ナポリ散歩道 長い長い桟橋、カモッラの影

公開日 : 2013年05月06日
最終更新 :

 ナポリの中心地からポジリポの小高い丘を越えて海岸沿いに降りたところにある地区をBagnoli(バニョーリ)と呼びます。松の木が立ち並ぶポジリポの公園から見えるこの美しい自然の残る海岸は、産業革命時代には鉄道や電車を作る大型の工場が稼働しており、第一次世界大戦以前からたくさんの労働者が行き交う土地でした。

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 こんなに骨組みだけが露わになった工場を目の前にすると、何か冷たいものが横切るような錯覚を覚えるのは私だけではないはず。何か悲しい背景があったことを思わせます。

 第二次世界大戦の際に、ヨーロッパ諸国からの襲撃によって閉鎖せざるを得なくなったと言われているこの工場。多くの労働者が路頭に迷いました。現在は再開発地区として、大型施設など周辺に作ってはいますが、無骨に残る悲しい廃工場。

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 これはカモッラの仕業だと言われています。日本では「マフィア」という単語の方がよく知られていますが、ナポリのマフィアをカモッラと呼びます。背景はよくわかりませんが、この周辺が商業化されないことにも結びついています。科学博物館の再建を願って、たくさんの寄付を集める運動が行われ、サンカルロ歌劇場もゲネプロ(リハーサル)を一般公開してその入場料を寄付しています。

 そんな工場をバックに、海に向かって長い桟橋が突き出ています。ジョギングに来る人や、散歩をする人で行き交うこの橋からは、ニシダという少年監獄所のある島や、焼けた科学博物館跡を横に見ながらも、美しすぎる海と強い太陽を浴びて、人々を惹きつけ続けています。

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 五年前のクリスマスに友達に連れて行ってもらって、母と一緒にお散歩したこの桟橋。あの頃はまだこの街のそんな複雑な背景を理解する余裕はありませんでした。ただ沈んでいく夕日を見ながらきれいだなーと思っただけ。今も、むしろ永久に理解はできないのかもしれません。誰も暴くことのできないナポリの闇の世界。蝕むように一般人の生活に入り込んできたカモッラの存在が、住民たちの生活を苦しめているのは事実です。

 美しいナポリの海岸沿いに残る痛々しい歴史。今後も続いていくであろう歴史。

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 ホテルもたくさんあり、夏にはビーチが賑わいます。私はこの「影」となる闇が気になるので、滅多に立ち寄りません。美しい自然の残る中、クラブやバールがオープンしており、地元っ子には人気のよう。科学博物館の消滅してしまった今、この土地の再建の鍵を握る人物は何を企んでいるのでしょうか。

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