【フランス旅行を夢見て】フランス リヨンの南、ドローム・プロヴァンサルの「グリニャン村」へ

公開日 : 2020年08月28日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°35】

皆さま、こんにちは。

8月も下旬、新型コロナウイルスはまだ元気に活動を続けいます。疲れ知らずのウイルスを横目に、「いつかフランス旅行を」と夢みつつ、安心して旅行ができる日を待ち続けましょう。そして、「いつかフランス旅行を」が実現できる日がきましたら、ぜひおすすめしたいのが「グリニャン(GRIGNAN)村」です。

リヨンから南へ、モンテリマール方面に向かって南下すると、かつてはドーフィネとよばれた州、現在、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方圏に属するドローム県があり、そこに、「グリニャン」と呼ばれる小さな村があります。リヨンからは180km、高速道路A7を走るとおよそ2時間です。

グリニャン村の周辺はラヴェンダー畑やぶどう畑が広がり、オリーブの木立があちらこちらで見られ、プロヴァンス地方に気候も文化も雰囲気も似ていることから、「ドローム・プロヴァンサル」と呼ばれています。

8月の休暇を利用して、グリニャン村を訪れました。

グリニャン村は小高い丘に建ち、頂上にグリニャン城がそびえ、麓にはラヴェンダー畑が広がっています。その風光明媚な景色に魅せられて、多くの観光客が訪れるたいへん人気のある村です。「青い空、石造りの村、紫色に輝くラヴェンダー畑」は絵葉書のように美しい光景で、写真でもよく見かけます。実は2019年も、グリニャン村を訪れたのですが、ラヴェンダーの開花時期ではなかったので、2020年は、ラヴェンダー色に染まるグリニャンを見ようと思い立ち、小旅行にでかけました。が、愚かなことに、なんと時期が遅かった! わくわくしながらグリニャン村に到着したら、ラヴェンダーが刈り取られていたのです。旅への期待が「砂の城」のごとく崩れていく~」「愚かなる者よ、汝の名は!」「はい、マダムユキです......」

ラヴェンダーの開花時期は年によって多少は前後しますが、一般的に6月下旬ごろから7月上旬にかけて開花が始まり、7月中旬頃から収穫が始まります。地元の人が「リヨンからは車で2時間なんだから、簡単に来れるでしょ。来年は7月15日前に来なさいね。薫り高くラヴェンダー色に輝く景色を楽しめますよ」と言って、しょんぼりした私の肩をたたき、明るい笑顔で慰めてくれました。

▼刈り取られたラヴェンダーと背後にそびえるグリニャン村▼

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気持ちを持ち直して、村散策へ。

「グリニャン」という名が古文書に出てくるのは1105年のこと。13世紀から14世紀にかけて、アデマール(Adhémar)家が領主となって、村は大きく発展していきます。

なるほど、グリニャン一帯で生産されるAOCワインは「グリニャン・レ・ザデマール(Grignan-les-adhémar)」といいますが、アデマール家の名が由来だったんですね。かつては、コトー・デュ・トリカスタン(Coteaux du Tricastin)と呼ばれ、2010年に名称が変更になりました。

15世紀まで、丘の頂上に建つ中世の城は城壁で囲まれ、12基以上の防御塔があったといいます。日本の戦国時代のように、幾度となく戦が繰り広げられていたことでしょう(いまの平和に感謝です)。

16世紀に入って、中世の城は大規模な改修工事が施され、ルネサンス様式と古典主義の壮麗な宮殿に改築されました(1543~1557年)。時期を同じく、城のすぐ下にサン・ソヴール教会(Collégiale Saint-Sauveur)が建設されました(1535~1542年)。

▼頂上に立つグリニャン城は、壮麗なルネサンス様式とフランス古典主義の傑作▼

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▼17世紀のフランス文学を代表するひとり、書簡で有名なセヴィニエ侯爵夫人が眠るサン・ソヴール教会▼

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▼城下を見渡すパノラマの眺めもすばらしい▼

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17世紀、グリニャン伯爵こと、フランソワ・ド・カステラン・アデマール(François de Castellane Adhémar)がプロヴァンスの地方総督としてこの地を統治し、発展に貢献しますが、彼の妻はフランソワーズ・マルグリット・ド・セヴィニエ(Françoise Marguerite de Sévigné)。17世紀の書簡文学の先駆者として名高いセヴィニエ侯爵夫人マリー・ド・ラビュタン・シャンタル(Marie de Rabutin-Chantal, marquise de Sévigné)の娘さんです。セヴィニエ夫人は娘とたいへん親しい関係にあり、グリニャンへ嫁いだ娘に書簡を送り続け、ふたりの文通はセヴィニエ夫人が亡くなる日まで続いたそうです。セヴィニエ夫人は生涯を通じて1500通にものぼる書簡を執筆し、有名な手紙は日本語に翻訳されていますので、お時間のあるときに読んでみてください。グリニャンの娘宛てに書いた手紙は、遠く離れて暮らす娘に向けた母親の深い(あるいは深すぎる)愛情が綴られています。「セヴィニエ夫人の手紙」は、文学的価値が高く評価され、時代を超えて読み継がれています。

▼グリニャン村の中央広場(セヴィニエ広場)▼

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▼セヴィニエ夫人像(1857年作)▼

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グリニャン村は2019年11月30日に「フランスの最も美しい村」に認定されました。

▼都会の喧騒を忘れ、村の小路を歩いて心の休憩を▼

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▼村中にバラの木が植えられています▼

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▼若者カップルの後ろ姿も絵になります(おばさんのひがみ?)▼

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▼おしゃれなブティックを見つけた! 村歩きのうれしいサプライズ▼

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グリニャン村に瀟洒な邸宅を改装したプチホテルがあり、旅人に18世紀にタイムスリップしたような夢見心地なひとときと旅の疲れを癒やすくつろぎを与えてくれます。その名は「クレール・ドゥ・ラ・プリューヌ(Claire de la Plume)」。花と緑に包まれたテラスで朝食、ディナーはメインダイニングでアラノシェフの地産地消の料理をお楽しみください! シェフのジュリアン・アラノ氏はミュシュランガイド1つ星を獲得し、地方特産品であるトリュフを使った料理で高い評価を得ています。

▼おしゃれな門構え▼

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▼17世紀の雰囲気が漂う客室▼

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【ル・クレール・ド・ラ・プリュム(LE CLAIR DE LA PLUME)】

・住所: 2 place du Mail - 26230 Grignan France

・電話: +33 4 75 91 81 30

グリニャン村の小路を歩きながら、ふと見つけたレストラン。通り過ぎてしまいそうな控え目な入口が気に入ってランチ場所に決めました。予約なしだったのですが、運よくテーブルがひとつ空いていました。小さな入口の扉を抜けると、まるで個人の邸宅のリビングに招かれたような、落ち着いた雰囲気のダイニングがあり、お年を召したムッシュと英語なまりのフランス語を話すマダムに迎えられて奥の席へ。

▼小さな入口の扉が気に入りました▼

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▼観光地の喧騒を忘れさせてくれます▼

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アラカルト(単品)はなくセットメニューのみ。前菜、メイン、デザート、ともに選択肢は限られますが、美しい盛りつけ、繊細な味つけで、量もほどよく、日本人好みの味です。店内のインテリアも洗練されたオブジェであまり凝りすぎず、シックでありながらもくつろぎ感のある空間演出で、時間が経つのを忘れてゆっくり食事を楽しませていただきました。

今回いただいた料理は、色鮮やかな食用花で飾られ、夏らしい明るい雰囲気に仕立てられていました。

ちょっぴり心残りだったのは、車を運転するのでグリニャンの特産ワイン(グリニャン・レ・ザデマール)と一緒に味わえなかったことかな。

そうそう、レストランの名前は「ポエム・ド・グリニャン(POEME DE GRIGNAN)」。日本語に訳すると「グリニャンの詩」。

▼たらのブランダードの夏トリュフ添え▼

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▼夏野菜のタルト▼

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▼白身魚のグリーンソース添え▼

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▼骨付き子羊のワインソース添え▼

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▼フランボワーズタルト▼

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【ル・ポエム・ド・グリニャン(LE POEME DE GRIGNAN)】

・住所: Rue Saint-Louis - 26230 Grignan France

・電話: +33 4 75 91 10 90

・営業時間: 12:30〜13:15、12:15〜21:00

・定休日: 火曜日、水曜日

グリニャン村をあとにして、さらに南へと車を走らせると、一面にぶどう畑が広がっていました。

「フランスは景色が空きない! なんて恵まれた国なのか」と、ぶつぶつ独り言をいいながら、ウイズコロナでも夏の休暇を十分に楽しませていただきました。

▼AOCグリニャン・レ・ザデマールを産するぶどう畑▼

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筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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