フランスのリヨンで、夏は「ブラッスリー・ジョルジュ」の地ビールを味わう

公開日 : 2020年06月29日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°28】

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北半球に夏がやってきました。

フランスのリヨンも連日30度を超える夏日和です。夏といえばやはりビール!

ワイン王国フランスでも、ビールはカフェやバーあるいは家庭で「アペリティフ(食前酒)」として愛飲されていますが、昨今、クラフトビールや世界各地の地ビールを提供する専門店「ビールバー」が若者層を中心に大人気です。コロナ禍で客足は以前に比べて大幅に減ってしまったものの、夏を迎えてテラスは相変わらず満席です。特に夕方の17時から20時にかけて「ハッピーアワー」と称し、通常価格の半額でアルコール飲料を提供するお店が増え、若者のビール人気に拍車をかけています。

フランス産ビールで有名なのは、クローネンブルグ社(「Kronenbourg」はフランス語ではクロナンブ―ル、英語ではクロネンバーグと発音されます)の「1664」で、フランス語で「セーズ・ソワソント・キャトル」と読み、通称「ラ・セーズ」と呼ばれています。クローネンブルグ社はフランス東部アルザス地方の首府ストラスブールに1664年に設立されたブラッスリー(Brasserie)です。

現在、ブラッスリーはビアホールのようにアルコール飲料と食事を提供する飲食店をさしますが、ブラッスリーという語は本来「ビール製造所」を意味します。1870年の普仏戦争(フランス帝国とプロイセン王国の間で起こった戦争)でアルザス・ロレーヌ地方からパリに移住したブラッサー(ビール醸造者)が「ブラッスリー」と称して、ビールとアルザスソーセージやザワークラウトを提供したのが始まりで、今ではパリの庶民的な飲食店の代名詞になっています。

「ブラッスリー」はパリのみならずフランス各地に展開し、リヨンでは1836年創業の老舗「ブラッスリー・ジョルジュ(Brasserie Georges)」が有名です。

ブラッスリー・ジョルジュは、アルザス地方出身のビール製造を家業とするジョルジュ・オファ(Georges HOFFHERR)によって1836年にリヨンのプレスキル(ソーヌ川とローヌ川にはさまれた中州)の南、ぺラッシュ地区に創設されました。ブラッスリーの建物は、600平方メートルの天井をたった4本のモミの梁で支えるという驚くべき建築技術が採用されています。

正面ファサードは創業以来変わることなく、三角屋根の上部にみられるメダイヨンにビール愛好家を象徴するビール王「ガンブリヌス(Gambrinus)」が描かれており、「ビールの館へようこそ」と来訪者をいざなっているかのようです。

入口付近に配された4枚の大きなステンドガラスは20世紀初頭に施されたもので、「彫刻」、「幾何学」、「絵画」、「音楽」を表現しています。また、入口扉の上に設置され、メインダイニングを見守る黄金色の「ライオン像」がこの地がリヨンであることを来客に告げています。

600平方メートルのメインダイニングのいたるところに大理石が用いられ、1体あたり重量が25kgというシャンデリアが天井を飾り、華美な装飾は避け、画家ブルノ・ギヨルマン(Bruno GUILLERMIN、1878-1947年)によるアールデコ様式の洗練されたインテリアで巨大空間がまとめられ、窓から差し込む自然光によって広々とした空間にさらなる開放感が与えられています。

厨房側の壁に目を向けると、ブラッスリーの座右の銘「1836年来、おいしいビールにおいしい食事(BONNE BIERE ET BONNE CHERE DUPUIS 1836)」が刻まれており、創業来184年間、ビールと食を通じて、人々に幸福を与えようという思いが伝わってきます。

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ブラッスリーといえばアルザス料理のシュークルートが愛食されていますが、今回はリヨン料理のセットメニュを選んでみました。前菜は鶏レバーのテリーヌ、メインはリヨン風ソーセージのマッシュポテト添え、デザートはヴァローナのチョコレートケーキでした。ビールのみでも十分相性のよい内容ですが、シャルドネ種のマコネーの白ワインを注文しました。パンは紙袋に納められ、衛生面の配慮がうかがわれます。

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老舗のブラッスリーだけあって、多くの著名人が訪れています。その一例を挙げてみました。

●キュルノンスキー(CURNONSKY、1872-1956年):美食評論家。「リヨンは食文化の首都」と讃えた言葉が有名です。

●アルフォンス・ドーデ(Alphonse DAUDET、1840-1897年):小説家。代表作は『アルルの女』『風車小屋だより』『最後の授業』

●アナトール・フランス(Anatole FRANCE、1844-1924年):ノーベル文学賞を受賞した詩人・小説家・批評家。代表作は『シルヴェストル・ボナールの罪』『エピクロスの園』『神々は渇く』

●トニー・ガルニエ(Tony GARNIER、1869-1948年):リヨン出身の都市計画家・建築家

●アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest HEMINGWAY、1815-1891年):アメリカ合衆国出身の小説家・詩人・ジャーナリスト。代表作は『日はまた昇る』『武器よさらば』『老人と海』『誰がために鐘は鳴る』

●ルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟(Louis et Auguste LUMIERE、1864-1948年、1862-1954年):映画の父

●ルイス・マリアーノ(Luis MARIANO、1914-1970年):テノール歌手。代表作は『メキシコ』『恋はスミレの花束』『アンダルシア』

●エディ・ピアフ(Edith PIAF、1915-1963年):シャンソン歌手。代表作は『ばら色の人生』『愛の讃歌』『水に流して』

●ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(Pierre PUVIS DE CHAVANNE、1824-1898年):リヨン出身の画家。代表作は『貧しき漁夫』『砂漠のマグダラのマリア』

●オーギュスト・ロダン(Auguste RODIN、1840-1917年):近代彫刻の父。代表作は『考える人』『接吻』『カレーの市民モニュメント』

●ジャン・ポール・サルトル(Jean Paul SARTRE、1905-1980年):哲学者・小説家・劇家。代表作は『言葉』『嘔吐』『存在と無』

●アトワーヌ・ド・サン=テクジュペリ(Antoine de SAINT-EXUPERY、1900-1944年):作家・パイロット。代表作は『夜間飛行』『人間の土地』『星の王子さま』

●モーリス・ユトリロ(Maurice UTRILLO、1883-1955年):画家。代表作は『ラパン・アジル』『ラヴィニャン街の眺め』

●ジュル・ヴェルヌ(Jules VERNE、1828-1905年):SF小説の父。代表作は『八十日間世界一周』『十五少年漂流記』

●エミール・ゾラ(Emile ZOLA、1840-1902年):自然主義文学の小説家。代表作は『居酒屋』『ナナ』『ボヌール・デ・ダム百貨店』

海外渡航が可能になり、リヨンを訪問する機会がありましたら、ブラッスリー・ジョルジュの地ビールをお試しくださいね。

【ブラッスリー・ジョルジュ(BRASSERIE GEORGES)】

・住所: 30 Cours de Verdun Perrache - 69002 Lyon France

・電話: +33 4 72 56 54 54

・営業時間: 毎日 11:30~22:30

・アクセス: ペラーシュ(Perrache)駅より徒歩3分

・備考: 団体以外の予約は不要

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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