【アフターコロナで行こう】フランスのタン・レルミタージュに老舗DELASの直営ショップがオープン

公開日 : 2020年11月14日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°43】

皆様、こんにちは。リヨン在住のマダムユキです。

フランスのリヨンからローヌ川に沿って車で1時間ほど南下したところにあるタン・レルミタージュ(Tain-l'Hermitage)という小さな町をご存知でしょうか。北ローヌワインのメッカとして世界各国のワイン愛好家の注目を集めている町です。というのも、ローヌワインの名門ワイナリー、1834年創業の「ポール・ジャブレ・エネ(Paul Jaboulet Ainé)」と1808年創業の「M.シャプティエ(M. Chapoutier)」が本店を構えているのがこのタン・レルミタージュです。町の西側にローヌ川が大河のごとくゆったり流れ、東側に最高級ローヌワインを生み出すエルミタージュの丘が広がり、この風光明媚な景色も人気の理由です。

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2020年、このタン・レルミタージュに「メゾン・ドゥラス・フレール(Maison DELAS Frères)」の直営ワインショップがオープンしました。「メゾン・ドゥラス・フレール」は、対岸のトゥルノン・シュル・ローヌ(Tournon-sur-Rhône)の町に1835年に創業した由緒正しいワイナリーです。ドゥラスは私のお気に入りのワイナリーのひとつで、なんといってもワインボトルにドゥラスの家紋が刻まれていて、高級感たっぷり。いつもボトルを惚れ惚れと眺めています。ということで、ドゥラスがどんなショップをオープンさせたのか、それはそれはワクワクしながら(興奮気味!)、フランスが二度目のロックダウンに入る前の10月に訪問しました。想像以上の驚きがありましたので、紹介しますね。

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まずは、ローヌワインのちょっとした豆知識から。

【ローヌワインは北と南で個性が異なる】

「太陽のワイン」と呼ばれ、日本でも人気を高めている「ローヌワイン」は、スイスのレマン湖からリヨンを経由して地中海へと注ぐローヌ川の流域に広がるぶどう畑から生まれます。ワイン造りの歴史は古く、古代ローマ帝国の時代に遡り、丘陵にテラス状にぶどう畑を耕すのはローマ人の知恵で、2000年前の石垣やその形跡がいまでもところどころで残されています。ローヌワインとひとくちに言っても、北部と南部とではテロワール(気象条件、土壌、地形などぶどうの栽培に影響を与える自然環境)や使用するぶどう品種が異なり、ワインの個性も大きく違います。

【ローヌ北部の特徴】

ローヌ北部は「セプタントリオナル(Septentrionale)」と呼ばれ、ヴィエンヌからヴァランスまでのローヌ川流域の右岸と左岸にぶどう畑が広がっています。夏は暑く、冬は冷え込み、寒暖の差が激しい大陸性気候に属しています。

土壌は、ローヌ川右岸では花崗岩質(グラニット)、変成岩の片岩質(シスト)や片麻岩質(グネイス)などがみられ、左岸では、沖積土壌もあれば、花崗岩質、粘土石灰岩質や砂利の土壌など多岐にわたります。

赤ワイン用に栽培されるぶどう品種はシラー種、白ワインはヴィオニエ種、ルーサンヌ種、マルサンヌ種が主要品種です。

ローヌ北部のアペラシオン(AOC)は、「コート・ロティ(Côte-Rôtie)」「シャトー・グリエ(Château-Grillet)」「コンドリュー(Condrieu)」「サン・ジョゼフ(Saint-Joseph)」「エルミタージュ(Hermitage)」「クローズ・エルミタージュ(Crozes-Hermitage)」「コルナス(Cornas)」「サン・ペレ(Saint-Péray)」の8つあります。

ローヌ南部のワインについては、こちらのブログを閲覧くださいね。

【メゾン・ドゥラス・フレール(Maison Delas Frères)の歴史】

1835年、シャルル・オディベール(Charles AUDIBERT)さんと、フィリップ・ドゥラス(Philippe DELAS)さんのふたりが、タン・レルミタージュの対岸にあるトゥルノン・シュル・ローヌ(Tournon-sur-Rhône)にワイン商「オディベール&ドゥラス」を創立したのがメゾンの歴史のはじまりです。ドゥラスさんにはエンリとフロレンタンというふたりの息子さんがいて、オディベールさんのふたりの娘さんとぞれぞれ結婚することになり、オディベール家とドゥラス家は血縁関係でよりいっそう絆を強めました。

1924年、エンリとフロレンタン兄弟が父および義父が創立したメゾンを引き継ぎ、「ドゥラス・フレール」と改名します。フレール(frères)とはフランス語で兄弟を意味します。ドゥラス兄弟はエルミタージュやシャトーヌフ・デュ・パプといった銘醸地のぶどう畑を購入し、ワインの自家醸造に力を入れ、自家製ワインの質を恒常的に高めていきます。

戦後の1945年以降、メゾン・ドゥラス・フレールの名がワインメーカーとしても、ネゴシアンとしても世界に広まっていきました。

1960年に入って、3代目のミシェル・ドゥラスさんがネゴシアンとしての鋭敏を発揮し、輸入業をさらに発展させ、北ローヌワインの主要メゾンのひとつとして確固たる地位を築きます。

1977年、1837年創業の高級シャンパーニュ・メゾンのドゥーツ(Maison Deutz)の資本・技術提携により、ドゥラスのワイン生産拠点をトゥルノン・シュル・ローヌから隣り町のサン・ジャン・ド・ミュゾル(Saint-Jean-de Musols)へ移転させました。

1993年、最高級シャンパンメゾンのルイ・ロデレール(Louis Roederer)のオーナーであるルゾー家(Rouzaud)が、メゾン・ドゥラス・フレールとメゾン・ドゥーツの提携を強化し、1996年にふたつのメゾンの経営・営業拠点をアイ(Ay)村のメゾン・ドゥーツに集中させ、ファブリス・ロッセ(Fabrice Rosset)さんが社長に就任しました。

2006年、メゾン・ドゥラス・フレールはアペラシオン「クローズ・エルミタージュ」のぶどう畑を購入し、メゾン所有のぶどう畑を拡大させます。

2015年、メゾン創業180周年を記念して北ローヌワインの首都タン・レルミタージュの不動産を購入し、近代的な醸造所の新設が計画されました。およそ1800万ユーロ(約2億2500万円)を投資し、5年の歳月をかけて工事が行われ、2020年、ワイナリー(醸造所)、ゲストハウス(宿泊所)、直営ショップがオープンしました。

そして、マダムユキがこの度、訪問しました。なんだか、糸で結ばれているようですね(勝手な思い込み?)。

【VIP、取引先、提携先をもてなす空間】

瀟洒な邸宅をゲストハウスとして改装しました。内装を担当したのは、インテリアデザイナーのジュリア・ルゾー(Julia Rouzaud)さん。華美な装飾を避け、柔らかい色遣いでくつろぎの空間を演出しています。ゲストルーム11室(ダブルあるいはツイン)、ダイニング、バー、ミーティングルーム、厨房、地下セラーを完備しています。

※ワイン関係者の方や企業の方で、ワイン研修や企業研修を希望の場合、マダムユキにご連絡ください。メゾン・ドゥラス・フレールのゲストハウスでオーガナイズします。

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【波打つワイナリー】

ローヌ渓谷のテラス状に広がるぶどう畑を彷彿とさせる段々に波打つ壁をもつワイナリーを設計したのは、ハーバード大学とイェール建築大学院を卒業した建築家Carl Fredrik Svenstedtさん。超近代的設備を備えた醸造所の建物は、石(南仏プロヴァンスのリュベロン地方の石)、ガラス、鉄、木といった建築素材が織りなす芸術作品となり、訪問者の目を惹きつけます。ワイナリ―内部は、石造りの湾曲した壁に沿って、スローブした廊下を歩きながら、醸造過程をガラス越しに見学できます。屋上のテラスからは、エルミタージュの丘への美しい眺めも楽しめます。

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【ワインへの愛を共有する場】

テイスティングカウンターのある直営ブティックは、「ピュアな空間」のひと言につきます。すっとのびた長方形の空間に心が洗われ、すべてが洗浄されて、最高級ワインを体に受け入れる準備が瞬時に整います。

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人口6000人の小さな町に世界中からの訪問客を迎える場所がまたひとつ増えました。

私の文才では伝えきれないすばらしい場所です。安全・安心して海外旅行ができる日が来ましたら、ぜひ訪問してください。いち押しです。

【メゾン・ドゥラス・フレール(MAISON DELAS FRERES)】

・住所: 40 rue Jules Nadi - 26600 Tain-l'Hermitage France

・電話: +33 (0)4 75 08 92 97

・営業日: 月曜日~土曜日 9:30〜12:30、14:30〜18:30

・休業日: 日曜日、フランスの祝日

・最寄駅: SNCF駅「TAIN L'HERMITAGE」下車、徒歩5分

メゾンの主要ワイン:コート・ロティ(赤)、コンドリュー(白)、サン・ジョセフ(赤、白)、エルミタージュ(赤、白)、クローズ・エルミタージュ(赤、白)、コルナス(赤)、ジゴンダス(赤)、タヴェル(ロゼ)、コート・デュ・ローヌ(赤、白)、シャトーヌフ・デュ・パプ(赤)、ヴァケラス(赤)

注意:フランス全域におけるロックダウンが最短で2020年12月1日まで実施されることを受け、メゾン・ドゥラス・フレールもショップを閉鎖しています。営業再開はロックダウン解除後とのことですが、最新情報はワイナリーの公式ウェブサイトを確認してください

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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