2年ぶりに開催された「リヨン光の祭典」は感動の連続でした

公開日 : 2021年12月21日
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【フランス リヨン便り n°65】

こんにちは、マダムユキです。フランスのリヨンからお届けしています。

▼フルヴィエールの丘から臨むリヨン(光の祭典の初日)

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2021年も残すところわずかとなりました。

  マダムユキ:おそろしい、こんな速さで歳をとっていくのかと思うと、そらおそろしい~

2020年の同じ時期に「リヨン光の祭典が中止になりました」というブログを投稿しました。まるで昨日のことのようです。

  マダムユキ:光陰矢の如し

毎年12月上旬、正確にいえば、カトリック教会の教義において「無原罪の聖母マリアの日」とされる12月8日を含めた4日間、リヨンで「光の祭典(Fête des Lumières)」と称される(その名が語るとおりなのですが)、光のイベントが開催されます。

リヨンで光のイベントが開催されるに至った歴史はふるく...、と昨年も一昨年もブログに書きました。まるで昨日のことのようです。

  マダムユキ:歳月人を待たず

今年はリヨン光の祭典の歴史の話は割愛して、単刀直入に本題に入ります。

「えっ、マダムユキ、それは手抜きですよ」というお叱りが聞こえてきそうです。

  マダムユキ:ごめんなさ~い

歴史に興味があり、かつ、お時間のある方は1年前のブログをご訪問ください(やっぱり手抜きかも)。

今年のリヨン光の祭典は直前までサスペンスでした。

というのは、9月に入ってフランスの新型コロナウイルス感染者数が減少し、政府が学校内のマスク着用義務を外すといった緩和措置を講じました。このままよい方向に進んでいけば、クリスマスやスキーシーズンが盛り上がるだろうと希望の光が垣間見え、ワクチン接種も定着したこともあって、コロナ収束への期待が膨らんでいきました。

リヨン市もしかりです。2020年に中止となった光の祭典を今年こそは実現させたいという強い思いで、関係者たちは一丸となって、開催に向けて準備を着々と進めていました。

▼リヨン光の祭典のプロジェクト発表会(商工会議所内ジャカールの間)

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そこにきて、11月25日のことです。南アフリカ政府が新たなコロナウイルス変異株が発見されたと発表しました。そして翌日26日、世界保健機関(WHO)が新変異株を「オミクロン」と名付け、「懸念される変異株」に指定しました。

  マダムユキ:懸念される...?、えっ、うそだ~、悪夢の再来だ!

11月末時点でフランス国内でのオミクロン株感染者は確認されていなかったのですが、アフリカとフランスの外交関係をみれば「時間の問題」でした。メディアが一斉にオミクロン株を取り上げて、世界保健機関(WHO)がいうところの「懸念される変異株」は、「既存の変異株よりも、とくにデルタ株よりも感染力が強いのか」「既存のワクチンはオミクロン株に有効なのか」といった議論が炎上しました。

オミクロン株の出現だけが問題だったのではありません。

実はちょうどそのころ、感染者数の急激な増加が懸念され始めていました。

グラフをご覧いただければわかるように、11月ごろからフランスの感染者数が増えはじめ、12月に入ってもその傾向が続き、1日あたりの新規感染者数が5万人を超える日もありました。昨年の同時期を超える勢いです。

▼1週間平均の1日あたりの新規感染者数推移

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出典:https://covidtracker.fr/covidtracker-france/

オミクロン株の報道を端に発し、フランス各地でクリスマスマーケットや年末イベントの中止が相次ぎ、年末のお祭りムードから雰囲気が一転したのです。

  マダムユキ:まさか、今年も...。

1年前も年末の感染者数増加が懸念されて、フランスは11月からロックダウン入りしました。

「リヨン光の祭典が中止になるかもしれない!」という憶測が流れました。サスペンスのはじまりです。

よりどころは、フランス最大のクリスマスマーケット開催地ストラスブールが中止の決定をくだしていないことでした。

  マダムユキ:「二度あることは三度ある」、いや違う、「三度目の正直」を信じよう

悶々と時間がながれ、12月6日、光の祭典の前々日のこと。

フランス政府が「リヨン光の祭典は感染予防対策を十分に講じたうえで開催されることを望む」と発表しました。

よかった~と、リヨン人は胸を撫で下ろしました。

そして翌日の7日、ローヌ県とリヨン市が感染予防対策を強化してリヨン光の祭典を予定どおり開催することを発表しました。

<感染予防対策の強化>

イベント会場に指定された場所で、

- 11歳以上のマスク着用の義務

- 18時から2時まで露店および小売店の食品および飲料の販売禁止

- 18時から2時まで路上での飲食禁止

- 閉鎖された空間においては入場の際に衛生パス(*)を提示すること

▫️ 500 policiers nationaux▫️ 100 gendarmes▫️ 200 policiers municipaux▫️ 70 agents de sécurité de voie publique▫️ 100 militaires▫️ 470 agents de sécuritéseront mobilisés pour assurer la #sécurité des visiteurs, sans oublier les sapeurs-pompiers et les 2300 agents TCL pic.twitter.com/4pJ0KgoJjx— Préfet de région Auvergne-Rhône-Alpes et du Rhône (@prefetrhone) December 7, 2021

#FDL2021Face au #COVID19, le préfet instaure un périmètre sanitaire qui interdit :❌la consommation de boissons/nourriture sur la voie publique ❌la vente de boissons/nourriture à emporter par les commerces ambulants + pas de porte✅espace de restauration avec #PassSanitaire pic.twitter.com/Pmt4BakePP— Préfet de région Auvergne-Rhône-Alpes et du Rhône (@prefetrhone) December 7, 2021

こうして12月8日、小雨が降ったり止んだりの天気なか、リヨン光の祭典の初日を無事に迎えることができました。

写真で振り返ってみましょう。

テロー広場

テロー広場(Place des Terreaux)に面したリヨン美術館とリヨン市庁舎のファサードがプロジェクションマッピングの巨大スクリーンになります。例年、リヨン光の祭典のメイン会場のひとつで、広場内への入場が制限されるほどの人気スポットです。今年もファンタジーな演出で見ごたえがありました。

● タイトル:LE LAPIN DANS LA LUNE(月のうさぎ)

● アーティスト:Renato Gonzalez Gutierrez & Sarah Matry-Guerre

● 製作:Le Pilote Production

▼リヨン美術館

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▼リヨン市庁舎

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ラ・レピュブリック通り

リヨンのシャンゼリゼ通りともいえる(言い過ぎ!)ラ・レピュブリック通り(Rue de la République)は、リヨン屈指の商業地区を南北に走る歩行者専用の通りです。優しい光のなかで、宇宙空間にいるような幻想的な雰囲気に包まれて、無重力な不思議な感覚を味わいました。

●タイトル:PLANETOIDES

●アーティスト:Pitaya

▼ラ・レピュブリック通り

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ラ・レピュブリック広場

ラ・レピュブリック広場はオペラ座とベルクール広場を結ぶラ・レピュブリック通りの中間地点に位置し、プランタン百貨店やユニクロリヨン店もすぐ近くにあり、とても賑やかな広場です。広場中央の噴水に作品が展示され、水面への反射を利用した幾何学美にうっとり魅せられました。

●タイトル:FRAME PERSPECTIVE

●アーティスト:Olivier Ratsi

●製作:Crossed Lab / Julien Taïb

▼ラ・レピュブリック広場

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ブルス広場

ブルス広場(Place de la Bourse)はラ・レピュブリック通り沿い、コードリエ地区にあるリヨン商工会議所(旧証券取引所)前の広場です。そこに、粒子の流動(トゥールビヨン)がエネルギーを創出する物理現象を表現した作品が展示されていました。音響効果もすばらしく(写真では伝えられないのが残念...)、自然現象さらには超自然現象がアートの世界に変換されるとこうなるんだという発見がありました。

●タイトル:VORTEX-1

●アーティスト:Lightlab Creative

●製作:Wild Light Society

▼ブルス広場

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ルイ・プラデル広場

ラ・レピュブリック通りの北端、リヨンのオペラ座前の広場(Place Louis Pradel)に、大きく翼を広げ、まさに飛び立とうとしている一羽の鳥がいました。その名はフェニクス。炎に包まれ死んでしまっても、蘇って永遠の時を生きるといわれる伝説の鳥です。虹色に輝くフェニクスは未来への希望と再生を象徴していました。フェニクスの足元に子供たちが集まって戯れている光景が微笑ましかったです(写真では暗くて分からないですね...)。

●タイトル:PHENIX

●アーティスト:Julien Menzel

●製作:Number8

▼ルイ・プラデル広場

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ジャコバン広場

ジャコバン広場(Place des Jacobins)はラ・レピュブリック広場からソーヌ川に向かって歩いたところにある広場です。中央にリヨン出身の4人のアーティスト(建築家、彫刻家、画家など)の彫像が飾られた噴水があり、周囲に瀟洒な建物が建ちならび、とてもパリっぽい(えっ、マダムユキがパリとリヨンを比べるとは!)雰囲気があります。光の祭典では、ボランティアの人たちがろうそくを灯して広場を光で包んでいました。

●タイトル:LES LUMIGNONS DU CŒUR

●アーティスト:Direction des Evénements et de l'Animation de la Ville de Lyon

▼ジャコバン広場

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セレスタン広場

ジャコバン広場からソーヌ川に向かってさらに進むと19世紀建造のセレスタン劇場(Théâtre des Celestins)があります。広場中央にトライアングルを組み合わせた半球がぽつんと置かれていました。「これは何だろう」とながめていると、球内から光が発せられ、点と点が結ばれ、光が球全体に広がっていきました。接続と双方向通信による連帯と自律からなるネットワークの世界を象徴していました。

●タイトル:SYNERGETICS

●アーティスト:Let There Be Light

●製作:Let There Be Light

▼セレスタン広場

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ベルクール広場

ベルクール広場(Place Bellecour)はラ・レピュブリック通りの南端にあり、歩行者専用としてはヨーロッパでも一二を競う広さです(62,000m²)。例年、光の祭典では、広い空間を使ってどのような演出が施されるのか注目されますが、今年は意表を突かれました。魚の鱗のように並べられた350枚のキャンバスが、フルートの透き通る音色にあわせて、万華鏡のように色を変えながら風でなびき、その波打つ様は圧巻です。

●タイトル:LA VAGUE

●アーティスト:Sébastien Lefèvre

●製作:Le Pilote Productions

▼ベルクール広場

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アントナン・ポンセ広場

ベルクール広場からローヌ川に向かって進むと小さな広場があります。暗闇のなか、青みがかった光線が波のように振動しながら地面を這っていました。強烈なエネルギーで地球を保護するかのように、とても神秘的な光景でした。日本人アーティストの作品です!

●タイトル:LAFTEREAL

●アーティスト:Yasuhiro Chida

●製作:Light Art Collection Ltd / Meeercredi Productions

▼アントナン・ポンセ広場

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ソーヌ河岸

フルヴィエールの丘の頂上に建つ教会は聖母マリアに捧げるために建立されました。リヨン光の祭典の原点となる教会です。河岸から見上げるフルヴィエールの丘の景色を求めて、ソーヌ河沿いは多くの人で溢れていました。写真をご覧ください。丘の麓の建物ファサードがサンボリズム(象徴派)のフレスコ画に大変身!「ブラボー」という声が響きわたりました。

●タイトル:VISIONS

●アーティスト:Luminariste

●製作:GL Events / Vitrail Saint Georges

▼ソーヌ河岸からフルヴィエールの丘への眺め

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▼作品を紹介する電飾スタンド看板(マップがとても便利)

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サンポール広場

フルヴィエールの丘の麓、ソーヌ川右岸に広がる一帯がリヨン旧市街地と呼ばれる地区です。北にサンポール駅(Gare Saint-Paul)があり、例年、駅舎ファサードに短編でも見ごたえあるプロジェクションマッピングが披露されます。今年はアニメの世界観に満ちていました。

●タイトル:NOUVELLE VAGUE

●アーティスト:Rencontres Audiovisuelles des Hauts de France

●製作:Loom Prod

▼サンポール駅

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シャンジュ広場

シャンジュ広場(Place du Change)は、ルネサンス期に商業の場として主要な役割を担った歴史的な場所の一つです。プロテスタント教会として使われている18世紀末建造の旧手形交換所(Loge du Change)ファサードに映し出されたプロジェクションマッピングは凄かったです!デジタルアートスタジオ3社の共演ですが、「ビッグデータと人口知能が社会にもたらすものは何か」「デジタル奴隷にならないための社会規範とは」といった、デジタル時代に生きる私たちに訴えかけるテーマでとても印象的な作品でした。

●タイトル:DO HUMANS NEED HUMANS ?

●アーティスト:Pixel Shapes / Kanaka Studio / 000PSStudio

▼シャンジュ広場

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サンジャン広場

サンジャン大聖堂(Cathedrale Saint-Jean)のファサードに映写されたプロジェクションマッピングは、リヨン光の祭典の最高傑作といえます。空間演出の高度な技術によって実現するスペクタルアートを目にして、「うわ~」とどよめきが走り、観客は感動の渦に包まれました。コロナ禍で疲れた心が癒され、リヨン光の祭典が開催されて本当によかったと心からそう思ったのは、私だけではなかったと思います。

●タイトル:IRIS

●アーティストAV EXTENDED

●製作:TETRO+A

▼サンジャン大聖堂

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2021年の光の祭典に180万人が訪れたそうです。なかでも人気を博したのがテロー広場で、毎晩20万人の観客が集まり、サンジャン大聖堂前の広場には毎晩8万人が集いました。リヨン市の人口がおよそ52万人ですから、コロナ禍でありながらも、大盛況を博したといえます。

気の早い話ですが、来年が楽しみです。

日本の皆さまが、このリヨンの地でリアルで光の祭典をご覧いただける日が来ることを願うばかりです。

ウイルス感染予防を徹底して身を守りながら、よい年末をお過ごしください。

マダムユキより

※「衛生パス(Pass Sanitaire)」とは、ワクチン完全接種済みの証明書あるいは72時間以内に取得したRT-PCR検査または抗原検査に基づく陰性証明書あるいは過去11日前から6ヶ月以内に感染回復したことを示す証明書をもって交付されるQRコードのことです。

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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