ナポリ国立音楽院

公開日 : 2012年11月01日
最終更新 :

 今日は、私が通ったナポリ国立音楽院を紹介したいと思います。サン・ピエトロ・マイエッラと呼ばれるこの音楽院は、同名の教会のすぐ横に建っています。もっとも、どの街のコンセルヴァトリオ(音楽院)にも必ず教会が横にあります。コンセルヴァトリオというのは「保存する場所」という意味で、その昔、貧しい子供たちや、口減らしのために教会の前に捨てられた赤ちゃんを教会が保護し、音楽を教えてミサのオルガンやコーラスとして演奏させていたことに由来します。

conser.jpg

 ナポリ音楽院はイタリア最古の音楽院で、伝統ある美しいキヨストロ(回廊)の中庭と、重要な楽譜や書記の残る図書館と、立派なパイプオルガンを持つスカルラッティホールが有名です。ヤシの木陰に勇ましいベートーヴェン像が出迎えてくれます。

DSCN0260.JPG

 図書館は博物館として月曜日から木曜日の午前中に一般公開もされています。そこにはストラディヴァリのハープを始め、メルカダンテのフォルテピアノや、ショパンの手袋、ジュディッタ・パスタやマリア・マリブランの肖像画が飾られています。

DSCN0280.JPG

 ナポリの中央歴史地区にある古い建物から聴こえてくる楽器の音に誘われて、初めて足を踏み入れた瞬間、私は絶対にここで学びたい!と思いました。しかし後々衝撃の事実を知ることとなるのです。

 というのは、学校がまさに「ナポレターノ」なのです。入学試験日に行ってみると、理由もなく一週間延期になったと言われ、入学後に学期が始まるのが数カ月遅れ、マエストロは授業に一時間遅れ、音楽史の授業中に生徒が突然りんごをかじり出し、演出の授業で演出家が衣装にコーヒーをこぼし、練習室で歌っていると数分置きに邪魔が入り、最高に美声なのに楽譜が読めない歌手がいる...。なんとも驚きの連続でした。

DSCN0262.JPG

 私が入学する前には、しばらく学校が閉鎖されて学生の座り込みデモが行われたそうです。というのも、国からマエストロたちに給料が支払われなかったために、教授陣が授業をボイコットして、それに怒った学生が授業を受ける権利を主張したとか。事務局は一日に二時間しか開かないので、特に学期始めや願書提出の際の混雑はひどく、ピアノ科以外の教室にあるピアノは全て調律されていません。そんなナポリ国立音楽院から何故かたまに逸脱した音楽家が輩出されています。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。