フランス リヨンのブションで、伝統料理を味わおう!

公開日 : 2020年01月13日
最終更新 :

【フランス リヨン便り n°7】

ブション・リヨネ:ダニエル・エ・ドゥニーズ(DANINEL ET DENISE)

「食」は旅の楽しみ、人生の楽しみ。旅先で「何を観よう、何を食べよう」と思いを巡らせるときの幸福感は、旅の醍醐味のひとつ。リヨンには「ブション・リヨネ(Bouchon Lyonnais)」と呼ばれる、パリでいうところの「ビストロ(Bistrot)」、日本でいうところの「大衆食堂」に匹敵する料理店がある。いわば、庶民的な食事処である。

リヨンのブションの特徴は、豚・牛の頭や足、心臓、舌など精肉でない部位や贓物を使った料理が多いこと。例えば、牛の胃袋にパン粉をまぶして焼き上げた「タブリエ・ド・サプール(Tablier de sapeur)」、豚の血と脂身を腸詰した「ブーダン・ノワール(Boudin noir)」、豚の内臓入りソーセージ「アンドゥイエット(Andouillette)」が代表的である。レシピを耳にすると、抵抗を感じる方が多いだろうが、食べ慣れてくると、その独特な味わいが癖になる。もちろん、贓物は臭みがあるので、丁寧に処理して調理してくれるお店選びが大切。

ブションの歴史は18世紀に遡る。社会階層の格差が際立っていた当時、精肉は富裕層のブルジョワが食する食材で、庶民は安価な贓物を多く食していたという。そこで、労働者が集まる庶民的な食堂では、女性の料理人が手頃な食材をおいしく調理し、ボリュームたっぷりで振舞っていたのが始まりとか。20世紀に入ってまもなく、ブルジョワ家庭の食卓を任されていた女性料理人が1929年の世界恐慌の影響で解雇されるが、後に「リヨンの母たち(Mères Lyonnaises)」と総称される彼女たちは、自らの店を構えて独立し、庶民の食堂「ブション・リヨネ」の発展に貢献していくのである。

このブションという呼び名の由来だが、ブションはフランス語で「ワインの栓」を意味するので、「ワインが飲める酒場」とばかり思っていたが、どうやら違うらしい。ブションには、わらや干し草などの「束(Bouchon de paille)」という意味もあり、店主が自分の店を目立たせるためにドア先に小枝や藁の束を吊り下げていたことに由来するという。

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職場から徒歩3分のところに「ダニエル・エ・ドゥニーズ(DANINEL ET DENISE)」のクレキ(Créqui)店がある。1968年創業のブションで、当時は「ダニエル・エ・ドゥニーズ・レロン(Daniel et Denise Léron)」と呼ばれていた。2004年に現在のオーナーシェフで、フランス国家最優秀職人章(MOF)を受賞しているジョセフ・ヴィオラ氏が店を引継いだ。店内は、ブションのトレードマークである赤と白のチェックのテーブルクロスと木の温かみを感じる内装がとても印象的だ。壁一面に著名人の写真が飾られているが、マクロン大統領も就任前に来店したようだ。

職場から近いこともあり、常連客のひとりとなっているが、いつも注文するのが「パテ・アン・クル―ト」。肉や野菜を細かく刻みテリーヌ状にしてパイ生地で包んでオーブンで焼いたもので、前菜の定番料理である。ボージョレの赤ワインと相性がよい。ヴィオラ氏は2009年の「パテ・アン・クル―ト全国コンクール」の優勝者だけに、鴨のフォワグラとリ・ド・ヴォ―(仔牛の胸腺)を使ったパテは絶品。メインは日本人の胃袋にも優しい「クネル」。淡水魚のカワカマスをすり身にしたものをナンテュアと称するザリガニソースを添えてオーブンにかけ、はんぺんのようにふんわりと焼きあげる。ブションを代表する伝統料理のひとつである。弾力がありながらもふんわりと滑らかな食感が心地よく、フランス語でエクルビスというザリガニの殻でダシをとったナンテュアソースが淡白なカワカマスの味を引き立てる。付け合わせは、ボリューム感たっぷりのマカロニグラタン、鴨の脂で揚げたポテト、ニンジンのグラッセ。残さず食べるには大きな胃袋が必要。食後のデザートは、リヨンの伝統菓子プラリーヌ(ローズ色のシロップでコーティングされたナッツ)で風味づけされたメレンゲをヴァニラソースに浮かべた「イル・フロッタント」。「浮かぶ島」という意味のデザートで、冷やしたヴァニラソースでお口直しができる。

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【データ】

ダニエル・エ・ドゥニーズ(DANINEL ET DENISE)クレキ(Créqui)店

場所:156 rue de Créqui 69003 Lyon France

サイト:http://danieletdenise.fr/en/home/

営業日:月曜~金曜日 12時~14時、19時~21時45分

定休日:土曜・日曜

備考:「ダニエル・エ・ドゥニーズ」は、歴史地区にあるサン・ジャン(Saint Jean)店、クロワ・ルースの丘にあるクロワ・ルース(Croix Rousse)店、パール・デュー駅近くのビジネス街にあるクレキ(Créqui)店の3店舗あり、お店によって営業日と営業時間が異なるので確認が必要

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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