フランスのリヨンで、美術館の再開を待ちわびる

公開日 : 2020年06月05日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°25】

MUSEE_DES_BEAUX_ARTS_25.jpg

▲『Nave nave mahana』(1896年)、ポール・ゴーギャン(Paul GAUGUIN、1848年-1903年)、リヨン美術館(Musée des Beaux-Arts Lyon)

思い起こせば、「芸術鑑賞」に関心を抱くようになったのは、「芸術学」や「美学」という学問に出会ってからです。それまで、絵画や彫刻を前にしても、それは「自然を模倣する」世界に過ぎないと、美しいとされる作品は「模倣の技術」が優れているのだと、さらに言えば、鑑賞するという行為は美的経験にすぎないと、少し大げさですが、傲慢な態度で理性的に認識された自然科学を崇拝していた時代がありました。

絵画や彫刻といった芸術作品の見方が分からなかった自分を正当化していただけなのですが。

大学に入ってまもなく(はるか昔の話ですが)、『芸術学』(渡辺護著、東京大学出版会)という本に出会いました。「芸術学」とは、芸術活動を実証的・科学的に研究する学問、いわゆる「芸術の科学」なのですが、芸術学の前にまず「美学」という概念があり、美学もひとつの学問として成立していることに驚いた記憶があります。「美とは何か」という「美の本質」、「何を美しく感じるか」という「美の基準」、「美がもたらすものとは」という「美の価値」など、美を理論的に考察することが美学なんだと、「目から鱗が落ちる」とはまさにこのことで、目が覚める思いがしました。

こうして美学や芸術学に関する書籍を読み(「感性的認識の学としての美学」を提唱するバウムガルテン(講談社学術文庫)、『判断力批判』で「美の批判としての美学」を提唱するカント(岩波文庫)、ヘーゲルの『美学』(岩波書店))、追求しはじめるときりがなく、哲学の域に入って頭が混乱し、整理が必要となります。そんなときに『芸術学ハンドブック』(神林恒道編、勁草書房)はおすすめの1冊です。美学・芸術学・美術史学を分かりやすくコンパクトにまとめてあり、芸術に対する考察を深めることができます。

今では、美術館巡りは楽しみの一つです。1枚の絵を前にし、「作品の主題」「作品が誕生した背景や時代」「作品の目的・用途」「作品の構造」「様式」「技術」「色彩」などの詳細を吟味してから、最後に「この作品を美しいと思うか」「なぜ美しいと思うか」「なぜ美しくないか」と美的判断(というよりも趣味判断)を自問自答しては、お気に入りの作品探しで心に栄養を与えています。

THEORIE_ART.jpg

フランスのリヨンも外出規制緩和の第2段階に入り、飲食店の営業再開に伴って活気を戻し始めました。

文化施設も徐々に門戸を開き始めています。そろそろ芸術鑑賞を楽しみたいと、心がうずうずしてきました。

3月18日からリヨン美術館で「ピカソ特別展」が予定されていたのですが、3月14日に発令された新型コロナウイルス感染拡大による外出制限で開催日が延期になりました。とても楽しみにしていた展示会でしたので、再開を待ちわびています。

【リヨン市内の美術館・博物館の再開予定日】

リヨン美術館(Musée des Beaux-Arts)

2020年06月22日

→古代エジプト時代から現代までのヨーロッパ屈指のコレクションを誇ります。

→ブログでも紹介しておりますので、お時間のあるときにご閲覧ください。

現代美術館(Musée d'Art Contemporain)

改装工事中のため8月末にリオープン予定

→現在アートの企画展のみ開催しています。

コンフリュアンス博物館(Musée des Confluences)

2020年06月02日

→2014年に完成した博物館です。恐竜時代から現代まで、人類の歴史を新しい視点で辿ります。

ガダニュ博物館(Musée Gadagne)

2020年06月12日

→次の2つの博物館を併設しています

- リヨン歴史博物館(Musée d'Histoire de Lyon)

→中世から現代までのリヨンの歴史を紹介しています。

- 人形劇博物館(Musée des Arts de la Marionnette)

→フランスで唯一無二、人形劇ギニョールの町リヨンならではの博物館です。

印刷博物館(Musée de l'Imprimerie et de la Communication)

2020年06月12日

→ブログで紹介しておりますので、お時間のあるときにご閲覧ください。

リヨン織物博物館(Musée des Tissus)

未定

→300万点の所蔵品から4500年の織物産業の歴史を辿ります。

ミニチュアとシネマ博物館(Musée Cinéma et Miniature)

2020年05月21日

→映画の特殊効果と模型アートの世界を紹介しています。

レジスタンスと強制収容所資料館(Centre d'Histoire de la Résistance et de la Déportation)

2020年06月03日

→ゲシュタポ本部として利用されていた建物で、戦時中のリヨンの歴史を辿ります。

トニー・ガルニエ都市博物館(Musée Urbain Tony Garnier)

2020年06月02日

→リヨン出身の建築家トニー・ガルニエが労働者の生活条件改善のために設計した新興住宅モデルルームが見学できます。

●リュミエール博物館(Musée Lumière):

2020年06月12日

→リュミエール兄弟が開発した撮影技術や撮影器具を通じて、映画の歴史を辿ります。

ジャン・クーティ美術館(Musée Jean Couty)

2020年06月03日

→リヨン出身の画家ジャン・クーティの絵画作品を紹介しています。

アンリ・マラルトル自動車博物館(Musée de l'Automobile Henri Malartre)

2020年06月12日

→アンリ・アラルトルのプライベートコレクションを中心に往年の名車が展示されています。

これから一つひとつブログでご紹介していきますのでお楽しみに!

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。