないのが分かります。向って左半分の正堂が奈良時代からのオリジナルで右半分の礼堂が鎌倉時代の再建のもの。

これについても諸説ありますが、元々は綺麗な寄棟造りの仏堂でしたが、平安時代末期に起こった平家による南都焼き討ち事件の際にダメージを受けて鎌倉時代に修復されたと考えられています。

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天平時代のお堂を残したままに、鎌倉時代の棟梁が最新の方式を取り入れて、格好良く仕上げたといったところかも知れません。大仏殿やお隣の二月堂のように奈良時代の建築に多い、ゆったりとした左右対称の寄棟造りを進化させたデザインがモダンで素晴らしいです。

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以前は堂内に16体の仏像が所せましと並び立ち、かなり圧迫感のあるライブハウスのようでしたが、現在は6体が東大寺ミュージアムの方にお引越しされました。

そのおかげで不空羂索観音像をリーダーに、梵天と帝釈天が脇を固める三尊形式を形成し、仁王像がその三体を守るように睨みを利かし、四隅には四天王がそれぞれ東西南北を守護するという、まさに完璧なフォーメーションが生み出されました。また正堂といわれる堂内には、壁際に畳敷きのベンチが備え付けられていて、お座敷のような空間で1時間でも2時間でも好きなだけ仏像に対峙できるようになっていますので、仏像マニアには嬉しい心配りだと思います。

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三月堂は大仏殿、二月堂に比べて隠れた存在なので、あまり知られていません。逆にそのおかげでいつも人が少なくてゆっくりと過ごせる穴場なのです。

大きな仏像軍に囲まれて気持ちの良いところなので、ぜひ一度立ち寄ってみて下さい。

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