【ぶらりお店探訪】中世の面影が残る小さな村のレストランでランチを楽しむ

公開日 : 2021年07月20日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°58】

こんにちは、マダムユキです。フランスのリヨンからお届けしています。

先日、リヨンから車で40分ほど離れた小さな村を歩いてきました。

実は、昨年の夏頃からオンラインツアーのサービスを開始し、新企画「美しい村歩きを生中継~中世にタイムスリップ~」の下見をかねていました。

オンラインツアーといっても、参加者がビデオ・オン・デマンド形式で録画映像にアクセスするタイプもあれば、複数の参加者が同時に録画映像や画像を閲覧するタイプ、さらには、複数の参加者が同時に現地ガイドが配信する映像を生中継で閲覧するタイプなど、さまざまです。

いずれも媒体として、パソコン、スマートフォン、タブレットなどのデバイスを使用してオンラインセミナーやミーティングを開催するために開発されたアプリケーション「Zoom」が利用されています。

ライブ配信の場合、現地映像はスマートフォンで撮影され、それを4G(第4世代移動通信システム)で1万km離れた日本に送信して、「Zoom」を介して参加者がストリーミングでその映像を閲覧するという仕組みです。現地の通信環境を事前にチェックする必要があり、下見やリハーサルは必須なのです。

そこで、トゥーリズム(観光)専攻の学生で、2ヵ月前から実習生として私のアシスタントを担当しているシャルルに下見の同行をお願いしました。

マダムユキ:明日、「ペルージュ」に下見にいくわよ

シャルル:「ペルージュ」ってどこにあるんですか?

マダムユキ:えっ、知らないの!

シャルル:名前は聞いたことありますが~

シャルルはランドオペレーターの仕事を学んで、将来は海外の旅行会社でフランス人を受け入れる仕事に就きたいという学生さんです。アジアが好きで、バックパーカーで1ヵ月間、ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、そして、日本を旅行したという旅好き。自国フランスよりもアジアに詳しいのです。

マダムユキ:リヨンから車で40分ほどのところにある村で、「フランスの最も美しい村」に登録されているのよ

シャルル:美しい村ね~

マダムユキ:最も美しい村、「最も」がつくの(声高らかに......)!

その日は天候に恵まれ、リヨンの北東に向かって車を走らせました。高速道路A42号線に入り「ペルージュ(Pérouges)」の標識が出たところで高速を下りて、一般道(県道)を走ります。交通の流れがよく、40分ほどで到着しました。ペルージュは小高い丘の上に建てられた中世の村です。

▼小高い丘にたつペルージュ村

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標高300mの小高い丘に城塞が築かれたのは12世紀頃と言われています。ドンブ平野のリヨンとジュネーブを結ぶ街道上に位置するペルージュは、政治的、経済的かつ軍事的戦略においてとても重要な場所とされ、13世から15世紀にかけて、現在のグルノーブルを中心としたフランス南東部一帯を治めていたドーフィネ公国と、現在のイタリア領とスイス領にまたがるサヴォワ公国とがペルージュを奪い合い、16世紀にはサヴォワ公国とフランス王国とが奪い合うという、戦争の歴史が繰り返されてきました。村を囲む二重の城壁跡が戦乱の世を物語っています。

初めてペルージュを訪れたのは20年ほど前のこと。フランスに来て間もなくの頃で、パリとリヨンしか知らなかった私にとって、初めてのフランスの村訪問となりました。堅牢な城門を抜けて、目の前に現れた石造りの家と石畳の小路。中世にタイムスリップしたかのように、時間がそこだけ止まっているかのように、昔の姿が残されている驚きと感動、一瞬にして「中世の村愛好家」になりました。

ペルージュ村の歴史を学んでわかったことですが、19世紀に入って村の過疎化と平行して建物の老朽化が進み、村が荒れ果てていきました。20世紀、「ペルージュ村を守ろう」という活動が生まれ、村人たちの熱意で村興しが開始されたのです。村人たちは資金を出し合い、崩壊手前の家々を修復し、電線を地下に埋め、小路にアン川の石を一つひとつ敷いて、昔の村の姿を取り戻していきました。そして1988年、村人たちの念願かなって「フランスの最も美しい村」に認定されたのです。

▼ペルージュ村入り口の城門

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ペルージュ村には仕事とプライベートを合わせて数えきれないほど来ています。いつ来ても、村の美しさに初めて来たときと同じ感動を覚え、体が震えます。

マダムユキ:シャルル、城門の横に教会があるでしょう

シャルル:教会と城門が一体となっていてるところがすごいね

マダムユキ:そうなの、しかもこの教会は城壁の役割も担っているのよ。

シャルル:なかもすごそうだね

マダムユキ:壁の厚さを見てごらん。外側に面した壁は厚さが2m以上もあって、開口部を可能な限り小さくして、そのわずかな開口部は石落としや槍投げ口として使われていたのよ。逆に、村側の壁は開口部が大きでしょう。

シャルル:敵に襲われる心配がないから

マダムユキ:そうなの、ステンドガラスもはめ込まれていて、教会らしい

▼ペルージュ城塞教会の壁

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シャルルが興味を持ちだして、きょろきょろと巡り始めました。

「さあ、あとでゆっくり村ガイドしてあげるから、まずは、仕事をしましょう」とシャルルに声をかけ、それぞれの携帯電話とタブレットをZoomでつなぎ、携帯電話のビデオモードで村を撮影しながら歩き、映像が別のデバイスにきちんと配信されているかを確認しました。

ペルージュ村は楕円形でランド通りと呼ばれる道がぐるっと村を一周し、ランド通りのところどころから村の中央にある広場へとつながる小路が走っています。

1時間ほど携帯で撮影しながら村を歩き、最後に中央広場に到着しました。

フランス革命の時代に自由の象徴として広場中央に菩提樹の木が植えられたことから「菩提樹の広場」と呼ばれています。

広場を見渡すと、藁と土を混ぜた塗装の壁と木の梁が特徴的な建物が見られます。木組みの建物はこの地方の典型的な建築様式です。

なかでも、広場の一画のひと際立派な建物が目を惹きます。ホテル兼レストランの「オテルリー・デュ・ヴュー・ペルージュ」です。

ここだけの話ですが、この日のお目当てはオンラインツアーの下見だけでなく、実はここでのランチでした(声を潜めるマダムユキ)!

▼オテルリー・デュ・ヴュー・ペルージュの木組みの建物

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マダムユキ:こんにちは、お久しぶりです

支配人:あ、マダムユキ、元気そうだね

マダムユキ:実習生のシャルルよ、ペルージュが初めてなの

支配人:シャルル君だけじゃないよ、海外旅行ができないから、フランス人観光客で村がにぎわってるよ

マダムユキ:レストランの中をシャルルに見せてもいい?

支配人:もちろんだよ

▼木梁天井、歴史を感じるフローリングと調度品で村宿場の雰囲気たっぷりの喫茶室

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▼フロアタイル、暖炉、布製チェアで落ち着いた雰囲気のダイニング

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▼壁にかけられたタピスリーが中世らしさにアクセント

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▼窓越しに中世の村、絵になります

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▼個室もおしゃれ

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▼天気のいい日はテラス席がおすすめ

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シャルル:すてきなところですね

マダムユキ:お料理もすばらしいわよ

シャルル:おすすめは?

マダムユキ:ブレス産!

ふたりとも前菜にスモークしたマスのサラダを選びました。

シャルルは若者だけあって、ペロリと食べ終えましたが、私はサラダのボリュームに苦労しました。それを見ていたシャルルが「マダムユキ、サラダは胃に入れば水みたいなものだよ」ですって! 若いっていいわね。

▼スモークしたマスのサラダ、ボリュームたっぷり

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シャルルはメインに鶏のクリーム煮を選びました。ペルージュから北に50kmほどのところに世界の美食家が褒めたたえる高級ブレス鶏の産地があります。この地方の郷土料理に鶏肉は欠かせません。また、ブレス地方は乳製品(バター、クリ―ム、チーズなど)のコクのあるおいしさでも定評があります。

▼チキンのクリーム煮、鶏もクリームもブレス産

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魚好きの私はメインもマスで、ムニエルをチョイス。

海のない地方ですから、海産よりも淡水産が使われます。

▼マスのムニエルをさっぱりレモン汁でいただきます

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お待ちかねのデザート。

迷わずオテルリー・デュ・ヴュー・ペルージュの名物ガレットを注文します。

レモン風味のパイ生地に砂糖をまぶして焼き上げたとてもシンプルなデザートなのですが、病みつきになるおいしさです。生クリームをたっぷり添えて召し上がれ!

▼特製ガレット、これを食べなきゃ後悔します

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▼香ばしく焼き上げたガレット

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▼ブレス産生クリームが入った大壺

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「さて、地産池消の美味しい食事でお腹もいっぱいになったことだから、カロリー消費に村ガイドしてあげるわね」と声をかけると、「やっほ~」と大喜びのシャルル。

皆様にも、次の機会にペルージュ村をブログでガイディングいたします。お楽しみに。

それでは、引き続き、お身体をご自愛くださいませ。

マダムユキ

【お店情報】

▶HOSTELLERIE DU VIEUX PEROUGES(オテルリー・デュ・ヴュー・ペルージュ)

・住所: Place du Tilleul - 01800 Pérouges France

・電話: +33 4 74 61 00 88

・営業時間: 毎日(除く木曜日) 12:00~14:00、19:00~21:00

・休業日: 木曜日

※ご訪問前に営業時間などをサイトからご確認くださいね

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【補記】

2021年12月12日の夜、フランスのマクロン大統領がテレビ演説を行いました。30分ほどの時間をかけて、新型コロナウイルス感染の現状と今後の感染症防止のための新たな処置について国民に説明しました。

国民へのワクチン接種の義務化はありませんが、衛生パスポート(Passe sanitaire)の適用範囲が広がり、7月21日以降、50名以上が集まる娯楽および文化施設で、ワクチン接種証明あるいは陰性証明の低維持が求められます。また、8月上旬以降は、カフェ・レストランなどの飲食店、大型商業施設、病院や医療社会施設、高齢者施設、さらに、列車・バス・航空機の長距離移動の利用において、ワクチン接種証明あるいは陰性証明の提示が求められます。いずれも、議会による法案が採択され次第、政府より具体的な適用措置が発表される予定です。

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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