猿沢池の景観でほっこり

公開日 : 2017年11月23日
最終更新 :
筆者 : 大向 雅
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ご存じのように奈良には凄い名所がたくさんありますが、すべてを一日で観て回るなんてことは到底できませんし、様々な神様や仏像、歴史背景などが一度に頭に入ってきますから何がなにやらわからないっ!ってことになりかねません。そんな時に頭と体を休めてほっこりとできる場所があるのが、奈良観光の良いところです。

この猿沢(さるさわ)池は天平時代に、興福寺での「放生会(ほうじょうえ)」を行うために造られた一周約350mの人工の池です。放生会というのは捕えた魚や獣を池や野に放つことで殺生を戒め、万物の生命を慈しむ儀式のことです。今でこそ興福寺の境内とは三条通をはさんで向かい合っているように見えますが、かつてこに池までが興福寺の寺領でありました。

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近鉄奈良駅からも徒歩10分興福寺から「ならまち」に向かう場所にありますので、観光客はもちろんのこと地元の人たちにとっても憩いの場となっています。もちろんこの辺りにも鹿たちが歩いていますので、お弁当を食べるときは横取りされないように注意してください♪

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通称「五十二段」とよばれるこの石段は、猿沢池から興福寺の南大門跡へと続く階段で、その名の通り下から上まで五十二段あります。これは大乗仏教の教えの中にあるもので、菩薩の修行の階位は一番下の信心・念心・精進心から始まり、一番上の妙覚までの五十二段階に分かれているというもので、妙覚に達した菩薩はあらゆる煩悩を無くし悟りを開いたブッダになれるそうです。この話を知ってから階段を一段ずつ噛みしめながら上り、興福寺に着く頃にはすっかり仏の境地に到達しておられることでしょう。

何気ない階段にも長い歴史と深い意味が隠されているのは、奈良ならではのことだと思います。

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猿沢池に伝わる伝説でもっとも有名なのが「采女(うねめ)伝説」です。天平時代に、春姫という美しい女性が采女として宮中に仕えていました。ほどなく帝の寵愛を受けるようになりましたが、やがて薄れてしまい悲嘆にくれた春姫は猿沢池に身を投げてしまったと伝えられています。

この伝説を裏付けるように池のほとりには采女神社があります。ご祭神である春姫が自分が身を投げた池を見るのは嫌だと言って、後ろを向かれたということから池に背を向けて社が建てられています。

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澄まず・濁らず・出ず・入らず・蛙はわかず・藻は生えず・魚が七分に水三分、猿沢池には昔から伝わるこのような七不思議があります。猿沢池の水は決して澄むことがない、かといってひどく濁ることもない。どこからも水が流入する川はなく、また流出する川もないのに常に一定の水量を保っている。亀はたくさんいるが、なぜか蛙はいない。亀や鯉が食べてしまうのか藻も生えない。毎年多くの稚魚が放たれているので、魚が七、水が三の割合になってもおかしくないはずなのに魚であふれる様子がない。

こんなことを考えながら夕涼みをするのもまた一興。興福寺の南円堂にお参りされる方が鳴らす鐘の音がやさしく響いてとても心地よいです。

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