フランス リヨンから、イヴ・サンローランに捧げる特別展『オートクチュールの舞台裏』

公開日 : 2020年01月02日
最終更新 :

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【フランス リヨン便り n°5】

2019年11月09日から、20世紀を代表する偉大なるクチュリエ、『モードの帝王』と呼ばれたイヴ・サンローラン氏とリヨンシルクとの40年以上にわたるコラボレーションに焦点が当てられた特別展が、フランス リヨンの織物博物館(MUSEE DES TISSUS)で開催されている。

やっと時間ができたので、訪れてみた。

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『オートクチュールの舞台裏(Les Coulisses de la Haute Couture à Lyon)』と題する特別展は、フランス パリのイヴ・サンローラン美術館の協力を得て、オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方圏(Région Auvergne-Rhône-Alpes)、リヨンメトロポール商工会議所(Chambre de Commerce et d'industrie Lyon Métropole Saint-Etienne Roanne)、ユニテックス(UNITEX)の主催により実現するが、その背景には、閉館を迫られていたリヨン織物装飾芸術博物館を復活させたいという熱い思いが込められている。

リヨンの織物博物館は、1856年、リヨン商工会議所がリヨンの絹織物産業の継承と発展を目的に「美術工芸博物館」の創設を決定し、1864年の開館からその歴史が始まる。1946年に現在の建物である18世紀の瀟洒なヴィルロワ邸に移り、今や250万を超える織物作品を所蔵し、紀元前から4500年以上の織物の歴史とリヨンの地で発展した絹織物産業の歴史を今日に伝える、世界有数の織物産業博物館である。

『絹の町』リヨンを象徴する博物館として名を広めたが、2015年、所有者であるリヨンメトロポール商工会議所が経費過多のため博物館を維持していけない旨を公表し、メディアを賑わせた。博物館維持のために公的機関および民間からの資金援助を必要とし、フランス文化財を題材としたテレビ番組の司会を務めるステファン・べルヌ(Stéphane Bern)氏やリヨン出身の作家ベルナール・ピヴォ(Bernard Pivot)氏などの著名人が博物館救済の声をあげ、13万5千人以上の署名を集めた。2017年、リヨンメトロポール商工会議所が象徴的に1ユーロでオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地方圏に博物館を譲渡し、当博物館の閉館にストップがかかり、リヨン市民をはじめ、多くの関係者が胸を撫で下ろしたという経緯がある。

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リヨンがなぜ絹の町として栄えたかという、地理的かつ歴史的背景は非常に興味深いものがあるが、その詳細は次の機会に譲るとして、中世から発展を続けたリヨンの絹産業、その高度な技術から生まれる完成度の高い作品が、オートクチュールの世界でも活躍したことは容易に想像できよう。『オートクチュールの舞台裏』と題する特別展では、故イヴ・サンローラン氏の1962年から2002年までの創作活動において、彼の作品の中にリヨンの絹製品がどのように使われていたかという、芸術面と技術面に焦点が当てられ、イヴ・サンローラン氏からの注文を受けて、最高級の絹織物を提供したリヨンの8つのメゾン:アブラハム(Abraham)、ボー・ヴァレット(Beaux-Valette)、ビアンキーニ・フェリエ(Bianchini-Férier)、ブトン・ルノー(Bouton-Renaud)、ブロシエ(Brochier)、ビュコル(Bucol)、ウレル(Hurel)、スファト・エ・コンビエ(Sfate et Combier)によって実現した作品が展示される。中でも、1980年秋冬コレクションで発表されたウエディングドレス『シェイクスピア』はため息がでるほどの美しさである。すべての展示作品に、イヴ・サンローラン氏のコメント入りのデッサン画、生糸のカラー見本や生地見本が付随され、作品が生まれる背景、いわゆる、『舞台裏』を垣間見ることができる。

類まれなる才能を有したイヴ・サンローラン氏とリヨンシルクへオマージュを捧げるに相応しい、中身の濃い素晴らしい展示会である。

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【データ】

会期:2019年11月09日~2020年03月08日

場所:リヨン織物博物館(MUSEE DES TISSUS / TEXTILE ARTS MUSEUM)

住所:34 rue de la Charité 69002 LYON FRANCE

電話番号:+33 4 78 38 42 00

開館時間:10時~18時

休館日:月曜日、祝日

入館料:大人12ユーロ

最寄り駅:地下鉄A線、D線 ベルクール広場(Place Bellecour)

筆者

フランス特派員

マダムユキ

リヨン在住20年以上。フランス各地の魅力を文化・芸術・建築・食を中心にお届けしたい。

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