バルカム村で踊るイギリスの「バーン・ダンス」

公開日 : 2022年05月09日
最終更新 :

これまでイングランドのモリス・ダンス(関連記事)、スコットランドのケイリー・ダンス(関連記事)、アイルランドのセット・ダンス(関連記事)と、イギリス国内とその隣国のフォークダンスについて見聞きする機会がありましたが、今日はさらにまたひとつ、バーン・ダンスという民族舞踊を知りました。

バルカム村にあるヴィクトリーホール

「新たなイギリス(イングランド)を体験できるわよ!」という誘い文句に釣られ、友人が主催するダンスパーティーに参加してきました。会場はてっきりそこら辺の近所かと思いきや、ロンドンから電車で50分、海の町ブライトン(関連記事)から20分のサセックス州にありました。

そのなかでも、チチェスター(関連記事)という町がある、ウエスト・サセックスのミッド・サセックス地区にある、バルカム(Balcombe)という村で行われました。

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バーン・ダンスとは直訳しますと「納屋の踊り」なので、原っぱのような屋外を想像していたのですが、現代ではより踊りやすい場所ということで、平らな床のある屋内で催されることが多いそうです。ちょうどこの日は雨も降ったので、よかったです。

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今回も同村の「勝利のホール(The Victory Hall)」という、公民館のような場で開かれましたが、こちらの講堂には第一次世界大戦に関する見事な壁画があります。

友人がさっそく解説してくれましたが、天井に繋がる両サイドの壁には、一方に戦時中の暗く厳しい情景を描いた絵が、他方には戦後の希望を表した、明るい絵が描かれています。

ホールのウェブサイトにはもう少し詳しい解説が載っており、この壁画は1923年、イギリス軍の将校でもあった芸術家、ネヴィル・リットンによって作成されました。

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戦争に関するテレビ番組で取り上げられたことがあるほどですが、繊細なフレスコ画なので、長年の湿気とタバコの煙などにより劣化してしまい、ここ数年で修復作業が成されたとのことです。

バーン・ダンスとは

そんな貴重な文化財があるところで、こんなにも大勢が二酸化炭素を吐きまくりながら振動してもよいものなのか、とは思いますが、同ホールではダンスのほかに、結婚式などの各種パーティーの催事も随時受付中だそうです。

バーン・ダンスはもともと狩りや収穫、神への感謝など、儀式的な意味合いが強いものでしたが、すぐにそれは誕生日や結婚式など、ワイワイと楽しむものに変わりました。そのため、普段は踊り慣れていない参加者が多く、今日ではコーラー(caller)と呼ばれる人がダンスの指示を出し、全体の指揮をとります(参照: "Barn-Dance" Simply Knowledge 2022.)。

発祥地はイギリス、特にスコットランド説が有力ですが、知人ふたりに聞いてみたところ「カナダとかそういうイメージだけど」と言われ、少し混乱しました。

実際「バーン・ダンス」と検索をかけると、「カナダ」とセットで出てくることもあり、イギリス人のなかでもすべての人が自国独自の文化と強く認識しているわけではなさそうです。

今回この会を主催した友人は、バルカム村に住む友人たちと一緒に企画したようで、「バーン・ダンスはサセックス州で特によく見られる習慣でもある」と教えてくれたので、ご当地ごとにさまざまな自負がありそうです。

なお、モリス・ダンスはフォークダンスよりさらに以前のイングランド古来の伝統舞踊で、もともとは男性のみで踊られていたものだそうです(参照: "History " Barn Dances for Everyone 2022.)。

踊るが勝ち!我を忘れる楽しさ

そんな知識を詰め込みながら、実際の踊りにいざ、挑戦です。男女のペアが原則なようで、親子でも私は娘より息子と、夫は娘とペアの方が好ましいようでした。

昔は全員が手をつないで円になって踊っていたようですが、時代とともにスクエア(四角型)ダンスやライン(直線型)ダンスなど、変化に富んでいきました。この日もこれら複数が入り混じった、数種類の踊りをコーラーや友人の指導で行いました。

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生演奏の音楽に合わせて動き始めると、恥ずかしがっていたわが子も案外嬉しそう、私自身もパターンがつかめると俄然楽しくなってきました。

壁沿いには座席が並んでいるので、いつでも休憩やパスすることは可能ですが、こういった体験型アクティビティは、参加したほうが断然おもしろいですね。

とはいえ、これをノンストップで3時間ぶっ続けというのはさすがにきつく、途中には子供向けのマジックショーがあったり、誕生日の子をギター演奏とバルーンアートで祝ったりと、いろいろな趣向が凝らされていました。

併設のバーでは子供も含め、いつでも好きなときに休憩できるようになっていたので、銘々ドリンクやスナックをつまみながら、くつろいでいる人も多かったです。こちらは普段から一般開放され、毎日営業しています。

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スコットランドの詩人にちなんだお祭り、バーンズ・ナイトで踊ったケイリー・ダンスと似ていたので、次は北アイルランドやウェールズの踊りがきてもきっと大丈夫?!楽しめるのではないかと思います。

旅先やパーティーなどで踊る機会がありましたらぜひ、積極的に参加することをおすすめします。

◼️バルカム・クラブ(The Balcombe Club)・住所: Stockcroft Road, Balcombe, West Sussex RH17 6HP・アクセス: 電車Balcombe駅から徒歩8分・営業時間:  月 12:00〜16:00(ドリンクのみ)、火〜木 11:00〜23:00(ドリンクのみ)、金土 11:00〜24:00、日12:00〜18:00・URL: https://www.balcombeclub.co.uk/

筆者

イギリス特派員

パーリーメイ

2017年よりロンドン南部で家族と暮らしています。郊外ならではのコスパのよいレストラン、貴族の邸宅、城めぐり、海沿い情報などが得意です。

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