圧倒的な存在感の東大寺
東大寺の大仏殿は木造建築としては世界最大として知られていますし、もちろん大仏さまも最大級の仏像ということで奈良のシンボル的存在のお寺ですから、とにかくスケールの大きなお寺です。
その広い境内にさまざまなお堂が点在していますから、色々な回り方がありますが、今回は正面からお参りするルートを紹介いたします。近鉄奈良駅からのびている登大路を興福寺からさらに東へ10分ほど歩きますと大仏殿の交差点までやってきます。ここを今回の東大寺参拝の起点ということにいたしまして、数回に分けて見どころを紹介していきぐるっと一回りしてみたいと思います
たくさんのお土産物屋が立ち並んでいて多くの人で賑わっている大仏殿に向かう参道。その途中にそびえ立つのが、大きな金剛力士像でとても有名な南大門です。
現在わたしたちが目にする門は二代目で、初代は平安時代の962年に台風によって倒壊してしまいました。そのまま再建されることなく平安時代末期の1180年には平重衡(たいらのしげひら)による南都焼き討ちという事件が起きてしまいます。そのときに大仏殿をはじめとする堂塔伽藍のほとんどは焼失してしまいました。
鎌倉時代になってから、大仏復興の大勧進(復興対策委員長のようなもの)であった僧・重源(ちょうげん)による必死の募金活動により、1195年には大仏殿は再建されました。その落慶法要には鎌倉に幕府をひらいた源頼朝も参列していることから、かなり復興に力を入れてくれていたことも分かります。
そして南大門は、それからまだ4年後の1199年になってようやく再建されました。つまり最初に倒壊してから実に237年もの間この正門は無かったということになるわけです。
さて正面から見ると迫力満点の門ですが、よく見てみるとけっこう造りは簡素で、京都の知恩院や南禅寺といったような豪華な造りではありません。これは重源が中国・宋から伝えた建築様式・天竺様(てんじくよう)というものを採用したからだそうです。大華厳寺と書かれた扁額は、2006年10月10日に行われた「重源上人八百年御遠忌法要」に合わせて新調されたものです。
天竺様の特色としては
●貫(ぬき)と呼ばれる、柱を貫通する水平材を多用して構造を堅固にしていること
●天井を張らずに構造材をそのまま見せて装飾としていること
●工期も費用も抑えられるといったこと
などが挙げられますが、何せこれだけのものを建てるとなると財源はもちろんのこと、大きな木材の調達も、かなり厳しかったのではないかとも思います。大仏殿再建から14年も後回しにされたことも納得ですね。
そして、この両脇に立つ金剛力士像が圧巻です。高さ8.4メートルの巨大な像は、運慶が率いる慶派の仏師達が、わずか69日で造られたと伝わっており、門の向かって左に阿形(あぎょう、口を開いた像)が
そして右に吽形(うんぎょう、口を閉じた像)がにらみを利かせながら立っておられます。
1988年から5年の歳月をかけて初めての解体修理が実施されたときに、体内から多数の納入品や墨書が発見されました。それによりますと阿形像は大仏師運慶と快慶が小仏師13人を率いて造り、吽形像は大仏師定覚および湛慶が小仏師12人と共に造ったものであるということが書かれていたことから、運慶は慶派という仏師集団の棟梁として製作現場全体の監督・総指揮者として造像に当たっていたことも分かりました。
平安時代の仏像は霊力をもった御神木クラスの大木から仏像を彫り出していく、いわゆる一木造りが主流でしたが、平安時代後期には大仏師・定朝(じょうちょう)によって、寄木造りという技法が確立されました。この技法の最大の特徴は像の部位ごとに細かく分けて製作した部品を組み上げていき、一体の仏像を造るという技法ですので、大木を使わなくても大きな仏像を作ることを可能にしたことだといえます。
慶派は、定朝の寄木造りの技法に益々磨きをかけていき、仏像の世界をよりリアルに表現することに尽力されました。その集大成ともいえるこちらの金剛力士像は、それぞれが何と3000を超える部品を組み合わせて作られています。
こうした当時の仏師達の思いと共に800年以上も風雪に耐えながら力強く立ち続け、東大寺を守っておられる姿をぜひ実際にご覧になって頂きたいと思います。
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