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フランス リヨンで、(ネオ)ロマネスク建築の「サン・マルタン・デネ教会」を訪ねる

カテゴリー:文化・芸術・美術 / 見所・観光・定番スポット 投稿日:2020年2月 2日

【フランス リヨン便り n°9】
「ロマネスク」という響きがあまりにも美しく、専門的な知識もなく何もわからないまま、フランスの「ロマネスク建築を訪ねる旅」に出かけた若かりし頃を懐かしく回顧する歳になりました。思い起こせば、「ロマネスク」という言葉が「ロマン(浪漫)」や「ロマンス」を連想させ、旅心を駆り立てたからなのでしょうか。ブルゴーニュ地方、オーヴェルニュ地方、プロヴァンス地方、ノルマンディー地方、ミディピレネー(現オクシタニー)地方に点在するロマネスク教会を求めて歩いたものです。今も変わらずですが、機会があれば(再)訪問しています。余談ですが日本ではお寺巡りを趣味とし、信仰に関係なく宗教芸術には神がかった美しさがあります。


「ロマネスク」に対して「ゴシック」という言葉がありますが、語源からすれば、前者は「ローマ風」、後者は「ゴート風(ゴートとは古代ゲルマン民族を指します)」の意味で、いずれも中世の美術様式を示す言葉として使われています。時代の流れからすれば、「ロマネスク」はおよそ11世紀から12世紀半ば頃、「ゴシック」は12世紀半ば頃から15~16世紀、そして14~16世紀にイタリアで始まった「ルネサンス」へと続きます。時代区分は便宜上で、それぞれの様式は重なりあって建築様式は変化していきます。


「ロマネスク建築」の特徴は、幾何学的フォルム(壁や床などの平面、円柱や丸天井などの曲面)、重厚感(厚い壁、太い柱)、限られた開口部(小さな窓)。そして近代建築の巨匠「ル・コルビュジエ」に共通する光と影の対比が生み出す「空間演出」。一方「ゴシック建築」といえば、「天に届け」といわんばかりの建造物の高さの追求、豪華な彫刻芸術、大きな開口部から差し込む光と色彩豊かなステンドガラスに見られます。

 
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リヨンはローマ帝国のガリア属州の植民都市として、紀元前43年にルグドゥヌム(Lugdunum)という名で誕生しました。2世紀には、ローマからの伝道師たちによってキリスト教が布教され、177年にリヨン最初の司教ポティヌスが殉教するなど、フランスのキリスト教史においてリヨンは古い歴史を誇ります。そのリヨンで、ソーヌ川とローヌ川に挟まれた中州(プレスキル)のエネ(AINAY)と呼ばれる地区に、リヨン最古の教会「サン・マルタン・デネ教会(Basilique Saint Martin d'Ainay)」があります。古文書によれば、創設は5世紀に遡り11世紀後半から12世紀前半にかけて大きな改修工事が施され、ロマネスク様式の修道院が建設されました。13世紀には殉教者に捧げる教会としてさらに大きな発展を遂げていきます。しかし16世紀に広がった宗教戦争により大きな損傷を受け、18世紀のフランス革命の時代から1807年まで、教会は肥料倉庫として利用されました。建物の破損状態が極めて顕著であったため、19世紀に教会の取り壊しが検討されましたが、再建の声が強く、当初のバジリカ様式(身廊と側廊をもつ長方形の建物)と11世紀から12世紀のロマネスク様式から着想を得た「ネオロマネスク様式」が融合した現在の姿に改修されたのです。


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サン・マルタン・デネ教会は、正面ファサードの幾何学的な美しさに魅了されます。左右対称の構成で、中央にそびえる鐘楼の頂上にピラミッドが置かれ、その四隅を飾る三角錐がチャーミングな印象を与えています。また、半円アーチの開口部、壁に帯状に広がる彫刻装飾やレンガを埋め込んだ菱形模様が、平らなファサード平面にリズミカルな躍動感を与えています。


次に、後方に廻ってみましょう。ロマネスク教会の美しさは、その「後ろ姿」にもあります。教会の中央交差部に聳え立つ角塔を、高さの異なる立方体の構造物が階段状に取り囲み、最後方に置かれた後陣(アプス)の半円柱の構造物によって直線を曲線で締めくくり、二次元においても三次元においても幾何学美が追及されています。こうして、教会全体をピラミッドフォルムの立体構造に仕上げることによって、安定感と重量感のある造りが実現されるのです。


内部は、山寺へ続く杉並木の参道を歩いているような、太い円柱が連なる身廊が内陣へと導いてくれます。後陣(アプス)の半球面の天井(1855年に完成したフランドラン(H.Flandrin)作)や中央交差部の丸天井には金を主調とした見事なモザイク画が施され、身廊にそびえる半円形の天井やアーチ部には幾何学模様のフレスコ画が施されています。内陣に吊るされた巨大なシャンデリアと「ネオロマネスク」のモザイク画が異国情緒を漂わせ、神秘的な内部空間を作り上げています。


ロマネスク教会といえば、個性豊かな柱頭彫刻です。そのモチーフは、聖書のエピソードであったり空想の動物(怪物)や人物であったりさまざまですが、柱頭の限られたスペースに彫刻家の職人芸がうかがえます。サン・マルタン・デネ教会に現存する柱頭彫刻は数少ないですが、内陣の南北を飾る柱に「アベルを殺すカイン」や「アダムとイヴ」をモチーフにした彫刻が残されており、登場人物のプリミティブでありながらも豊かな感情表現が目を楽しませてくれます。


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【サン・マルタン・デネ教会(BASILIQUE SAINT-MARTIN D'AINAY)】
●住所:11 rue Bourgelat 69002 Lyon France
●電話番号:+33 4 72 40 02 50
●開館時間:月曜日~金曜日:09時~11時30分、14時30分~18時30分、土曜日:09時30分~11時45分、日曜日:09時~12時30分

●最寄り駅:地下鉄A線 アンペール・ヴィクトル・ユーゴ(Ampère Victor Hugo)

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マダムユキさん

フランス・リヨン特派員のマダムユキさんが現地からヨーロッパ地域に至るまで、旅行・観光・食事などの現地最新情報をお伝えします。

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リヨン在住20年。リヨン第二大学で美術史専攻。中世からルネサンス期の美術品・絵画・建築を得意とする。ワインとビールが生活の友。フランス現地手配会社を経営する。フランス リヨンの文化・芸術・建築を中心に、リヨン情報をお届けしたい。ツアー情報などのお問い合わせはこちら
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