バラ園が広がるチャーチル英元首相の家「チャートウェル」

公開日 : 2022年08月08日
最終更新 :

イギリスには"鉄の女"ことサッチャーをはじめ、歴史に残る名宰相が数多くいますが、第二次世界大戦期に国全体が貧しく、暗い影を落としていた頃に首相を務めたウィンストン・チャーチルは、間違いなくイギリス人の記憶に刻まれ、今後も讃えられ続ける英雄のひとりでしょう。

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そのチャーチルが晩年まで過ごした家「チャートウェル(Chartwell)」は、イングランドのケント州ウェスターハムにあります。

落ちこぼれだった?チャーチルの人物像

どの資料を読んでも、チャーチルは学校での成績は芳しくなく反抗的ですらあり、落ちこぼれといっても過言ではないレベルだったと書かれていて驚きました。そんな彼がその後の政治家として才能を開花させたのは、軍事に従事するようになってからのこと。

もともと軍隊に憧れを抱いていたようで、陸軍士官学校に入学しましたがやはり成績は悪く、このときの入試も3度目の正直でやっと入れたほど。それ以前の学歴も、資産家で有力者であった親のコネでなんとか入れてもらったそうです。ここまで学業が苦手な著名人もあまり聞かないのでは、と興味をそそられますが、やはりそこは凡人とは違うところ。

文章は得意で作家としても活動し、1953年にはノーベル文学賞まで受賞しました。「言葉の魔術師」とよばれた彼は演説もお手のもので、数々の名言を1冊にまとめたものが、現在でも手帳や豆本サイズでよく売られています。

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チャートウェルのお土産ショップでも、額に入れられたりチョーク書きされた「Never, never, never give in!(絶対に屈服してはならない。絶対に、絶対に、絶対に!)」といった名言がいたるところに置かれていました。

心のオアシスだったチャートウェル

チャートウェルには大きく分けて庭園、チャーチルが実際に暮らしていた邸宅、絵画が趣味で作ったアトリエ(Studio)の3つの見どころがあります。

普段は都会のロンドンで政治に明け暮れていたチャーチルですが、その心は常にゆったりとした生活を求め、田舎に憧れていました。そんなときに出会ったのがこのチャートウェルで、1922年に購入以降、晩年まで過ごしました。

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ようやく手に入れた理想の家に、チャーチルはお気に入りの「プール(池のように見えますが、実際に泳いでいた模様)」や食料用に栽培していた果樹園、野菜農園まで作りました。

チャートウェルは1946年にナショナル・トラスト(関連記事)に寄付され、チャーチルの死の翌年1966年から一般開放されるようになりました。

見学するには庭園、邸宅、アトリエともにそれぞれ別構成の入場料がかかりますが、年会費を払いナショナル・トラストのメンバーになれば、イングランド各地にあるほかの管理施設もチケットなしで何度でも利用できます。

画家にもなれた?チャーチルのアトリエ

1914年、第一次世界大戦が勃発したとき、アイルランド問題とのあつれきに手を焼いていたイギリスは、これに参戦するか賛否が分かれていました。そんななかで熱烈に参戦を支持したのが、当時内相にまで上りつめていたチャーチル。

結局イギリスは参戦しましたが予想外の苦戦を強いられ、翌年にはチャーチル自身が実行に移したトルコ西部での「ガリポリ上陸作戦」でも惨敗を喫し、引責したチャーチルは閑職に追いやられました。

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その後幸いなことに軍需相として政界復帰できましたが、このとき傷心したチャーチルが40代で新たに始めたのが絵画でした。暇を見つけては庭先に建てたアトリエで油絵などに没頭したようで、その腕前はかのピカソも「画家で十分やってけるよ(出典:"Riddles Mysteries Enigmas" International Churchill Society 2012)」と言ったほどだったとか。

チャーチルが実際に使っていた絵の具やイーゼルなどが置かれたアトリエには、小さいながらも壁を埋め尽くすほどの本物の作品が飾られ、入口の外にまで出てきて招き入れてくれた愛想のいいスタッフに聞くと、どれがチャーチルが描いたものかなど親切に教えてくれました。

そして肝心の邸宅ですが、残念なことに時間切れで入場は叶わず。邸宅は庭に比べて閉まる時間が早いので、要注意です。今回は窓から覗いただけでも噂のすてきなダイニングルームがチラリと見え、ほかにも演説の原稿を書いたり練習をした書斎や図書室、寝室などがあるようで、入ってみたい欲望がムクムクと湧いてきました。

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◼️チャートウェル(Chartwell)・住所: Mapleton Road, Westerham, Kent, TN16 1PS・アクセス: 電車セブンオークス駅よりタクシーで15分弱、あるいはブロムリー・ノース駅より246番のバスにて(夏季の日曜と祝日のみ運行)・開場時間(日ごとに要確認):  庭園、毎日10:00〜16:30、邸宅、毎日11:00〜16:00、スタジオ、毎日11:30〜16:00・入場料(庭園とアトリエ) 大人£14、子供£7、家族割アリ・URL: https://www.nationaltrust.org.uk/chartwell

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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